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13.形見の行方

肩に襟足の先が付くぐらい髪の長さの二十代後半ぐらいに見える男が立っていた。

そう、ヒドラを術で一発で仕留めた張本人だ。

その魔力は術を知らない俺でも分かるくらい凄まじい威力だった。

その男は俺のところまで歩いてきた。


「良い根性をしていますね。けれど、命を粗末にするのはいけませんよ」


そう言って俺に微笑むと、洞窟の奥へと一人で行ってしまった。

誰だったんだろう。

でもとりあえず助かったぜ…。


「ヤス!」


お、おい?!

サラが俺に抱きついてきた。


「無茶しないでよ!物凄く心配したんだから…」


サラは涙目でそう言った。


「ごめんな、心配かけて」


「うん。あ、今治癒術かけてあげるね」


温かい光に包まれる。

そしてヒドラにやられた傷は瞬く間にきれいさっぱり無くなった。

やっぱりサラの治癒術は凄いな。


「なかなかやるじゃない、見直したわ」


その時だった。

なんと盗賊女からそんな言葉が飛び出したのだ。


「なんからしくないな」


「私、少し勘違いしてたみたい。これで全てがそう思えるようになったとは到底言えないけど…、そうよね」


そう意味深に言った盗賊女は何か気がついたのか、顔を赤らめた。


「あ、いやその。何でも無いわ」


変な奴だな。


「分かったわ。ついてきなさい。あんたの物を返してあげるわ」



そして盗賊女は洞窟を進んでいった。

どういう心の変化か知らないが返してもらえるならそれで良いか。その時、グレンが話しかけてきた。


「俺は今では、いや前からヤスの事は信用出来るから」


「…グレン?」


「さぁ、早く追わないとはぐれちゃうよ」


「あ、あぁそうだった」


グレン?

更なる意味深な発言に疑問を持ちながら、俺たちは盗賊女を追いかけた。




俺たちは盗賊女に案内されやっと洞窟を出た。


「何とか洞窟を出られたなぁ」


外に出るとそこは林道だった。

さてと、ここからどこに行くんだ?


「こっちよ」


見ると盗賊女は道ではなく林の中を進んでった。

よく見ると獣道になっている。


「そういえば、何で洞窟なんかに居たんだ?」


「ん?そんなことどうでも良いでしょ?気分よ気分」


ふ~ん、気分ね。

てか一体何処に行くつもりなんだ。


「もう、いいから黙ってついてくる」


へいへい。


そのままついていくと一軒の小屋に辿り着いた。


「私の家よ。入って」


家ねぇ。

盗賊が住みそうな場所だな。


小屋に入るとそこは何の変哲もない普通の空間だった。

まぁ本が沢山あるぐらいかな。


「本がいっぱいあるんだね」


「あぁ、ここは元々父さんの別荘だったから。ほら、ここ静かじゃん?だからよくここに来て本を読んでたのよ」


サラの言葉に盗賊女はそう答えた。


「じゃあ前はどっかに住んでたってことか」

俺がポロっとそう呟くと盗賊女の表情が変わった。

気に障ることだったかな?


「あれ?」


そしてまた盗賊女の表情が変わった。

忙しい奴だな。


「無い」


「ん?何が?」


「あんたの大切な物」


俺は固まった。

無い?

そりゃどういう冗談だ。


「お前!どういう事だよ!」


盗賊女は考えていた。


「どっかに落としたかな?それとも…」


「それとも何だよ」


「売っちゃったかも」


は?マジかよ?

いやマジで冗談じゃねぇぞ。


「いや~、ここに帰る途中で売ってほしいっていう人がいて、その時に何個かまとめて売った中に入ってたのかも」


「何で売るんだよ!」


「仕方ないでしょ!生きてくためにはお金は必要なの!それに結構高く買い取ってくれたし」


はは、不幸だ。

やっと盗賊女から取り替えせると思ったら今度は知らない人の手の中かよ。


「結構富裕層な奴だったわ。もしかするとグラティアの人間かも」


「何だって?グラティアだと?」


俺の声にびっくりする盗賊女。


「丁度良い、すぐグラティアに向かおう!」


「待って、そいつの事は分かるの?」


うっ、そうだった。

そうか、じゃあ一体どうすれば…。


「仕方ない、私も行くわ」


「はぁ?!何で盗賊女と一緒に」


「そいつの顔知ってるのは私しかいないでしょ?!わ、私だって本当だったらこんな事しないわよ!ただ…」


「ただ何だよ?」


「あんたの事をもうちょっと観察したいだけよ」


「観察?!なんだそれ気持ち悪い」


そう言うと赤くなる盗賊女。


「も、もうどうでも良いでしょ?!」


とまぁこうして俺たち三人に盗賊女が加わり四人でグラティアに向かうことになった。





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