44.思い返す
俺は今、城の廊下に居る。
そんな俺は、少し落ち着かなく、城の真ん中にある中庭を見ながら歩いていた。
見てるだけで心が安らぐそんな感じがする。
そうだ。
さっき部屋であったことを軽く思い返してみよう。
俺は何故かぱっとそんなことを思った。
そして、なんの理由もなく思い返すのだった。
騎士団長…、父さんが部屋を出ていった後、とりあえず俺たちは俺たちの、グレンたちはグレンたちの神殿で離ればなれになってしまった後のことについて話していた。
とまぁ、俺たちのことは良いとしてグレンたちのことだ。
ゴーレムによって神殿から俺とサラが落ちた後、そのゴーレムはバラバラになり閉まっていたドアが開いたらしい。
何故ゴーレムがいきなり機能停止したかはグレンたちも分からないみたいだ。
偶然なのか、それとも知らないうちに弱点をついていたのか……。
とまぁその後、グレンたちは俺とサラが川に落ちたのを確認して、すぐさま神殿を出て川の流れに沿って、一晩休まずに 捜してくれていたみたいだ。
ドラゴンとの戦闘後で休みなしだったってのに、本当に感謝だ。
そして、俺たちを捜していた時に、偶然通りかかった騎士たちに不審者として捕まってしまった訳か。
ったく、理不尽にも程があるよな。
父さんは騎士たちをちゃんと指導してんのか?
「……………」
俺は未だに中庭を眺めながら歩いていた。
「騎士たちの指導か……」
そう思った俺。
しかし、そこから俺はもっと重要な事を考えていた。
それは、グロリア騎士団は何を目的に世界各地であんな奴隷のように街や村の住人たちを扱っているのかだ?
いや、まだ世界各地とは決まったわけではない。
しかし、少なくともグレンの村であるアペリエであったこと。
そしてカエデから聞いたグラティアのこと。
そう、今俺がいるこの城がグラティアではなくグロリア出身の奴がトップに居るってこと。
極めつけは、帝都グロリアではそのようなことが行われているという情報は隠され、グロリアのお陰で世界は豊かになっていると教えられていたこと。
「……………」
これは、何としても父さん…、いや、騎士団長に聞き確かめなくてならないとアペリエの事件の時から考えていた。
そして、それが今。
その時が来たのだ。
「……よし!」
俺は気合いを入れ直した。
そして、俺は城の廊下を進む。
……のだが、
「…………」
すぐ俺は立ち止まってしまった。
何故かというと……、
「騎士団長の部屋って……何処だ?」
肝心なところを聞き忘れていた。
どうしよう、とりあえず誰かに聞くか……。
と、考えていたその時だ。
「?」
俺の後ろに誰かが来たのを感じた。
そして、
「ちょっと待って」
と誰かが俺を呼び止めたのだった。
俺はその正体を確かめるべく振り返った。
すると、そこには一人の女騎士が膝に手をついて立っていた。
どうやら、走って来たみたいだ。
「えっと何だ?」
「ヤス……だよね?」
すると、女騎士はそう言った。
「そう…だけど?」
俺はそう答えた。
てか誰だ?
こんな可愛い娘が知り合いだったら分かるはずなんだけどな。
もしかして、父さんが俺のことを言いふらしているのか?
「え?もしかして私のこと覚えてないの?!」
と、女騎士は血相を変えてそう言った。
……覚えてないのって言われてもなぁ…。
俺は記憶の中を一生懸命思い返すが、やっぱり覚えていなかった。
「そうか………。まぁ仕方ないか」
「えっと……?」
女騎士は肩を落としていた。
「小さいときに一回一緒に遊んだじゃん?」
そう女騎士言った。
えっと…、やっぱり思い出せない……。
「まぁ小さかったからね……。そうか、忘れちゃったか……」
……何だろう。
俺は変な感覚に陥っていた。
と、その時、
「しかし、まさかヤスが騎士団長様の息子だったとはね~、聞いた時は耳を疑ったよ!」
と、女騎士は驚いていた。
えっと~、一人で盛り上がってる中悪いんだけど……。
「あぁ、ごめんごめん、覚えてないんだもんね……」
その時、俺は女騎士の表情がとても寂しそうな表情をしていたのをじっと見ていた。
そう、何か大切な約束を友人に忘れられてしまった時の様な表情を……ね。