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第37話【絶対存在、耐性無視、『真横に花嫁(アルティメット春夏さん)』という状態異常効果】

 僕は、思わず固唾を飲み込んだ。


 うう、緊張する。


 本当に、これ、遊びで、ゴッゴの結婚式だよね。


 おかしいな、なんかすでにそんな雰囲気じゃあないぞ、コレ………。


 特に何も考えないで、ノリと勢いで来ちゃったけど、もう、なんだろう? この雰囲気。波状攻撃されるみたいに、あの時のフロストジャイアントのブレスみたいに、吹き付けられる勢いは、一気に僕を飲み込み消滅させる勢いだよ。


 覚悟も意識も固定されないまま、僕の決心なんて置いてけぼりな感じなのに、次のタスクに進んで行く。


 「扉を開きます」


 と言うと同時に、僕は光の世界へと包まれて行く。


 扉開いて、式場への通路が開かれただけだけどね、ここ暗かったから、余計に外は眩しく見えたんだ。


 高い天井付近に取り付けられた大きく開いた採光用の窓から降ってくる光はまるで天界から差し込む光の軌跡のように、僕がこれから歩く赤い絨毯を照らしている。


 すごいなあ、あの暗い通路も、短い時間の孤独も、みんなこの為の、特別な場所へ至る為の演出なんだな、って思った。


 僕は今、極めて特別なところにいる。


 そう思わせてくれる効果なのかもしれない。


 歓声が沸き立つ。


 拍手がまるで音の波の様に響き渡る。


 どこかで聞いたことのあるパイプオルガンの調べ。


 僕は、一歩一歩、式場の絨毯を歩いて、その祭壇の前に立った。


 一緒に歩いてくれるスタッフさんの歩調に合わせて、ゆっくり、ゆっくり歩いてるけど、その歩く時に、「まっすく前だけを見てください」って言われるものだから、ああ、ちょっと僕キョロキョロしちゃったね、って反省しつつ、余計なものを見ない様にして、だから思ったほど緊張しなくて済んだ感じかな、あ、クソ野郎さんとアモンさんが見えた。


 ちらっと視界の端に入った。母さんは明日葉さん達と一緒にいる。なんだ、僕が考えてより仲良しに見えるよ。ちょっと安心した。


 そして、いよいよ祭壇の前へ。


 多分、これが僕、花婿の定位置だって思う。


 そこに案内されて、案内係りの人、スッと離れて行く。


 前にはニコニコした神父様がいて僕を見ている。


 次の瞬間、さっき僕が聞いてた喝采よりももっと大きな喝采。


 まるで、天変地異でも怒った様に、この会場を揺らす。


 ああ、そっか、春夏さんが入場してきたんだな。そう思ってそっち見ようとするんだけど、なんだろ、首動がない。


 というかその会場の盛り上がりとドヨメキと、時折混ざるため息みいたものに、僕の体は、麻痺攻撃、いやこれ石化だな。そんな状態異常的な何かに襲われてしまう。


 だから、馬鹿みたいにじっと前を見ていた。


 やがて、僕の横にはスッと寄り添う春夏さんの存在が、その圧倒的な何かが僕の側面までも侵食するが如くに迫って来る。


 すごい。これが圧倒的存在と言われる、花嫁効果って奴か。


 つまり、女の子が人生で一番輝く瞬間とも言われてて、多分、光属性で聖属性で絶対正義で圧倒的存在であらゆる状態をも無効化するって言われているアレなんだ。


 昨日、母さんが、妹にそんな説明をしていたのをチラッと聞いてたけど、かいつまんで得た知識だけど、実態対面してしまうと、この大いなる存在に対して僕、贖う術が無いと言う事だけはわかる。


 で、こう言ってはなんだけど、なんだろうなあ、こっちにもそれなりの付帯効果を持ってるみたいで、さっきから顔の筋肉が崩壊の一途を辿っているんだよ。


 これだけの人を前にしてさ、だらしなく表情が崩れて行くののがわかるんだ。


 いや、だって、これさ、この春夏さんがさ、女子の究極体というか、完全体としての存在がさ、こんな事考えてはいけないんだろうけど、こう言ってはなんだけど、『僕の』なんだよ。


 この春夏さんの究極完成体である春夏さんは僕のモノなんだよ。


 ああ、言っちゃった。


 と言うか考えちゃった。


 でも、だめ、止まらない。


 この思考というか、なんだこの達成感???。


 落ち着こうよ僕、頼むから浮き足立ってないで、いや浮足立つなんて甘いもんじゃないねこの上昇感覚。電磁カタパルト、いや、ロケットの発射に近いかもしれない、第3宇宙速度かもしれない。


 いやあ、これ、ゴッゴだよ、体験参加型のイベント結婚式だよ。


 なのに、僕の中でどんんどん生産され、僕の体のあらゆるところからもれなく漏れ出してしまっているのは、これ、幸福感って奴だ。なんか、もう、止まらない。どんどんどんどん溢れでて来る。


 落ち着け、落ち着けえ……。


 僕自身に言い聞かすけど、僕自身を律するけど、もう、その体が言うことを聞いてくれない。



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