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25.残された跡

馬車の行方は何処なのか。

グラティアの門のところで考えていた俺はライトアップされたことによりあるものを見つけた。


「みんな、ちょっと来て見てくれ!」


俺は皆を呼び地面に指を指した。

何故かと言うと、そこには…。


「あ、馬車が通った跡だ!」


そう、サラの言う通りそこには馬車が通った跡が残されていたのだ。

これがその馬車のだとすれば、辿っていけば良い訳だ。


「ヤス。門番の兵士に聞いてきたけど、今日馬車は一台しか通ってないってさ」


仕事早いな、グレン。

そうか、じゃあこれを辿っていけば…。


「行こう!ヤス!」


俺に近づいてきたと思えば、力強くサラがそう言った。


「サラ…」


俺は迷っていた。

ただでさえ、ドラゴンと戦って体力を消耗している中で、休まずに行って良いのか。

これは俺の問題だから、ここまでサラたちを巻き込んで良いのか…。

俺は皆の顔を一人一人見た。

皆、やる気に満ちた顔をしていた。

それを見た俺は心を動かされた。

……腹括るぜ。


「行こう!」


暗くなってきた空に俺の声が響く。

空では星が瞬きだした。

まるで、俺たちを見送ってくれているようだった。

俺は大きく深呼吸をし、気を引き締めた。

そして、俺たちはグラティアを背に馬車を追うため夜の街道を歩き出した。





虫の鳴き声と夜鳥のさえずりが響き渡る。

俺たちは馬車の走った跡を辿って進んでいる。

今のところ魔物にも襲われず、怖いぐらい順調な出だしであった。


「ねぇ」


と、その時、虫と夜鳥の声にカエデの声が混じった。

俺はその声を拾い、何だ?と返事をした。


「ごめん。全ては私が盗ったばかりに…」


なんだいきなり。

カエデの表情はグラティアの時とは変わり、らしくない言葉が発せられた。


「だって…」


そして再び虫と夜鳥の鳴き声だけになった。


「…はぁ。どういう心の変化か知らないが…。お前がやったことは普通に考えて、いけないこと。法に照らし罰を受け、償わなければいけないのだろう」


カエデは下げていた頭を上げ、俺を見た。


「だけど、カエデは自らもう罰を受けてるじゃないか。俺に協力して『形見を取り返す』っていうね」


………………、あれ?何だこの間は…。


「……ナニソレ…意味わかんない」


そして思わず笑うカエデ。

えっと…、性に合わないこと言うんじゃなかったな…。


「もういい。まぁ…気にすんな」


そう、決して許される行為ではない。

しかし、カエデは取り返すという気持ち、そして行動を俺に見せてくれている。

それにカエデの過去。

それも含め俺は……、


「てか、あんたには言ってないし。私はサラとグレンに謝ってんの」


「私?!」


………………。

はぁ…、何か自分で何言ってんのか分からなくなったよ。

つか、こんなこと言い出したってことはカエデもいろいろ思うことがあったんだな。


まぁ、期待してるさ。





そんなこんなで歩き続けてる俺たち。

しかし徐々に皆から疲れが見え始めてきた。今日も朝からドタバタしてたからな。

特にドラゴンは肉体的にも精神的にも疲れたし…。


「みんな、大丈夫か?」


俺は皆にその言った。

するとサラが、


「少し疲れたからかな?お馬さんが見える……」


と、目をしばしばさせて言った。

……って、ちょっと待て!

今、馬って言ったよな?!

俺は辺りを見回した。

月光だけが頼りの暗闇の街道。一体、どこだ?!


「ほら、今動いた」


指を指すサラ。

俺は指差す方向を目を凝らした。

するとどうだろう。

馬か分からないが、微かにだが何かが動いているのが見えた。

これはもしかしたらもしかするんじゃないか?!


「ちょっ、ちょっとヤス?!」


サラの言葉を聞く前に俺は一人走り出した。

馬車の通った跡の上を気づかずに走っていた俺は、とうとう動く何かを認識した。


「間違いない!馬だ!馬車だ!」


喜びのあまり大声を出してしまった。

目の前にはグラティアで見た馬車が街道の脇に止めてあった。






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