43.騎士団長
「はぁっ!」
「ぐはぁ?!」
まず一人。
「えいっ♪」
「んがっ?!」
地面に叩きつけられる騎士。
「二人目完了♪」
「やるな、ルミナ」
騎士に見つかってしまった俺たち。
グレンたちを見つけ、城から脱出しようとした時だ。
俺たちは騎士と戦っていた。
しかし、弱いなこいつら……。
俺とルミナで騎士二人を早々撃沈。
そして、これを見た残りの騎士は一歩後ろに下がった。
なんだなんだ?
グロリア騎士はこんなもんなのか?
笑ってしまうな。
「ええぃ!怯むな!侵入者を捕獲だ!」
すると、三人のうち二人が襲いかかってきた。
ふん、逃げなかったのは誉めてやる、だが……。
「隙がありすぎだ!」
俺は騎士の攻撃を容易くかわし、
「うぐっ?!」
首の後ろを剣の鞘で殴り気絶させた。
そして、もう一人の騎士だが……。
「甘い甘い♪」
ルミナは倒れた騎士の背中に片足を乗せて勝利のポーズを決めていた。
劇団員の言う通り、やっぱり団長さんは強いな。
……さてと、
「さぁ、あとはあんただけだ」
俺は残った騎士に剣を向けた。
「おのれ!ここは城の中だぞ?!そんな余裕の態度をとってられるのも今のうちだ!」
騎士は震えた腕で剣を構え、そう言った。
………何かみっともないな。
まぁ、騎士の言う通り、気持ちの立場逆転してる感じするな。
しかし、
「……ここは通らせてもらうぞ!」
そう、こんなところで捕まってられない。
そして、俺は騎士に斬りかかった。
と、その時だ。
「?!」
地下牢に金属音が響き渡った。
それは目の前に居た騎士の剣、ましてや鎧兜を擦れた音ではない。
俺の剣とまた違う他人の剣が交えた時に発した音だった。
俺はその剣の持ち手を見た。
「この騒ぎはいったい何なんだ……」
「?!」
俺は驚きの余りに声が出なかった。
……へへ、まさかこんなところで…。
俺はそう思いながら大きく二三歩後ろに下がった。
何故かと言うと、そこには……。
「き、騎士団長様?!」
そう、騎士の言葉通り、そこには正真正銘グロリア騎士団の団長が居たのだった。
「やれやれ、酷いやられようだな」
「申し訳ありません……騎士団長様……」
そう騎士に言った騎士団長は剣を鞘に戻し、俺たちに顔を向けた。
「…………」
しかし、視線だけは俺だけに向いているというのは分かっていた。
そして、騎士団長は口を開けた。
「ヤス!」
物凄い声量であった。
俺は久しぶりに聞いた声にビクッと身体を震わせた。
「……あれ?何でヤスの名前を?」
後ろに居るサラがぼそっとそう言ったのを俺は聞こえていた。
そして俺は一歩前に出てこう言ったのだった。
「久しぶりだな……父さん」
その場が、凍りついた。
「おぅ、久しぶりだな」
俺の言葉に返事をする騎士団長。
その後、驚きの声が沸き上がったことは言うまでもない。
グレンたちを含めた俺たちは、騎士団長に案内され、とある一室に連れてこられた。
そこはとても豪華な部屋だった。
ベットもあるし客間か何かかな?
すると、
「初めまして、グロリア騎士団団長のジークだ。兼ねてヤスの父でもある」
騎士団長はそう皆に挨拶をして、
「いや~、すまなかった!うちの騎士が迷惑かけたな」
と、騎士団長はそう言ってグレンたちに頭を下げた。
ふ~ん、父さんも頭下げんだな。
「い、いえ。気にしないでください」
おい、遠慮しなくていいぞグレン。
お前は被害者なんだからな。
俺はグレンにそうテレパシーで伝えた。
届くはずはないけどな。
「お前たちは解放する。まぁ今日はここでゆっくり休んでいってくれ。ヤスの面倒を見てくれたお礼も兼ねてな」
「おい、なんだよそれ」
父さんの言葉に反応する俺。
ったく、ガキ扱いすんなよな。
と、その時、一人の騎士がやってきて、騎士団長に何か用件を伝えていた。
すると、
「すまん、ちょっと用事が出来たんで行ってくるわ」
と言って部屋を出ようとした。
「あ、父さん!」
「あ、そうそう」
反射的に言った俺と父さんの声が重なった。
顔が合った俺は、先にどうぞと父さんに譲った。
「ヤス、あとで団長室まで来てくれ。話がある」
父さんは真面目な表情でそう言った。
俺は「分かった」と言い、そのまま俺は話をせず父さんを行かせた。
理由は簡単だ。
俺も同じ用件だったからな。
父さんが出ていった後、俺は深い溜め息をつきながら、部屋のソファーに腰を掛けた。