第95話【ある意味ダンジョン最強能力者】
よく見ると、マップの上に黒い無数の点があって、それが動いているんだよ。
まさか、これって?
「人なの? シリカさんの地図には人が表示されるの?」
しかもリアルタイムで動いている。
「違う、そうじゃなくて、ここ見て」
と珍しく興奮してた春夏さんはマップの多分、僕らの現在位置を激しくベチベチと叩く。
ん? って注目して見ると、そこには、なんか猫の顔見たいのと、棒、そしてリボンをつけた女の子の顔みたいなのと、なんだろう? 5角形みたいなマークが表示されて、わずかに動いている。
あれ? これって、僕らなのかな?
僕の疑問と、あまりの春夏さんの動揺ぶりに、角田さんが説明してくれた。
「シリカは、接触した相手を把握して、マーキングできるんですよ、1度マーキングされると、ダンジョン内に何処に誰がいるかまで把握されますよ」
あ、そうか、読み込みって言うさっきの行為はこの為だったんだ。んー、このリボンの子が春夏さんだ。でもって、この棒、あ、これバッドだ、角田さんだ、なんか笑える。でもって、位置関係から、この猫みたいなのが、シリカさんで、この5角形が僕ってことになる。
次に並べるノートを選択しているシリカさんに、忙しい中だけど尋ねて見た。
「この5角形って僕ですか?」
「おお、そうですね」
「5角形なんですか? 僕?」
するとシリカさんはちょっと考え込んでから、「あー」って言って、
「これは5角形ではありません、んー多分、そう、洗濯バサミですよ」
そうか、洗濯バサミなんだ僕、なんで洗濯バサミなんだろう? 僕に洗濯バサミ要素って何かあるんだろうか? いやいや、ちょっと適当な事言ってない? 洗濯バサミって言うより将棋のコマみたいでしょ?
多分、その時、僕はシリカさんと言う名の疑問の海に溺れていたんだと思う。角田さんが助けてくれた。
「こいつのボケは天然ですが、その深度はブラックホール並みです、ハマって抜け出せなくなりますから、遠くで眺めるだけにしてください、帰れなくなった奴を何人も見てますから、その凶悪な重力圏には近づかないようにしてください」
角田さんの真剣な眼差しに思わず息を飲んでしまう僕がいた。
決して突っ込んではならないボケって言うのあるんだな。何もかもを吸い込む『暗黒ボケ』って言うヤツ初めて見たよ。
っていうか、そこじゃないな、関心するのは。ダンジョンウォーカー的には、このマップの細かさの上に、さらにそこにいう人間までも把握できてしまうなんて、確かにすごい能力だ。そうだ、こっちの方をメインで考えよう。
「興味本位で中層階に行こうとしている奴が多いな、なんとかなるだろ、シリカ」
「野次馬はNGなので通せんぼです」
そう言うと、シリカさんは、、今度はノートのマップに書き込み始める。
「通せんぼは、2Bで濃く濃くですね」
そう言いながら、階段付近にいるダンジョンウォーカーであろう点を区画してそれ以上進めなくしている。
この人、マップ上から空間を操作できるんだ。
これって、マッパーとしての領域を超えてる気がする。
僕自身が、そのマッパーってクラスについて、あまりわかってないけど、もうこれって、魔法スキルの空間操作なんて問題にならない程の能力だと思うよ。
角田さんの言うこと、凶悪なスキルってのが今、理解できた気がする。
全てを映すシリカさんのノートに、空間に物理干渉できる能力。
ダンジョン内で、行方不明になってダンジョンウォーカーの探索や確保。
これはギルドも幹部にする訳だって思ったね。
まさに地の利をすべて余すことなく網羅するっていっても過言ではないきがする。
って、そんな感心を通り越したあきれた顔して見てると、シリカさん、
「おお、そんな顔されても、もうマルセイバターサンドはもうありませんよ」
って言われちゃった。しかもちょっと困った顔してる。
「うん、まあ、大丈夫」
適当な返事をしてしまう僕だったよ。