第32話【譲られた権利、少女の欲望は開き始める】
葉山って、意外なんだけど、こう言う勝負事に対しての卑しさってのがあるんだよなあ、最近気がついたけど、葉山自身が言うほどこの手の事にかけては優しさもカケラも無いし。本当に委員長キャラどこ行った?くらいの態度だよ。
「譲れないの! わかるでしょ? ここを、『お先にどうぞ』にはなれないの』
って涙目で訴えてくる。
「だって、忍者に、旧家に、お嬢様に、無口系で、軍団長で、小柄可憐系美少女で、家臣(有能)的で、一体どれだけキャラ立ってんのよって話よ!」
とか言われるけど、いや、委員長で、隠れて実は運命に翻弄される系で、その後聖王様になってる君も大概だからね。
「呼んでもらっても構わん、だが、負けるつもりも譲るつもりもない」
って言い切る蒼さんだよ。完全に勝負する気満々だよ。
そして、蒼さん、
「お屋形様、ここは譲れません」
とか言ってるし、今までにないくらいの気合の入り様だよ。
葉山といい、蒼さんといい、やっぱり女の子なんだねえ、遊びとは言え、物凄い気合の入り様だよ。やっぱりウエディングドレスとか着たいのかな。と感心した。
「なんか、俺が原因つくっちまったみたいで悪いな」
って土岐が言うんだけど、
「いや、仕方ないよ、やっぱ女の子だもんね、みんな、で、これって一人でも参加できるの?」
いや、だって、土岐とリリスさんはそう言う関係だからさ、でも彼女たちが参加しようとする場合は、相手がいないじゃん、って思ってさ、
すると、土岐は、
「お前、脳みそ膿んでないか?」
とかひどいことを言い出す。
そんな僕を見て、
「一心、僕もやっぱり、君から見てあんな感じだったのか?」
って間違いなく僕を見て、どこか痛たまれない顔して尋ねてる。
まるで過去の汚点でも見るかの様な悔やんでいる、そんな表情だった。
微笑むだけで、あえて何も語らない一心さんだよ。
でも葉山は違う。
「真壁が行くんだよ、何いってるの?」
って直接言ってくれるから、
「え? 僕、結婚しないよ?」
って直接返せるから助かるよ。
「この際、真壁の意思は関係ないんだよ? 賞品や賞金に意思なんてないでしょ?」
って言われて、え? ああ、うん? ってなる。
そうか、僕の意思は関係ないんだ。
そう言った葉山の意識は既に蒼さんに向かっていて、
「じゃあ、勝ったら方が、今回の権利を得るって事でいいわね?」
って念を押してるけど、勝ちと負けのルール見たいなものに細かくツッコミを入れて確認してる蒼さんだよ、かなり食い下がってる。
そんな、土岐とリリスさんの心配なんて吹っ飛んでしまってるこの新しく生まれた騒動の中に、
「………………じゃんけんにしよ?」
っと新たに提案をしてくる人がいた。
おずおずと、春夏さんが前にでる。
「………私も秋くんと結婚したかったみたいなの、だから、参加いい?」
と僕の方を見て、なんだかとても恥ずかしそうに言うんだよ。
これだよねえ、普通の反応というか普通の女の子は。
お陰で僕の方もなんかちょっと照れてしまう、そうだね、僕、ずっと昔から春夏姉と結婚するって言ってたもんな。
ちょっと思い出して、懐かしくて、そして切なくなった。
「あ、ごめん、あまりの好機に春夏の事忘れてたわ」
って謝ってんだか照れてんだかって顔して葉山が言うと、
「いいよ、でも、私も譲れないみたいなの」
「そっか、わかった」
もう一人、蒼さんも納得してて、
「じゃあ、公平にじゃんけんですね、皆さんいいですか、一回勝負ですよ、恨みっこ無しですよ」
って、キリカさんが言うんだよ。
いつの間に来たんだろ、もうずっとここにいました、くらいのノリで仕切ってるよ。
まあ、ここダンジョンの中だし、深階層だし、 キリカさんがいるのは別にいいんだけどなあ。
「呼んでもないのいシャシャリ出てくるのが、この子のいいところです」
うお! びっくりした! そして久しぶりの桃井くん。
「秋様が御結婚をすると聞いていてもたっても要られす来ました」
どこで? どか、どうやって? とか、色々聞きたいこともあるんだけど、そっちはいいや。桃井くんって、そういう子だものね。今更だよね。
とか言ってる。あいかわらず、世界蛇としての組織の立て直しで忙しい筈なんじゃないだろうか?
「秋様のお祝い事とあらば、サーヤも快く送り出してくれましたよ」
とかニコニコしながら言ってる。まあ、何にしても元気そうだ。
「で、いつですかね? 秋さんの慶事とあっては俺もいかないわけにいかないんで」
と今度はいつの間にかの角田さんだよ。いや、もうびっくりはしてないけど、この人達って、ダンジョンにおいて存在というか出現に本当に節操が無いきがする。
「そうですかあ、ようやくこれで春夏様と御婚礼ですか」
まあ、この子僕を複数婚に引きずり込んでくれたんだけどね。