第56話【白馬さんの決起】
着状態は続いている。
ゲートの前に突っ立つ僕に、その直前まで匍匐とかしてる多国籍軍な人たち。
そりゃあそうだよね、こっち守っているのは普通にダンジョンウォーカーだから、子供を撃つってわけにもいかないもんね。
それ以上に、空には報道機関のヘリコプターと、周りにはカメラを積んだ、取材車っての? この大通公園を取り巻くビルの上からもカメラを構えてる人が何人もいる。なんか櫓見たいの組んでる人達もいる。
みんなこの北海道ダンジョンに注目してた。
感じからすると、大量の視線の睨めっこだね。
これだかの人、軍隊、機材に囲まれていて、音が一つもしないんだよ。
ここに野良犬とか通り過ぎると絵にもなるけど、札幌市って野良猫や野良犬の類っていないからなあ、この辺にいるのは、カラスかカモメくらいのものだよ。
だから、時折、遠くの方でカラスの鳴き声たした。
いや、まあ、それはいんだけどさ、その前に確信しておきたい状況とかがあってさ、
その二肩さんの近くにいる、一番物分かりの良さそうな会長さんに尋ねてみたんだ。
「これ、一体何?」
「多国籍軍だ、ここを占拠しに来たんだ」
「それはわかるけど、なんでここをみんなで守ってるのさ?」
だって、おかしいじゃない。
ダンジョンだからね、ここ。
北海道ダンジョンなんだ。
だから、中に入って侵入者を待つならわかるんだけど、なんでわざわざ外に出て、軍隊の人達と対立しようとしているのかがわからない。
ダンジョン何に入ってしまえば、どんな強力な軍隊だって、入ってこれない以上、無力化できるのにさ、わざわざ衝突しようとしている意味がないもん。
それに、全員、待ってる構図だよね。
今僕らを包囲している軍隊の外側にも、新たな部隊が着々と合流している。
さっきまでなかったはずの戦車が今、公園内に入って来てる、この国の戦車じゃないなあ、何処の国だろ?
更に報道機関が集まってくる。
すごいな、って思うのは外国の記者っぽいけど、マイクとカメラを一人で抱えてる人が何人か、僕らの前に来るんだよ。
匍匐前進っての? ズリッズリって向かって来てる。
一番近くの人と目があると、なぜか微笑まれた。
一体、何をしたんだ?
そんなことを考えた瞬間だった。
4丁目ゲートから、一歩、白馬さんが外に出る。
手には拡声器を持って、それをゆっくりと口に当てる。
一瞬、シンと静まり返っていた大通4丁目のビル街の空にハウリングが響く。
白馬さんは一回、口から外して機器を調整して、再び口に当てる。
そして、
「これは、決起である」
と叫んだ。
その声は、木霊のように市街に響く。
一斉に白馬さんにカメラが集中する。
「わが国が、わが国として、わが国の独立と平和への行動である」
え? どういう事? うちの国って、平和で独立しているんじゃないの?
って一瞬疑問もよぎったけど、今は話を聞いてみようと思う。
「そして、これより開始される行為は、全てこの国から始まり、世界全土に広がり、この国に集結する」
んんん、ちょっと雲行きが怪しくなって来たぞ。世界とか言い出してる。
「世界はこの北海道ダンジョンを中心に解体され、そして再構築される」
そして白馬さんは言った、
「これは、世界征服宣言であり、そして、世界を統べる真の王の誕生の瞬間である!!」
思わず固唾を飲み込んでしまう。
白馬さんて、こんなことを考える人だったんだ。
駅前通りと大通り公園の交差する金融機関ビル、そして、大手通信会社のビルの、普段は天気予報しか写してない大型モニタに、自身の野望を宣言す白馬さんが映し出される。
その凛とした凛々しい顔立ち。
まさに、その宣言にふさわしい表情たった。
いや、ほんとどうなるんだろう?
確かに、スキルの力は強力だし、その力を使えば白馬さんの言ってる事って可能かもしれない。
でも、ちょっと大きすぎる気もするんだ。
白馬さんがどれだけ力持ちでも、きっとこの世界は広すぎて、国も怪しいよね、だって、この国にクーデターとか起こってしまったら余所の国が黙っておかないもの。
確か、以前、瑠璃さんが言ってたけど、
「外国資本がある、だから世界経済に多大な影響が出てしまうだろ? お金持ちはお金持ちのままでいたいものだ、だから、世界はこのような現状変更を望んでいない」
って言われる。
横見ると、瑠璃さんと桃さんがいた。
え? 何処から?
って思ってたら、真希さんもいたよ。
「ガキが、血気に走りやがって……」
とか、今すぐにでも、白馬さんをボコりに行こうって勢いだよ。
そして、更にその後ろから、
「班長! 何を考えてるんですか!」
って三爪さんが息を切らしながら怒鳴ってる。




