第44話【アモンさんに、妹に出会う】
次に呼び出したのは、とても綺麗な女神様【慈愛と破壊の女神マモン】と名乗った。
このマモン、つまりアモンさんだね。彼女もまた角田さん同様に、僕の知る姿ではなかった、なんかサイズがでかい、そして、背に蜘蛛のような触手がいっぱいあって、ああ、これ雪華さんのエクスマギナと同じような姿なんだ、って思った。
そして彼女は、
「わかった、許可しよう、『愛』を渡そう」
とあっさりと快諾。
そして、
「じゃあ、これ、もらってくから……」
と言って、僕と一緒にいた小汚い、当時のクソ野郎さんを小脇に抱えて連れて行ってしまう。
「ちょっと待つべアモン! そういう話ではないべ!」
って真希さんに言われるも。
「これ、私のにする、前から気にはなっていた、大丈夫、立派に育てて自分の旦那にするから、最後まで面倒みるから」
と、これは過去の事で、きっと事実なんだろうと思うけど、ここまで顔が紅潮したって言うか、鼻の穴の膨らんだアモンさんて見た事なかった。
本当に欲しいものを手に入れたって顔をしていた。
「おい、ちょっと待て、そいつはダンジョンみんなで育てるって約束したべさ!」
って真希さんの言葉も虚しく連れて行かれてしまう。
何が凄いかって、小脇に抱えられてる、当時のクソ野郎さんはまるで気にしてないみたいな、自分の将来の重大な分岐点かもしれないこの事態に、何も感じてないところの大物ぶりが半端なかった。
そして、この時からアモンさんの長期に渡る計画は始まっていたんだなあ、って確信した。
女の人って、こう言う長期的に立った計画して実行する能力ってすごいよなあ、って思う。ともかく、最近も思った事だけど、二人に幸あらんことを願ってやまない僕だった。
そして次は、若干進んで、また女神様だ。
「我こそは、贖罪と鏖殺の女神ブリド、罪を犯す者よ、贖罪を求めよ」
と呟き、現れるや否や、
「ん? 今日花が小さくなったぞ?」
とか言い出す。
これは、この三柱神みんなに言える事なんだけど、大人の2倍くらいの背丈はある。だから大美人って感じだった。
「今日花の息子だよ、技能もしっかり受け継いでるべ、さっきはゼクトを瞬殺だったべさ」
「真面目に? じゃあ私のにしていいか、さっきのマモンみたいに?」
とか言い出す。
「本人に聞いてみればいいべさ」
真希さんもう他人事だよ、
「そっか、じゃあ…………」
とその大きな手で僕の事をヒョイって両脇を手で軽く持ち上げて、
「汝に問おう、その将来と受け入れるべく未来を…………」
幼い僕にブッチューっと暑苦しいベーゼをするんだ。
そして、
「あれ?」
って言って、しばらく考えて、「おかしいな?」って呟いて、再び口づけをする。
今度は長かったけど、また口を離して、
「あれ? なんだろうこれ?」
と言って真希さんに、
「なあ、なんかちっともトキめかないぞ、なんか変だ、まるで親や兄弟にキスしてるみたいな、愛情のベクトルが変えられてしまうんだ」
と言った。
もちろん、僕は特に何も思わない。たとえこれが僕の知らない僕の初キッスだとしてもだ。そっか、僕の初キスの相手は妹だったか……。・
と思っていたら、
「それは違うべ」
と真希さん。
ああ、そうか、お母さんってオチかあ、って再び思ったら。
真希さんは意味ありげに微笑んで、
「その辺はまあいいべさ」
とか言った。
「おかしいなあ、こいつ私の旦那にならないのか?」
とか言い出す。
そして僕の顔をじっと見て、
「私達、鬼族はさ、育ちきった雄より、育つ前の雄を卵のように育てて、旦那にするんだ、お前、いい線いってると思ったんだけど、先の時間軸ではどうも旦那ではないようだな」
とガッカリしてた。
そして、彼女、ブリド様は、来た時みたいに気さくに帰って行った。
「これで、いいべさ」
と言うそして、僕は真希さんと二人きりになって、さらに深いところに降りて行った。