表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
990/1335

第49話【僕の願い、だから彼女は決断した】

 僕はその言葉を、その意味を理解するわけにはいかなかった。


 だって、今、こうして春夏姉ちゃんは動いてる。喋ってる。


 ここまで来て諦めるわけにはいかない。


 だから、


 「なんでもするから、お願いだから春夏姉ちゃんを生き返らせて、取り戻して!」


 と叫んだ。


 「ほら見ろ、もうすっかりその気になってしまったべ」


 と真希さんが言う。


 「少し残酷なことをしてしまったべ、もう、お前の春夏は生き返らない、二度と帰る事はないんだ」


 と真希さんは酷いことを言った。


 でも、その真希さんの言葉を今思い出してみると、それを言わないといけない彼女もまた辛かったのだと、今は理解できる、でも当時僕は4歳くらいなわけで、そんなの理解できるはずもないから、


 「嘘つき!!!」


 って大声て真希さんを罵倒してしまった。


 だって、真希さんがここまで僕を連れて来て、そして、春夏姉ちゃんを生き返らせたいかい?って言い出したんだ。


 あれ? なんか矛盾するぞ。


 一瞬、僕の思考は混乱する、今の思考と当時の思考、そして、真希さんの言うこと、進言、提案、そしてあの時言っていたこと。


 これ、誘導されてる???


 もちろん、これは今、かつての僕を見て思うことだから、当時の僕なんて気がつきはしない。


 そうか、真希さんは最初からそのつもりだったんだ。


 だからかな? あの時の険しい真希さんの顔、そして、今は何故か彼女が、真希さんが笑顔になってるって感じる。


 ああ、そうか、これもまた彼女の目的の一つだったんだ。


 今、一つ気がついたことに驚く今の僕は再び過去の僕に立ち返る。


 そして、春夏さんになった彼女は言うんだ。


 「ねえ、秋くん、私と一緒になりましょう」


 そう言う。


 「一緒に混ざって、そこから二つに分けるの、秋くんは多分、沢山を失うことになるかもしれない、でも、そして今すぐにではないかもしれないけど、いつの日にか春夏は戻るわ、彼女の欲望、その続きを思い出せば」


 そんな言い方をした。


 「それでいいでしょ?」


 その言葉に真希さんは、


 「何でそこまでするんだ? お前はあの子達(異造子)を守るだけで、他はどうでもい言っていていたべ?」


  しばらくの沈黙。


 そして、春夏さんの彼女は言うんだ。


 「このダンジョンで、誰も子供は不幸になんてさせたくないの」


 と言った。


 すごく強い意志。断固たる思い。つまりは彼女の存在そのものという感じがした。


 そんな真希さんは、


 「そうだべなあ、それはお前の本能みたいなものだからな、だからこのダンジョンは世界にも、いるかいないかわからないようなこの世界の神にも許容されてるんだからな」


 と呟いた。


 「これから私と秋くんを混ぜる、そうすれば外でも春夏は動いていける、あとはゆっくりと探して行けばいいの、彼女の想いを、彼女自身の欲望を……、その続きを……」


 今の僕の知る言い方をすれば、つまりは僕にとってもリスクはあるということになるんだ、僕の記憶、僕の意志、僕自身の全部を春夏さんと混ぜる。


 怖さはあった、でもそれ以上に僕は春夏姉ちゃんを、僕の春夏さんを連れて帰りたい、そう強く強く思っていたんだ。


 だから躊躇はしたけど、でも、


 「うん」


 と返事をする。


 もちろん、うん、だよ。


 それ以外の選択肢なんてないよ。


 もういい。僕はどうなっても春夏姉ちゃんがまた、僕の所に帰ってきてくれるならそれでいい。


 「ヘタレだけど度胸はあるなあ、今日花の息子だよ、そういうところは」


 と真希さんは呆れる様に言った。


 「彼女が最後に何を思い、どこへ行きたかったかを、この世に広がる残留した思念の中から拾えれば、心も再生する、それまでは、春夏は私」


 と言った。


 「ダンジョンはどうするべ?」


 「もう安定してる、あなたと、ティアママがいれば大丈夫でしょ? 一応、代理は残してゆく」


 真希さんは複雑な顔して、


 「『落ちてくる世界』の方はいいべか?」


 「中にいても、外にいても私は私だから、それに一人では『世界を破壊する一撃』には足りないから、これでよかったのかもしれないわ」


 と彼女は僕の目を真っ直ぐに見て言う。


 「それも、これが正解かもしれない、私一人では力が足りないから、混ぜて与えて、飲み込んでもらえると、きっと秋くんの力になる、この子のこれからの力ならきっと……、あの世界を壊せる」


 そう言った。


 「まあ、いいべ、こうなったら、いい方向へ転がる事を祈るべ」


 と言った。


 そして、


 「じゃあ、今は春夏ちゃん、あんたは、この子を選ぶんだな?」


 すると春夏さんは頷いて、


 「ええ、私の半分をあげる、そして秋くんの半分をもらう、世界を構築する力の半分、その為に、今日の記憶、思い出は事は千切れてしまうけど、一番支障の無いその部分でやり取りをするから、一番いらないあなたの記憶は近々のこの記憶は消えてしまう、というか制御するわ」


 と言った。


 ええ……、嫌だよ、若干、腰がひけるものの、その春夏さんの顔を、ちょっと困った顔を見て、思い返す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ