20.桜花の如く
「今のは一体…」
いきなりのセツナの大技。
俺たちの前にはセツナのその技により道が出来ていた。
「今のうちに!こっちへ!」
「お、おう!みんな!セツナに続くぞ!」
俺たちはセツナのお陰で魔物の大群から脱出し逃れることが出来た。
そして近くにあった洞穴に身を隠した。
それにしても、本当危なかったぜ。
「ヤス、今治癒術で治してあげるからね」
「おう、頼むよサラ」
サラに治癒術をかけてもらう俺。
今日もサラの治癒術は絶好調で、狼にやられた傷がみるみるうちに治っていく。
「ふぅ。にしてもセツナ。さっきの技って…」
俺はさっきの技をセツナに聞いてみた。
「ん?あぁ、あれは私が編み出した技よ」
「でも、神彩流の技ではないよね。型が全然違ったし」
グレンがそう言った。
それは俺も思ったことだった。
「だって神彩流ではないもの。あの型は桜華流っていって私独自が考えた流派よ。まぁ言ってしまえば我流なんだけどね」
桜華流。
それは神彩流とは違い、まるで桜花が舞っているかのようだった。
「魔法と剣術を合わせて使う桜華流。でも、実はまだ未完成なの」
「え?あれでまだ未完成なのか?!」
「えぇ。まだまだ改良や加える点が沢山あると思うの」
しかし、あたらしい流派かぁ。
神彩流後継者でもあり、やっぱり凄い人だと改めてそう思った。
「はい、治療完了!」
「ありがとう、サラ」
よし!腕の調子もバッチリだ。
「治療終わった?じゃあ早くオオトカゲ探しに行こうよ。でないと時間になっちゃうわよ?」
「そうだったな」
俺は腕を組んで言うカエデにそう答えた。
「ん?時間って?」
するとセツナが話しかけてきた。
「あぁえっと、午後五時までにオオトカゲの鱗を取ってグラティアに帰らなくちゃいけないんだ、どうしても」
俺は簡単にそう説明した。
「午後五時までかぁ。じゃあちょっと急いだ方が良いわね」
魔物の大群に襲われて時間食ってしまったからな。
全く、良い迷惑だ。
するとその時、セツナが何か気付いたかのような顔をした。
「ん?どうしたんだ、セツナ」
「私、オオトカゲの居場所に心当たりがあるの」
「何だって?!」
「でも危険よ?大丈夫?」
真面目な顔で言うセツナ。
また危険か。
でもそれを承知で来てるんだから答えは一つだ。
「大丈夫だ、案内よろしくなセツナ」
セツナは頷いた。
さてと、これでなんとかなりそうだな。
「じゃあこっちよ、ついてきて」
俺たちはセツナに託しついていった。
現在の時刻午後三時。
そろそろ焦ってきたぜ。
セツナに案内されてもう三十分経つだろうか。
「まだかセツナ?」
「もうすぐよ」
しかし何故だろ。
俺たちは森ではなく近くにあった洞窟を進んでいた。
しかも結構整備されているような感じがする坑道であった。
「ここで何か発掘でもしてたのかな?」
「あぁ、そうみたいだよ。でもずいぶん昔中止したんだ」
何でだろう。
もしかしてまた魔物が暴れて大変だったとかだったりしてな。
「それは進めば分かるさ」
進めば分かる?
途中に魔物と戦った激しい痕跡のあとでも残ってるのか?
俺たちは歩いていくと、洞窟の出口が見えた。
そして外へ出ると、そこは草木で囲まれ天井はすっぽり穴が開いてる幻想的な広い空間がそこにあった。
「うわぁ~♪凄い綺麗だね!」
「そうだな…。自然の力って本当に凄いな…」
俺とサラで見とれていた。
するといきなりグレンが話しかけてきた。
「しっ!何か近づいてくるよ」
「何だって?」
俺たちは周りに気を集中させた。
すると確かに、微かに地響きがするのを感じとることができた。
しかも徐々に大きくなってきているのが分かった。
「まさか、オオトカゲか?」
「私の記憶が正しければ、ヤス達が求めている物はここにあるわ」
ということはオオトカゲだな。
時間もあと約一時間半ぐらいってか。
帰るのに三十分はかかるだろうけど大丈夫だろう。
「さぁ、出てこいオオトカゲ!」
俺たちは戦闘の準備をして、いつ襲われても良いように待ち構えていた。
そしてとうとう現れた。