《第一部》1、帝都の外へ
『はてさて、勢い良く飛び出したは良いものの……』
俺は走っていたが足を止めた。
女を見失ってしまったのだ。
因みに持ち物は竹刀と少しの金だけ。
もちろん外に出たのは初めてなので道も分からない。
『どこ行きやがった、あの女』
『がさがさ』
『なっ、何だ?!』
俺は草むらの方を見た。
草むらの中に何かいるようだった。
『まさか、あの女か?』
俺は叫んだ。
『おい、大人しく出てこい!』
その時、草むらから茶色い毛の小動物が出てきた。
ん、何だこの動物?
『ビー』
その動物はそう鳴いた。
ん、ビー?
『なるほど、こいつがビバッチか』
本で読んだことがあることを思い出した。えっと、何だっけな「ビバッチの3日間」って名前の本だっけか。
あれは面白かったな、確か………、
『ビー!』
『うわっ?!』
俺が本の内容を思い出そうとしてた時、ビバッチは俺に飛びかかってきた。
俺はとっさに竹刀でビバッチを打ち払った。
『ビッ?!』
ビバッチは地面に叩きつけられた。
『危ねぇ、ここは帝都の外だった』
俺は気を引き閉めた。
にしてもあの女、どこ行きやがった。
早く見つけて大事な母さんの形見を取り返さなくてわ。
俺が道を進もうとしたその時、
『ビッ、ビッ、ビー!』
ビバッチは起き上がって俺めがけて走ってきた。
『うわっ!何だよコイツ!』
俺は急いで逃げる。しかしビバッチはずっと追ってくるのだ。
何だよコイツ!尻尾振って走ってくるとか気持ち悪いぜ。
とりあえず、いつまでもついてくるので俺は森の中に入り、振りきろうと思った。追って来れるもんなら追ってみろてんだ。
しかし、森の中に入ってもしつこく追っかけてくる。
何なんだよ。
俺、そんな気はないぜ?
俺は森を抜けようとしていた。
しかし、ビバッチはまだ追ってくる。
『くそっ!こんなことしてる場合じゃないのに!』
俺は森を抜けた。
『?!』
その時だった。
俺の身体は宙に浮いていたのだった。
『マジかよ?!』
俺はそのまま落ちた。
バッシャーン!!!
俺は一瞬何が起きたのか分からなかった。
『うわっ!川か?!』
『ビー!!!』
上からビバッチが川に落ちてくるのが見えた。
そして川にダイブ。
『ビー!ビッ!ビー!!!』
するとビバッチは手足をばたつかせながら川を流れていった。
どうやら泳げないみたいだ。
そして俺は何とか岸に上がった。
『ふぅ、まさか川があるとはな。まぁお陰様で助かったぜ』
そう一息つき、周りを見ると川岸に何か流れ着いてるのが見えた。
何だあれは。
俺は近づいてみた。
『ちょっと待て!人じゃないか!』
川岸には意識の無い一人の女が流れ着いていた。
着ている服、いやドレスか?
とにかく見てすぐわかるお金持ちのお嬢様って感じの女だった。
しかしなんでこんな所にそんなお嬢様が。
『って今はそんなこと考えてる場合じゃねぇ!』
俺はまた周りを見渡した。
『あれは?!』
近くに村があるのが見えた。
俺はすぐ彼女を抱き抱え村に急いだ。