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第93話【約束破ってダンジョンへ】

 今、僕らは、ここギルドの本部のあるスライムの森の一角にいた。


 まあ、つまりは委員長、だから葉山さんの言いつけを破ってしまった僕がいる。


 シリカさんを小脇に抱えた角田さんが、ゲートの前で、入場制限をかけてるギルドの人たちに、シリカさんを見せると、そのままフリーパスな感じで、僕らも一緒に入る事ができた。


 と、その前に、角田さんが、


 「秋さん、委員長さんとの約束破っていいですか?」


 とか聞いてくるんだよね。ニヤニヤしながら聞いてくるんだ。


 さっきの僕と葉山さんの事を言っているんだと思う。葉山さんに、『ダンジョン入っちゃダメ』みたいな事を言われてたからさ。


 基本的にはさ、僕は約束は守る方なんだけど、今日は仕方ないかあ、だってシリカさんを一人になんてしておけないし。


 角田さんは、俺一人でも大丈夫ですよ、って言ってるけど、そこ辺は納得できるけど、それでも、シリカさんから目を離したくないっていう、謎の欲求もあるんだよね。


 シリカさんはとても可憐で可愛いからとか、危なっかしくて、存在そのものが不安だとか、そう言う事じゃなくて、なんか目を離してしまうのが、人としてありえない気がして来ている。庇護欲とか、そんな物ではなくて、見ていて本当に危うい。


 シリカさんが、そこに立ってるだけで、「大丈夫?」って声をかけたくなってしまうモノ。


 春夏さんも、もはや『放って置けないモード』に突入して、シリカさんの介護みたいな感じでハラハラしてるし。角田さんも、言っている事は全部、皮肉なんかではなく、彼なりの世話の焼き方なんだろうと思う。


 ひとまず、僕は彼女の為にできる事は全部やろうと言う結論に至った。


 だからごめん、葉山さん、約束破るよ、で、今度会った時は全力で謝るよ。もちろんそれはばれてしまった場合に限ってのことで、バレてないならしらばっくれるよ。


 もちろん、葉山さんに怒られるのもやぶさかでもないんだ。


 ほら、僕、どういうわけか、学校では女子からハブられてるからさ、お話してくれるのって委員長である葉山さんくらいだし。


 それに、僕を心配して言ってくれてることだから、その約束を破ってダンジョンに入った僕を叱るって言うなら、きちんとそのお叱りを受けたいって言う謎の欲求もある。


 僕の意思は固まってるよ。


 「行きましょう、角田さん、シリカさんを連れて」


 と僕は言って、今、もうダンジョンに入ってるってわけだ。


 「わかりました、で、シリカ、どっから行く、俺たちはついて行けても浅階層だぞ、それ以上は無理だ、『イベント』クリヤーしていないからな」


 『イベント』っていうのは、僕ら浅階層のダンジョンウォーカーが中層階に行こうと思ったら、浅階層の出口で待ち構えている『浅階のジョージ』を倒して行かなければならないんだよ。所謂、浅階層から中層階への門の前に立つ、門番的な存在。これが結構な強敵らしくて、このゲードキーパーを倒して初めて中層階に行けるってわけなんだよ。


 こういったある条件を満たす、みたいな事をダンジョンウォーカー同士では『イベント』って呼ばれているんだよ、それっぽいよね。


 この北海道ダンジョンに入り始めて、まだまだ先のことだって思っていた『浅階のジョージ』の名前が出てくるなんて、少し早い気もするけど、確実に深度を深めているって実感があるよ。ちょっとゾクってしたよ。


 「大丈夫です、心肺停止には至りません、中層階の入り口付近にギルドの仲間たちがいます、そこまででいいのです」


 とシリカさん、『心配はいらない』って言いたいらしい。角田さんが突っ込まないのは、多分、キリがないし、改善されないからだな、って思った。普通に会話しているもの。  


 「じゃあ、すぐに出発する、いいですね、秋さん」


 「準備します」


 そう言って、シリカさん、急に僕をチョイチョイって呼んで、近くで心配そうに見ている春夏さんの手を握り、そしてやって来た僕の手を握り、「わずかでも、動くな」って言って、黙祷しているように目を瞑る。


 「読み込み完了です」


 と目を開いて、僕らの顔を見つめて言うと、パッと手を離して、肩から下げている大きなバックから、手を突っ込んで何かを取り出す。


 そして、その場に座り込んで、取り出した物を並べ始める。


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