21.似てるか?
「あのさぁ…。俺たちはオオトカゲを倒しに来たんだよな?」
「そうだよ?」
セツナに案内され、森の中の大広間に連れてこられた俺たちは、とうとうオオトカゲとご対面!……の筈だったんだが。
俺はサラに疑問を問いかけていた。
何故かって?
「オオトカゲって…三メートルじゃ…なかったっけ?」
「噂ではね」
「こいつは三メートルか?」
「いや、十メートルは越えてるね」
笑って答えるグレン。
おいおい、よく笑ってられるな。
三メートルでもでかいのに、十数メートルの魔物が俺たちの前に居るんだぞ?
俺は足が震えそうだぜ…。
そして、俺はまた疑問を問いかけた。
「あとな…、オオトカゲって…炎を吐くのか?」
「吐くわけっ……ある…の…かな?」
カエデに質問した側で空に向かって炎を吐ている魔物。
ははは、炎を見ているからかな?
額から汗が滝のように流れてきたぜ。
「最後に良いか?オオトカゲって角が生えてて、鋭く大きい爪があって、翼が生えてるのか?!」
「絶対無いと思うわ」
冷静に答えるセツナ。
ってセツナ、あんたがここにオオトカゲがいるからって案内したんだろ?!
何言ってんだよ?!
なぁ、この魔物は一体何なんだ!
あ。あれか。
この魔物じゃなくてまだ奥に進んだところにオオトカゲが……。
「そもそも、この森にオオトカゲという魔物は見たことない。というか居ないわ」
「……………は?」
「だから、オオトカゲに似た魔物と言えばこいつしかいないかなっと思って連れてきたんだけど…。ほら、鱗もあるし」
鱗、ね。
だけど、この魔物どこからどう見ても……。
「ドラゴン…だよな」
『グゥォォオ!』
って、言っている側で今度は雄叫びを上げるドラゴン。
俺のセリフに被らせるとは何と言うやつだ。
「何ぶつぶつ言ってんのよ」
「いや何でもない」
さてと、ぶつぶつ言うとカエデがうるさいからこれぐらいにしてっと。
はてさて、どうしよう。ダバスは『オオトカゲの鱗』を取ってこいって言ってたけど、実際にはオオトカゲは居なく代わりにドラゴンと来たもんだ。
ここは一旦戻った方が良いのか…。
でも、何も取らずに戻っても形見は返してくれないし、下手したらもう形見を返してくれないかもしれない。
………、オオトカゲではなくドラゴンの鱗かぁ………よし。
「あの魔物の、…ドラゴンの鱗を取ろう」
その言葉を言った瞬間、皆驚いていた。
しかし、それは一瞬のことだった。
「まぁそうだと思ったわ。全く、面倒なんだから」
「何だかわくわくしてきたよ」
「一度手合わせしてみたかったのよね」
「頑張ろうね!ヤス!」
カエデ、グレン、セツナ、サラの順に俺に向かってそう言った。
みんな…、ありがとう!
「よし!じゃあグレンはドラゴンの後ろへ。カエデは右、セツナは左。サラは回復と補助で皆の援護。俺は正面から行く!」
俺の作戦に皆は頷いた。
さぁ、相手はドラゴンだ、気を引き締めないとな。
「相手はドラゴンだ。鱗を取ったら無駄な戦いは避け、すぐに逃げるぞ!」
「それと、鱗を取ると考えずに倒す勢いでいかないとやられるわよ!なんたってドラゴンだしね」
セツナの言う通りだ。
よし!出だしから全力全開だ!
「みんな!行くぞ!」
「「「「おー!」」」」
そして、俺たちは一斉に自分たちの持ち場へダッシュした。
タイムリミットまであと一時間二十分………。