9.造船計画
港町リマーニでは港町だけあって多くの品物が手に入る。
ここでしか買えないものも多々あるそうだ。
そんなリマーニで俺たちは今船を直すための材料を買いに来ている。
「釘、ベニヤ板、丸棒……結構あるな」
まぁ船を修理するって言っても最初から造るみたいなもんだから仕方ないか。
「まぁ良いじゃないか、金はじいさんが出してくれたんだし」
「そうだよね、私たちも使おうとしてるのに全額払ってもらっちゃうなんて何か悪いなぁって思っちゃうぐらいだよ」
サラはやさしいな。
まぁそうなんだろうけど。
「とりあえず、さっさと買って早く戻ろうぜ」
買い物を終えた俺たちは大量の荷物を抱え、じいさんの小屋に戻ってきた。
ふぅ、結構重かったな。
持ってくるだけでも疲れたぜ。
サラも腕が疲れたみたいでぶらぶらさせている。
グレン………は、いつもと変わらない。
疲れてないのか?
「こういうのは慣れてるからね」
そうかい。
俺もいつも竹刀振ってたはずなのにな。
「おぅ、やっと戻ったか、遅いぞぃ」
すると小屋の中からじいさんが出てきた。
じいさんはニヤニヤしていた。
何笑ってるんだ?
「ほれほれ、買ってきたんならそんなとこ突っ立ってないで船の修理に取り掛かるのじゃ」
「あの、俺たちは素人だからはっきり言って修理の仕方が分からないんですが…」
グレンがそう言うと、じいさんはまた小屋の中に入ってった。
そして何やら紙を持ってきた。
「そうだと思ってのぅ、ほれ、これを見てやるのじゃ」
そしてグレンはその紙を渡された。
グレンはその紙を見てびっくりしている。
「素人の俺にもちゃんと分かる風に書かれてる」
俺も覗いてみると、設計図とはかけ離れているが、読み手の脳内にスッと入ってくるような不思議な内容となっていた。
びっくりだな。
こんな資料何故持ってるんだろう。
「よし!じゃあこの紙に書いてある通りにやろっか!」
サラは材料を持ち、船着き場に向かった。
「そんじゃあ、やりますか」
そして俺たちは修理作業に入った。
船の修理は順調に進み、日が暮れてきた辺りで大体半分は修理出来た。
「ふぅ、暗くなってきたな」
「よし、今日はそこまでじゃ」
すると小屋からじいさんが出てきて話しかけてきた。
「どうだ、じいさん。上手く出来てるだろ!」
俺は誇らしげに言ってみた。
しかし、ポカッと一回殴られた。
「調子に乗るでない。海に飲み込まれるぞぃ」
そう言うと、船を点検し始めた。
イテテ、にしても叩かなくても良いじゃないか。
「うむ、まぁまぁじゃの。じゃあ今日はもう戻りなさい。港町の宿屋にでも泊まってまた明日じゃ」
そう言ってじいさんはまた小屋に戻ってった。
とまぁ、俺も二人ももうくたくただ。
「じゃあ、宿屋に行きますか」
そして、俺たちは宿屋に向かった。
明日で修理を済ませて何としても隣の大陸に行かなければ。
俺は宿屋に向かう間、頭の中でそう強く思っていた。
宿屋に着き夕飯を済ませて、その後部屋を借りた。
そして言うまでもない。
俺はベットに雪崩れるように倒れ、そのまま眠りについた。
そして次の日の朝。
俺たちは支度を済ませじいさんの小屋に向かった。
「じいさん?」
しかし小屋の中には誰もいなかった。
不思議に思いながら、俺たちは船着き場に向った。
するとどうだろう。
じいさんは立派な船の中でいびきをかいて寝ていた。
「って!船が出来上がってるじゃないかっ!」
俺たちは目を疑った。
マジかよ、じいさんもしかして一晩かけて造ってくれたのか。
「…ん?何だお前たちか…」
じいさんは起き上がった。
そして背伸びをしていた。
「うむ、今日もいい天気じゃ!」
確かにいい天気…、じゃなくて。
「じいさん、あんた何者なんだ」
「何って造船技術者だが?」
俺の問いにそう答えた。
なるほど、あの紙といい、船を造る技術といい、そういう訳か。
「ん?じゃあ何で俺たちに船を直させたんだよ。自分で出来るじゃないか」
「ん?だって材料調達がめんどくさかったしのぅ。あと暇だったから」
暇だったからって。
まぁ良いか。
「これで海を渡れるね!」
「あぁ、そうだな!」
俺とサラはハイタッチ。
グレンも嬉しそうだった。
「まぁ、最後は我慢できなくて造ってしまったが、約束通り船を貸してやろう。ちゃんと準備してから出港するんじゃぞ」
「あぁ、分かってる!ありがとな、じいさん。よし、港町に買い出しに行くぞ!」
「あ、待ってヤス。買い出しは君とサラに任せた。俺はじいさんに船の操縦の仕方を教わるよ。前から興味あったし」
そうか、操縦出来なかったら意味ないもんな。
俺は操縦の方はグレンに任せ、サラと買い出しに出掛けた。
今はもう盗賊女のことしか頭になかった。
情報を頼りに絶対見つけ出してやる。