3、記憶喪失、そしてサラ
この世界『アレテイヤ』は過去に大不況に陥った。世界の人々は一致団結し大不況と戦い、豊かな暮らしを実現した。拠点となった街グロリアは後に帝都グロリアとなり、
『今もなおグロリアを中心とし世界の安定を築き上げてる……か』
俺は溜め息。
宿屋に来てから次の日の朝のこと。
俺は昔帝都で勉強した、この世界の歴史のとある一部を思い出していた。そう、世界の在り方が変わった時期とでも言っとこうか。
帝都に居た時はこんな風になってるなんて聞いたこと無いぜ。
いや、まさかな。
その時、宿屋の男がノックして入ってきた。
『彼女、目を覚ましましたよ!』
『本当か!』
俺は男に連れられて彼女が居る部屋に移動した。そこにはベットに座った彼女が居た。
『良かった、元気そうだな』
『…えっと……』
『あっ、君が川に流れ着いていたのを見つけて俺がここまで連れてきたんだ』
しかし、彼女はとても不安そうな顔をしていた。
『えっと、大丈夫か?』
『あの、大丈夫じゃないかも…』
…えっと、何処か痛いのかな?
少し間が空き、彼女は言った。
『今までの記憶が思い出せないの』
彼女はさらっと言った。
ん?記憶が思い出せない?
『記憶喪失……』
その場が凍りついた。
『あ、でも名前だけは覚えてるみたい』
彼女はそう言って立ち上った。
『私の名前はサラ』
そう言った時の彼女の顔には不安そうな表情は無かった。
その時だ、宿屋に誰かが入ってきた。
『誰かいないか?!大変なんだ!』
村の人が駆けつけてきたのだ。
宿屋の男はすぐさま対応しに行った。
『どうしたんですか?!』
『グレンか!大変なんだ!鉱山でいきなり魔物が襲ってきて怪我人が!今怪我人はこっちに向かってるから宿屋に入れてくれないか!』
あ、あいつグレンって名前なのか。てか魔物が襲ってきただと?!
『なんだって……』
グレンの顔が青ざめていた。
『おい、どうしたんだよ?』
俺は聞くとグレンは慌てて言った。
『今の時間帯は俺の母さんが!母さんが働かされてる時間帯なんだ!』
『なんだって?!』
次から次へと問題続出。
昨日に続き今日も厄日になりそうだ。
『俺行ってくる!』
グレンは今にも飛び出そうとしていた。
『まて!俺も行く』
『いや、でも』
『1人じゃ危ないだろ。それにおばさんには世話になったしな』
『ありがとう!』
グレンは村の人に宿屋を解放してあげ、俺達は鉱山に行こうとした。
『待って!私も…』
サラが俺の腕を掴んできた。
『いや、サラはまだ起きたばかりだからやめた方が良い。だから残って怪我した村の人達を見ててくれないか』
俺がそう言うとサラはしぶしぶ承諾した。
俺達は帰ってくる村の怪我人の中にグレンの母さんがいないか確認しながら鉱山に向かった。
しかし母さんの姿は無く、鉱山の入り口までやって来た。
『母さん……』
『大丈夫だよ、騎士団もいるんだ』
俺達は鉱山に入っていった。
すると奥から人が走ってきた。
『おい、冗談だろ』
走ってきたのは騎士だった。
『おい、奥にもう人はいないのか?奥はどうなってるんだ!』
俺は騎士に聞いた。
『知るか!自分の命の方が大事だ!』
………糞野郎が。
見る限り新米騎士か?
だとしてもこれは無いだろ。
『急ぐぞ!』
俺達は奥へと進んでいった。