39.城の中へ
「ヤス?」
サラが心配そうに俺を見ているのが分かった。
が、今はそんなことに対応する余裕は無かった。
「そうか、騎士団長が……ね。……なるほど、丁度良い」
俺は心の中である決意をした。
いずれにせよ、やらくてはいけないと考えていたことだ。
まぁ、まずはグレンたちを助けて、それからチャンスがあればだけどな……。
しかし今ここに来てるんだ、この機会を逃すわけにもいかない。
「よし、行こう」
「あ、待ってヤス!」
「何々?♪何かあるの?♪」
俺は城を背に歩き出した。
それに続きサラとルミナがついてくる。
「何処に行くの?ヤス?」
それはもちろん、
「地下水路の入り口を探すんだよ」
地下水路。
入り口を探すといってもそれは簡単なことだ。
グラティアの外に出て、使った水などが排水されてるところが広ければ、そこから入ることも可能だし。
まぁ、何と言っても、一番確実なのはやっぱりここだろ。
「はい!ここで問題♪マンホールの蓋は何で丸いか知ってる?♪」
「まぁ、一般的な答えだと正四角形は一辺に比べ、対角線の方が長いから斜めにすると落ちる。正三角形でも同じで、底辺と高さでは底辺の方が長い。だからどこを測っても同じ長さの円が使われた、だろ?」
「まぁ……正解だね♪流石ヤスっち!♪」
まぁ、って何だよ……。
結構上手く説明したつもりだったんだけどまだ何か足りなかったのか?
まぁ、そんなことは今良いとして……、そう、俺たちは今グラティアの人気が少ない場所にあるマンホールの前に立っている。
言わなくても分かるだろうが……、
「ここから城に入り込むぞ」
俺はマンホールの蓋を外しながらそう言った。
地下水路にはマンホールを降りていくという方法を選んだのだ。
「何か緊張するね」
「何で?」
「えっ?!だ、だって城に入り込むなんて初めてだし……」
サラはルミナにそう答えた、が、俺は何か他にも理由があるような言い方をしている感じがした。
…………あ。
分かった気がする……。
『れい』の件だな絶対。
てか、自分で提案しといて……。
……仕方ないな。
「じゃあ、俺から行くから次にサラ、ルミナと順についてこいよな」
「あ、えっと、分かった」
「ヤスっち、降りるとき上見ないでよね?♪」
はぁ……はいはい。
マンホールを降りた俺たちは早速城の真下と思われる場所を想定して進み始めた。
因みに中は人が通るには十分過ぎるぐらい広かった。
ただ薄暗いってだけあって……、
「きゃあ?!」
サラは突然飛び出すコウモリに驚いていた。
「何々?サラっちはコウモリが苦手なの?」
違う。違うんだルミナ。
ただここで言うとサラがはっき……。
「だ、大丈夫だから二人とも……。行こう」
あ、あぁ、そうだな。
「んにゃ???」
ルミナは頭の上にでっかい『?』を浮かばせていた。
まぁ、明るいところに出たらちゃんと説明するから我慢してろよな。
とまぁ、涙目で頑張るサラが可愛………じゃなくて可哀想だから、早く入れそうな場所を探さないとな。
なるべくコウモリが反応しないように迅速かつ慎重に進む俺たちであった。
そして、地下水路を探索すること約10分。
ガラ、ガラ、ガラ
「よいしょっと……」
俺は手をかけ、そしてマンホールから外へ出た。
「ここは……なるほどな」
そして、サラとルミナも上がってきて、俺はマンホールの蓋を閉めた。
「ここは倉庫かな?」
「いや、ガラクタ置き場だよ♪」
「まぁそんなことはどうでも良いだろ」
とまぁ、俺たちは武器などが置かれている部屋に出てきた。
とりあえず、城の中で間違いなさそうだ。
「よし、上手く入り込めたな」
「それじゃあ!お仲間さんを助けにレッツラゴー♪」
「ル、ルミナ?!静かにしないと!」
そして、そんなこんなで城の中に連行されたグレンたちを探し始めたのだった。