26.俺は猫が好き
形見を探し、馬車を追いかけてきた俺たち。
そしてとうとう見つけた馬車。
近くで見ると、こりゃまた豪華な箱馬車だな。
そう、俺たちはその箱馬車の前に立っている。
「……あれ?」
俺は遠慮なく馬車の中を覗いた。
しかし、人は乗っておらず、ましてや馬を操るドライバーもいない。
何処に行ったんだ?
「ねぇ、これ見て」
俺はサラが指摘したところ、地面に顔を向けた。
すると、そこには足跡が残っていた。
もちろん俺たちの足跡ではない。
大きさが違う二つの他人の足跡があったのだ。
そして俺は足跡をたどってみる。
すると、足跡は森に続いていた。
「これは…」
足跡をたどり森に近づいた俺の前には獣道があった。
いや、これは……。
「剣で切り刻んだ跡もあるね」
顔に手を当て、神妙な表情で言うグレン。
そう、その道は誰かによって意図的に作られたものだった。
しかし、何故こんなところに道を?
この奥に何があるんだ?
「とりあえず、行くしかないんじゃない?」
腰に手を当てて言うカエデ。
ここで待ち伏せっていう手もあるが……、まぁ俺の性に合わないしな。
この先に何があるのかも結構気になるし。
ここはカエデの言う通り、行ってみるか。
「じゃあ、先に進むぞ」
そして俺たちは、俺を先頭にし、森に作られた道を進み始めた。
道を進む俺たち。
道は一本道で直線だ。
そして、むやみに作ったって訳では無さそうな感じがするものだった。
「この道を作った人はトレジャーハンターとかだったりして」
俺の後ろを歩いているサラが言った。
トレジャーハンターね…、まぁ確かに考えられなくはないけど。
まぁ、こんなところに進んでいくなんてトレジャーハンターか何か疚しいことを企んでいる奴ぐらいしかいないだろうからな。
とまぁそんなこんなで十五分ぐらい歩き続けた俺たちはやっと森から抜けることができた。
しかし、抜けて早々俺は目の前の光景に驚いていた。
「ここは……」
俺たちの目の前には神殿のような何かの廃墟があった。
そして何故だか近づいてはいけないような気がした。
「あ、ヤス、これ」
グレンの指差すところには足跡。
しかも廃墟に向かっている。
……うぉ!?
…背中に悪寒が走った。
「なぁ、やっぱり待たないか?何だか嫌な予感がするんだけど…」
「あれぇ?何?もしかしてヤス、怖いの?」
いや、そういう訳じゃないんだけど…。
何を言い出すんだかカエデは………って。
カエデがニヤニヤして俺を見ていた。
「大丈夫よ、お化けなんか居ないわよ♪」
楽しそうだな。
てかそうじゃないし……って、
「うおぉ?!」
その時、俺に後ろから誰かがくっついてきた。
俺は背後を恐る恐る見た。
するとそこには…、
「お化け?!どどどどど何処?!」
怯えているサラが居た。
そうかサラってお化けとか幽霊とか駄目なのか。
意外…でもないかな?
「へ?幽霊?!どどどどど何処?!」
……こりゃ相当怖いんだな。
やっぱりここは待った方が…。
「い、いや。わ、私は大丈夫だから…、行こうヤス」
子猫のように、目をうるうるさせながらそう言うサラ。
か、かわ…
「じゃあ行こう!」
っと、カエデがニコニコしながら廃墟に入っていった。
おい、サラはお前じゃなくて俺に言ったんだよ。
てか、一人で先行くなよ。
まったく………。
俺は突っ込みたい気持ちを押さえた。
「ふぅ。じゃあサラ、行くぞ」
「う、うん」
俺はサラを背中に貼り付かせたまま、グレンともにカエデを追って廃墟の中に入った。
……何だよグレン、ニヤニヤしてこっち見んなよ。