第31話【諍う少女達、引かない退かない譲らない】
それにしたって、たかが結婚のごっこでここまで過剰に反応してくるって言うのはちょっと、どこの偉い人達かわからないけどやりすぎだよね。
「サクッと行って〆て来ようかな?」
って思わずボソッと呟くと、
「調査は開始しています、今しばらくお待ちください」
って蒼さんに言われる。
じゃあ、待つか。
「だから今回は見送るよ、悪いな、真壁、お前にも迷惑かけたな」
って土岐が言うんだけど、そんな事で曲げる事ないよ。そもそも遊びな感じなんだから、ここは強行しようよ、その上で邪魔するなら叩き潰せばいいんだよ。
って思うも、
「それでは蓮也の安全が計れない、危ないのはダメだ」
ってリリスさんに言われてしまう。
なんだろう、リリスさんっていつからこんな表情するようになったのかな? そう言って土岐を見る目がなんかとても優しくて、僕の知らないリリスさんだった。
「リリスがちょっとでも不安になることはしたくないんだよ、分かれよ真壁」
って土岐に言われて、まあ、それはちょっとはわかるかな。
「と言うわけで、俺たちは今回はこれ諦めるわ」
って、どうしてか、そのチケットを僕に差し出して来る土岐なんだけど、
「なんか残念だね」
って言ったら、
「いずれは本当にするからな、それは譲らん」
って力強く言って、土岐とリリスさんはまるでいくつもの言葉で語るが如く見つめあっていた。そして、
「だから、今回はお前らに譲るよ」
って謎のセリフを言った。
今回はやめておくって意味なんだろうけど、譲るってなんだろう?
土岐とリリスさんの真意とかがわからずに、
「どう言う事?」
って聞いてしまうと、
「だからさ、世間を騒がせてまで、この結婚式体験イベントに参加するつもりはねーよ、って事だよ、でもチケットがさ、折角の権利がもったいないじゃん、なら、騒がれない奴に譲るって事だよ」
ああ、なるほどね、で、どうして僕?
って思って思わず、近々にその予定が組んである辰野さんと一心さんを見るのだけれども、そんな僕の意思に気がついたみたいに、
「いや、俺達は既に予定のある身だよ、それに一心の家の都合上、遊びとは言え、二人だけで勝手にこう言う催し物に出るのは気が引けるんだ」
「ええ、ですからこの度は、とても魅力的ですが、楽しみは先に取っておく事にします」
仲がいいのはいい事だけど、なんかいつの間にか僕の後ろには辰野さんと一心さんが互いに手を取り合って見つめあってるけど。ここはヒューヒューって言うところかな?
ああ、そうだね、二人のその手の話って、もう一心さんの実家の方で話は進められてるって言ってたもんね。
そっか、じゃあ………………。
「いいじゃん、真壁、譲ってもらおうよ」
って、あれ? 葉山の鼻息が荒い。
「そ、そうです、お屋形様、ここはお二人の為に、何より平和の為に、我らで使うべきです」
って蒼さんまでも?
そういや、蒼さんの実家って神前式って言ったなあ、このチケットに記載されてるのってウエディングドレスだから、こう言うの着たいんだろうね。いつになく目が輝いてる蒼さんだよ。
すると、葉山が、
「だよね、私が一緒に行ってあげるから、ね、行こうよ真壁」
「いや、ここは私が行くべきだ、現在、序列2位の私がお屋形様と式をあげるべきだと思う、これは『多紫』での盟約でもある」
蒼さん、葉山に言い切ってる。里に帰ってから蒼さんなんか積極的だよね、こういことに、前みたいに後ろにいないもの。
「何? 私、あの時の戦いの結果なんて認めてないからね、あれだってエキビジョンマッチみたいなものでしょ? それを公式にだなんて」
いやあ、あの時葉山結構マジだったよ。それに、「事実上の頂上決戦」とか言っってたし、かっこ悪いくらい見事に負けてたけど、多分、ここで戦っても結果は変わらないと思うけどなあ。
それでも、
「なら、今ここでやるか?」
と蒼さん、すっかり葉山の安い挑発に乗ってる。
「いいわよ、じゃあ、ちょっと待って、今、妹ちゃん呼ぶから」
思わず、その葉山の言葉に、
「え?」
って言ってしまう僕なんだけど、
「だって、私と妹ちゃん、じゃなかったブリド様って言ったら一心同体も同じじゃない」
とか言い出す。
いや、それじゃあ、二対一に、と言うか一人一柱対一になってしまうからね。
葉山のヤツ、どんな手使っても絶対に勝ちは譲らないつもりだ。