第45話【僕の中では最初から可愛い女の子だったよ】
途中に最後のジョージさんがいたけど、難なく倒して、深階層にたどり着くと、そこはとても大きな扉があって、こんなのどうやって開けるんだよって思うより早く、真希さんは難なく扉を開いて、僕を連れて中に入った。
広くて真っ暗な室内。
まるで闇はどこまでも続いているように感じた。
「こっちだべ」
って真希さんが先の方で僕を呼んだ。
僕は真希さんの背中をう。
すると、突然、闇が、上の方で言葉をかけてきた。
「その子供はなんだい?」
少し低くて重い声。でも、どこかのおばあさんみたいな優しい喋り方に、こんな真っ暗なのに僕はちょっとホッとしていたんだ。
「ああ、今日花の息子だよ、秋っていうんだ、通してももらうよティアマト」
と真希さんは言う。
「驚いた、こんな子が私たちのルールを突破したのかい?」
「ゼクトはともかく、他は多めに見てもらってる、ティアマトもそうしてくれるべさ?」
「ああ、このダンジョンでお前がそう言うなら仕方ないさ」
そして、そこからはよくわからない。と言うかどこをどう歩いたのか、上も下もない変な空間を、とても長く曲がりくねった空間を歩き続けた、まるで大きな白い蛇の中を歩いているみたいな気分だった。
「ほれ、キョロキョロしたって何もないべ、私についてくるべさ」
と行って先を歩いてくれる真希さんについてゆく。
その時に、僕のキョドった気持ちを紛らわす為なのか、真希さんは色々話してきた。
今いくつだべ、かは始まって、
「今日花……、お母さんは優しいかい?」
とか、
「学校楽しい?」
とか、
「好きな食べ物とかあるのかい、アッキーん?」
とか、
「早く大きくなって、ダンジョンくるべさ」
とか、
「私がアッキーのお母さんでも良かったって思わないべか?」
とか、中には変な質問もあったけど、どれも取るに足らないものばかりだったから、なんとなく、軽い返事をして聞き流していたんだ。
長く、白く、ふわふわしたところを抜けてゆくと、見た目に何も変わらないけど、ただただ広い場所に連れて行かれたんだ。
すると、今度はいきなり僕の心の中、いや違うな、頭の中かも、そこに声が響いてきたんだ。
「誰?」
そんな一言。
小さな声、どこか驚いてる声、そして怖がってる声。
「安心するべさ、自分の事、自分の知ってる事を話せばいいべ」
と言われる。
だから、
「真壁秋です」
と答えた。話してる相手がわからないから、どこに話していいのかもわからないで、ともかく声に出した、伝えようと思った。
大丈夫かな? 届いてるかな? って思って、上も下も右も左もわからないこの空間で僕はひたすらにキョロキョロしたんだ。
「何してるの?」
良かった、次の質問が来たから、聞こえてる、伝わっていると、そう思ったんだ。
でも、その「何しているのか」の質問だ多岐にわたりすぎていて、僕は一瞬真希さんを探す、すぐ横にいてくれて、何も言わず、特に僕に指導しようともせずに、自由にやらせてくれてるみたいで、ちょっと力を抜いて僕は話した。
「春夏姉ちゃんを生き返らせて欲しいんんだ」
と言う。
「ダンジョンでは人は死なないわ」
と知らない誰かが言った。
「違うよ、ダンジョンで死んだんじゃないんだよ」
僕は言う。
そうなんだ、僕は今でも春夏姉がどうして死んだのかを知らない、でも死んでる事実は知ってる、それだけは間違いなくわかってる。だっていないもの。
「体は?」
僕は困った。
春夏姉ちゃんの体が無いから、お葬式の時も棺はからだったから。
答えに困る、答えられない。
「東雲の血を狙われた、跡形も無くだべ」
と真希さんが言ってくれた。
「そう……」
そして、その誰か知らない彼女が言うんだ。
「私は『春夏』を知らないわ……」
その言葉に、僕は特に何もだかけど、真希さんがびっくりしてた。
「アッキー、お前、この子を今、彼女って、そう思ったのかい?」
って聞かれた。