36.発見
時間帯は昼を過ぎているくらい。
俺たちは街に向けて出発した。
劇団員は大合唱をしながら歩いていてとても賑やかである。
そんなうるさくしてたら魔物が来るんではとか思ってたんだけど意外と来ない。
人数多いし柄悪いから魔除け効果でも働いてんのかとか考えたりしてる俺。
あ、そういえば、今向かっている街は『ラルス』というところらしい。
ルミナ曰く、街の人は皆、珍しい人たちだという…。
珍しいというのがどういうのを指すのか知らないが、言っちゃえば俺にはルミナも珍しい分類に入るんだがな。
「ん?何か言った?ヤスっち?」
んや、何も~。
そう言うと、ルミナは追求はせず、いつも通りの口笛&スキップに戻った。こういう人って本当にいるんだな、アニメや漫画の中だけかと思ってたぜ。
と、その時、皆の足が止まった。
何だ?急にみんな止まって…。
「…誰か来るみたいです」
パシリ君がそう言った。
「……誰か?」
「何やってんのヤスっち!隠れるよ!」
「お、おう」
俺はルミナの声に反応し草影に隠れた。
そして俺は顔を半分出した。
すると、すぐ目の前には分かれ道が見えた。
しかし、人影は見えない。
「おい、本当に来るのか?」
「あと五秒、四、三………」
三以降は頭の中で数えた俺たち。
するとどうだろう。
「あ、あれは!」
大勢の人たちが歩いてきた。
マジかよ、パシリすげぇな。
「ビバッチだからね♪警戒心が強いんだよ♪」
と、ルミナが小声で楽しそうに言った。
てかパシリ、人間として見られてなくないか?
って、今はそんな事言ってる場合じゃないか。
団体が近づいてきたところで俺はその団体を確認した。
するとそいつらは、
「グロリア騎士団…」
そう、グロリア騎士団の御一行だ。
グロリア騎士団は列になって、もう一方の道に歩いていっていた。
「あれは、ラルスからグラティアに向かってるみたいだね」
ルミナがそう言った。
グラティアか…、みんなは何処にいるのだろうか。
ラルスってところかもしくはグラティアに戻っててくれれば合流出来るかもしれないんだが。
騎士団を傍目に俺はそう思っていたのだがその時、俺は騎士団の中に明らか騎士では無い人たちが目に入った。
「…………え?!ま、まさか?!」
「ヤス!声がでかいよ。どうしたの?」
隣にいるサラの小声のお説教と同時に、俺はその人たちの特定が完了された。
騎士団の中に居たその人たちはなんと…、
「グレンたちだ…」
「え?何?グレンたちが居たの??」
俺の言葉に対し、サラは何処と言わんばかりに辺りを見回し始めた。
「騎士団の中に……、グレンたちが騎士団に捕まっている…」
俺はグレンたちを探すサラの横で呟いた。
それを聞いたサラの動きはピタッと止まった。
そして、騎士団に顔を向けたサラ。
「え……、嘘?!」
騎士団の中に一人の男に二人の女。
それは間違いなくグレン、カエデ、セツナであった。
「何々?あれがお仲間さん?何で捕まってるの?」
それはこっちが聞きたいよ、ルミナ。
あいつら何したんだ?
「早く助けないと!」
「ダメだよ、サラっち!今出てってもあの人数の騎士には勝てないよ」
今にも飛び出しそうなサラを止めるルミナ。
そして、騎士団が完全に通過して俺は草影から出た。
「よし……、俺たちもグラティアに行こう」
「そうだね!みんなを助けなきゃ!」
そう言うサラも草影から出てきた。
「じゃあ、私もお供するよん♪」
「「え?」」
俺とサラはルミナの言葉に驚いた。
「ラルスに行かなくても良いのか?」
「良いの良いの!パシリ君がいるしね♪」
俺はパシリ君を見た。
柄悪のごつい大男に肩を抱かれていた。
そして顔は青ざめ、首を横にブンブン振っている。
………大丈夫か?
「大丈夫大丈夫♪それに、私は困ってる人を助けずにはいられないから♪」
それ自分で言うのか?!
まぁルミナらしいが…。
「…分かった、じゃあよろしくな」
「うんにゃ♪」
そして、ルミナは仲間たちを集め、軽くミーティングをした後、
「よ~し!それじゃあ騎士を追いかけるわよ!」
と、ルミナはやる気に満ちていた。
そしてパシリ君が率いることになった劇団とは別れ、俺たちはルミナを加えグラティアに向かった。