22.力合わせて
大広間の真ん中にどっしりと構えるドラゴン。
その正面に俺が剣を構えて立っている。
「よし、行くぞ!」
そして俺はドラゴンに向かって走った。
ドラゴンに何の動きも見られなかったからの判断だ。
だが、俺が動きを見せると、ドラゴンは炎を吐くつもりなのか、溜めの体勢に入った。
しかし、俺は冷静だった。
大体こうなると予想は出来てたからな。
ちゃんと策は練ってあるぜ。
「サラ!頼む!」
「うん!」
走っている俺の後ろに隠れていたサラが止まり、杖を構えた。
「堅強の防壁、彼の者を護り給え!―プロテクション!」
サラがそう言ったその瞬間、俺の体の周りがピカッと光り、一瞬にして透明の壁に包まれていた。そう、サラの補助魔術だ。
そして予想通り、ドラゴンから炎が吐かれた。
しかし壁、要するにバリアーを纏った俺は迷わず炎に中にそのまま突っ込んでいった。
サラの補助のお陰で俺へのダメージはほぼ0だが…、さすがドラゴン。
他の魔物とは桁外れの威力でプロテクションの効果が破られそうだった。
「くそっ!負けてたまるかっ!」
そして、なんとかプロテクションの効果は持ち堪え炎から出た俺は、目の前にいるドラゴンの頭に斬りかかった…のだが。
「な?!固い!」
そのドラゴンは鱗で覆われていて予想以上の物凄い防御力だった。
そしてその瞬間、俺はドラゴンに前足で攻撃された。
しかし、咄嗟に剣でガードしたお陰で、吹っ飛ばされたが直接のダメージは免れた。
そして何とか起き上がった俺だが、ドラゴンと目が合っているのに気付いた。
やべぇ、ドラゴン俺に釘付けじゃねか。
「こっちだ!」
その時、目標を俺に絞っていたドラゴンだったが急に後ろを向いた。
後ろ、そしてこの声はグレンだった。
グレンはドラゴンの尻尾に斬りかかっていたのだ。
「なるほどね。そう簡単には取れないのか」
グレンがバックステップで一旦後ろへ下がった、しかし一瞬の出来事だった。
「うわっ!?」
ドラゴンは尻尾を振り、グレンを攻撃したのだ。
「グレンっ!!」
「っく、大丈夫だ!俺のことは良いから集中だ!」
何とも無かったかのように起き上がったグレン。
逆に心配させちゃったかな?
グレンらしいぜ。
そして俺たちとドラゴンとの激しい戦いが始まった。
どうにか剣や刀で鱗を剥ぎ取ろうとしていた俺たちだったが取れそうで取れなく時間だけが過ぎていった。
「物理攻撃は効かないか…、なら!」
するとカエデはドラゴンから少し距離をとり、目をつぶり何か唱え始めた。
聞き取る間も無く次に腕を振り上げ、目を開けた。
「食らえ!!!」
そしてカエデは叫ぶと共に上げた腕を振り下げた。
その瞬間、どこからともなくドラゴンに勢い良く雷が落ちた。
カエデ曰くこれは忍術という魔法みたいなものらしい。
ヒドラがいた洞窟で発せられた閃光も忍術だったわけだ。
「グゥォォオ!!!」
雷撃を食らったドラゴンは唸り声を上げた。
するとどうだろう、鱗に傷が付いているのが見えたのだ。
何で早く気づかなかったのだろうか俺は。
「魔法だったら鱗を剥がすことが出来るんじゃないか?!」
俺はカエデに問いかけた。
「でも私の忍術じゃちょっと威力が足りないみたい…」
そうなのか…。
じゃあカエデが駄目となると…。
「セツナ!出来ないか?!」
「分かった、やってみるわ!」
そしてセツナは早速詠唱に入った。
「吹き荒れろ疾風、切り裂け!―エアカッター!」
セツナはそう唱えると、ドラゴンに無数の鋭い風が吹き荒れた。
するとドラゴンの唸り声と共に体から何かがポロっと落ちたのが見えた。
俺はそれを目を凝らして見てみた。
「あれは…鱗だ!間違いない!」
それは紛れもなくドラゴンの鱗だった。
さすがセツナだ。
剣術だけでなく魔術も優れている。
「ヤス!私が援護するから早く鱗を取って!時間が無いわ!」
詠唱を終えたセツナがそう俺に言った。
そう、何だかんだで時間を食っていたのだ。
「分かった、行くぞ!」
俺はドラゴンの鱗目掛けて走り出した。
しかしドラゴンは俺に気付き炎を吐き出した。
俺はヤバいと思った。しかし。
「―プロテクション!」
俺の体にまたプロテクションが張り巡らされた。
さすがサラ。
ドラゴンの行動を読んで俺に補助魔術をかけてくれたのだ。
しかし、今回の炎は何か違っていた。
溜めてもいないのにプロテクションが炎によってもう破壊されようとしていた。
「マジかよ?!さっきの炎より格段に威力が上がってるだと?!」
今度こそヤバいと思ったその時、炎が俺から逸れた。
「はぁっ!!!」
セツナがドラゴンの顔に斬撃を加えていたのだった。
「今よ!」
俺はセツナによりドラゴンがバランスを崩して地面に倒れている隙に落ちた鱗を素早く取った。
「取ったぞ!みんな!」
皆、俺が鱗を取ったことを確認した。
「よし!とりあえず撤退よ!」
そしてセツナの言葉によりドラゴンが起き上がる前に一斉に皆元来た道へ走り出した。