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第39話【くちづけだって…、ハハ、口づけかあ… え? キスって事?】

 僕の目を真っ直ぐに見つめる春夏さん。


 え? なに? どうしたの??????


 よく見ると、春夏さんの体ごと僕の方に向いていた。


 ん? どうしたんだろ?


 なんか、春夏さん、ちょっと困った顔してるなあ、あ、神父が何か言ってるけど、なんだろう?


 よく聞こえない。


 「………………………………を!」


 え? なんて?


 思わず神父さんを見てしまう僕。


 その神父さん、きっと僕らの前で何度も言っていた言葉を再び言った。


 「くちづけを!」


 何言ってるんだろ?って春夏さんを見ると、


 あはは、春夏さん、顔真っ赤だ。


 そんな僕らを前にもう一回、神父さん怒鳴るみたいな感じで、


 「誓いのくちづけを!」


 って言った。


 ああ、そう、くちづけね。


 「春夏さん、くちづけだって」


 って何も考えずに思わず反復詠唱みたいに口ずさんで、自分の口から出た言葉に戦慄した。


 「はあ?! くちづけ????」


 くちづけって言ったら、キスだよ。接吻だよ、チューだよ!!!


 いやいや何言ってるの?


 そんなの、できるわけないじゃん。


 確か法律では禁止されてる筈でしょ?


 要件としては18歳以上で親の許可とかいるんじゃないかな? あと、確か住民票もいると思ったよ。


 いやいや、待て待て、それ以前にこれって、結婚ごっこじゃん。


 結婚するフリじゃん。


 なんちゃって結婚式じゃん。


 そうだよ、だから、キスする必要もなくて、普通にここはキスした事にしてやり過ごすところだよね。ああ、そうだよね。


 って僕はちょっとホッとして、安心して春夏さんを見たんだ。


 寧ろ油断と言ってもいい。


 さっきの魅了の一件も忘れて、ほとんど無抵抗に見ちゃった。

 そしたらさ……、


 ドン! って来た。


 思わず、う! ってなった。


 だって、その春夏さんの笑顔がさ、すごい破壊力を伴って僕の視線を再び、いやさっきまでよりも強力に僕の何かに働きかけて来るんだ。


 衝撃を受けた後も、お? おお?ってなって現状を把握できない。


 いやあ、おかしいんだよ。


 いつも僕に向けてくれる優しい笑顔だよ。


 本当、普通に見てるはずなんだけど、あ、距離かな? 間合いが近いのかな?


 なのに、なんだろうこれ?


 ああ、もううるさいなあ!


 誰だよ、ドキドキドキドキって、ちょっと鼓動早すぎなんじゃな

いかな? 本当にもう、何も聞こえないくらいうるさい。って僕だよね、この心臓の音。耳の中にまで響いて、周りの音なんて聞こえやしないんだ。


 顔がカーって熱くなって来る。


 今の時点て、自分の体の変化に戸惑う自分がいるんだ。


 本当に、これ以上はヤバイかもって、生命の危険が危ないと感じたんた。


 救急車とか呼んだ方がいいかも、って神父さんに言おうとしてしまう僕は、その時、初めて、自分の顔がロックされている事に気がついた。


 って言うか物理的にホールドだね。


 うん、動けない。


 ああ、そうか、僕の頬ってか、顔? 春夏さんの手に、優しくて綺麗な指に完全かつ優雅に固定されてるよ。


 気がつくと、顔、軽く持ち上げられてるし。体も向かい合った状態でピッタリとくっついてるし。


 下がろうにも、顔と首、正面からの体表で固定されてるから、僕動くに動けないよ。


 すごいなあ、春夏さん、体術系もバッチリだね、こんな容易く体の自由を奪われるなんて思わなかった。


 ああ、そうか、春夏さんの思惑っていうか、やってる事ってわかったよ。


 つまりは、ここではキスしなきゃならないって事で、この結婚式は、なんちゃって結婚式で、お遊びでイベントで結婚ゴッゴだから、キスするフリをしようって事だね。


 なるほど、なるほど。


 まあ、そういう事なら、って思って、僕はひとまず落ち着いた。


 落ち着いたんだけど、おかしいな。


 相対速度がね、いや相対位置の関係がね、その進行を止めないんだよ。


 春夏さんの綺麗で可愛らしい顔がじっくりゆっくりと迫って来る。


 いやいや、ちょっと、ダメだよこのまま行くと、僕と春夏さんの、一部、互いの顔の中で一番外部に飛び出てる鼻同士がぶつかってしまうよ。


 特に、春夏さんの鼻って綺麗に筋とか通っていて……、あ、回避運動を始めた、なるほど、これならぶつからないねえ。


 若干、顔の角度を調整し始めた。


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