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第38話【花嫁春夏さんに付帯する『魅了』に対する言い訳】

 気がついたら、僕、横に立つ春夏さんをガン見してた。


 白いベールに顔を隠す春夏さん。


 うっすらと見えるその横顔から、僕、視線を固定されて、そのまま動けないでいた。


 完全に魅了されていた。


 わかってるよ、本当に馬鹿みたいだって。


 でも、本当に、純白のウエディングドレスに身を包んだ春夏さんの神々しさの前には、もう無理。購えない。抵抗できない。耐性がない。そもそも何から防御したらいいかもわからなくて、結論から言うと、なんでこんな状態になっているんだろうって、考えてしまう。


 いやあ、だって僕は春夏さん好きだからさ。そうだよ、大好きだからいいんだよなあ、この思考系で。何を贖おうとしてるんだろう? 


 いや、その前に何を今更って感じだよ、だって春夏さん美人だし、美人が更に美人になってるこの現状において、僕は何を抵抗しているんだ? って気持ちになり始めてる。


 そうだよ、いいんだよそれで。


 って、さっきから神父さん咳払いうるさいなあ、何度もしてる。


 今、僕は、この花嫁化した春夏さんって言う、極めて稀にで、この世界の奇跡の頂点とも言える圧倒的現象を受け入れ始めようとしてるんだから、ちょっと静かにしてってなってる自分がどれだけおかしいな思念に囚われているかなんて、わかってる。


 つまりあれだよ。


 これって心のアンデット化なのかもだけど、吹き上がって来る幸福感に僕は抵抗する手立てはないんだ。


 だから、本当なら二人揃って、神父さんの方を見ないといけないこの現状において僕は春夏さんをガン見続けている。


 多分、この視線固定、謎の達成感に、無限とも言える生産される幸福感は、祝福という名の、ある種の呪いに違いないと思ってる。


 でも、そんな強力な呪詛も、


 「秋くん、恥ずかしいよ」


 と伏せ目がちに、恥ずかしそうに言う春夏さんの言葉によって解除される。


 ごめん、と言おうとして、


 「はひ!」


 って変な返事になってしまって、僕は前を向いた。というか前を向く事ができた。


 あの状態での春夏さんの恥じらいを含んだ言葉は、更に威力を増して、即死するかと思ったよ。心に物理攻撃食らってる気分だったよ。しかも回避無効みたいだし、防御不能でもある。


 まあ、焦って自分を見失うなんてことは慌て者のの僕としては割としょっちゅうあるから、今更驚きもしないんだけど、でも、今の心理状態って、今までかつて経験した事ない気がするんだ。


 ほんと、普通に何かから絶対位置に追い詰められているような、そんな気がする。


 なんなんだろ?


 って思う僕は、その原因であると思われる春夏さん(花嫁仕様)をもう一回見て、いやあ、もう危険だからさ、直視はいけないと思いつつ、なんでかもう見ちゃう、ってかこの視線をコントロールする僕の行動を司る欲求に逆らえないのもまた事実なんだ。


 おかしいなあ、今この会場には桃井くんいるから、今の僕にはいかなる状態異常も起こりえないんだけど、この効果って、間違いなく『魅了』だよ。それも今までに味わったことのないほどの強力な変化をもたらす効果だよ。


 神父さんが何か、多分、とっても良い事を話してるのに、会場には割れんばかりの拍手なのに、僕の目は、意識はもう春夏さんから移動できない。


 これでもかってくらいの、今更?って思う間もなく、隣にいる春夏さんを認識したい気持ちでいっぱいになるんだ。


 春夏さん、ちゃんと前見てるのに、僕は俄然、春夏さんの横顔をガン見してる。もう、なんか情けないやらかっこ悪いやらで、どうしよう。


 ちなみに、僕、これ以降、『魅了』とかの意識を操る系のスキルに対して、鬼耐性ができたんだよね、いや、だって、どんな状態だろうと、花嫁姿の春夏さんが横にいるって言う状態よりはみんな緩く感じるようになったんだよ。


 まあ、当たり前って言ったら当たり前だよね。ダンジョンにどんな美女がきて、どんな状況かに陥ろうとも、春夏さんの花嫁姿には遠く及ばないよ。


 多分、これって、僕にだけ効果100倍くらいの特攻とか持ってると思うよ。


 いや、もう、ダメだ、ああ、全部見ちゃう。いやらしい視線で顔にやけてるかもって思うけど、もう止まらないんだ。春夏さんのその顔、姿、首から肩、背中、胸、お腹とか足とかみんな見ちゃう。


 きっといやらしい目してるはずだよ、最低だな僕。


 でも、その情けないなあ、って思う気持ちなんて、吹き上がる幸

福感にどこかに吹き飛ばされてしまうんだ。


 すごいなあ、春夏さん。


 ほんと、すごい。


 何がすごいかって、もう、そんな事わからなくなるくらいすごいんだよ。


 あ、ここ、心の落とし場所だ。


 そうだよ、すごいんだ、だからいいんだ、って思ってホッとした僕、でもそんなのも束の間で、急に春夏さん僕と視線を合わせた。

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