19.異様な状況
「あなたが一緒に!?」
「ちょうど体を動かしたかったし。良いかな?」
神彩流後継者で魔法剣士であるセツナさん。
そんな凄い人が俺たちを手伝ってくれるというのだ。
「俺は大歓迎です!」
皆も賛成のようだ。
「あら、大歓迎だなんて。じゃあついていくわね。私のことは知ってるみたいだけど一応自己紹介を。私はセツナ、よろしく」
セツナさんはそう言った後、カエデ見てニコッと笑った。
さっきの話聞こえてたのかな?
「よろしくお願いいたします、セツナさん!」
「セツナで良いわ。さん付けは慣れないの。それと敬語じゃなくて良いわ」
え、それはちょっと抵抗感が……。
「稽古の時以外は堅苦しいのは流石に疲れるのよね」
不思議な人だな。
てか呼び捨てか…。
まぁすぐ慣れるだろう。
「分かった、じゃあよろしく!」
こうしてセツナが仲間に加わり、俺たちは再度オオトカゲの鱗を取りため出発した。
とりあえず滝に戻ってきた俺たちだが俺は考えていた。
「滝の近くの森って言ってもここら辺全体が森だよな。どう探せば良いんだ?」
「とりあえず、森をくまなく探索するしかないんじゃないかな?」
確かにサラの言う通り、詳しい情報が無いからそうなっちゃうよな。
「仕方ない、とりあえず回ってみるか」
只今の時間午後一時。
「はぁっ!たぁっ!てぇりゃっ!」
俺は狼型の魔物を凪ぎ払い、そして斬り裂く。
「お、光閃牙。なるほど、ヤスも神彩流剣士か」
そう言いながら魔物と交戦するセツナ。
光閃牙は神彩流で習う一つの技である。
「しかし見るところ我流かな?神彩流の型ではないね」
セツナの鋭い刀が魔物を一刀両断する。
「おう、セツナの言う通り我流だ」
セツナに負けじと俺も他の魔物に素早く斬りかかる。
「そんなことよりさぁ」
「何だよ、っと」
カエデが話しかけてきた。
「何なのよ、この状況!」
「何って、魔物の大群に襲われてんだろ」
説明が遅れたが、そう、俺たちは今魔物の大群の真ん中にいるのだ。
何故だか知らないけどな。
「とりあえず、倒さないとね」
「回復や補助は私に任せて!」
グレンもサラも気合い十分だ。
「ったくもう、さっさと片付けるわよ!」
「分かってるって。早くオオトカゲも見つけないといけないしな」
カエデも俺も気合いを入れ直した。
「はっ!」
セツナは華麗な動きで魔物を一気に倒している。
こりゃ、セツナがついてきてくれて良かったな。
でも、俺も負けちゃあいられないぜ。
「待ってろよ、オオトカゲ!」
只今の時間午後二時。
「おいおいこりゃ、きりがないぞ」あれから結構戦っているが少しずつしか数が減らない。
どうなってんだ?
流石に異常だろこれ。
「ここの魔物がこんなに団結して襲ってくるなんて今までなかったのに」
冷静に状況を判断するセツナ。
この状況は運が悪いからなのか、それとも何か原因があるのか。
「とりあえず、このままじゃ俺たちの方が先にやられてしまうぜ。どうにかなんないのか」
魔物を凪ぎ払いながら言う俺。
しかしその時だった。
「ぐぁっ!」
俺は狼に腕を噛まれた。
「ヤス!?」
「っく、くっそぉ!」
俺は痛みを堪えながら腕を噛んでいる狼を剣で刺し離し、地面に叩きつけた。
「ヤス!大丈夫?!」
サラが俺の所に近づいてきた。
くそ、ヤバイなこりゃ。
「…仕方ない」
その時、セツナがそう言った。
そしてその瞬間だった。
セツナは前に走り出し、魔物を踏み台にして高くジャンプした。
「くらえ!」
空中で一回転したセツナはそのまま落下し、剣を地面に突き刺した。
すると地面から桃色の風が鋭く周囲に吹き荒れ、周りにいた魔物を切り刻んだ。
しかし、それは神彩流の型から離れた技であった。
只今の時間午後二時半……。