第25話【変化変質するダンジョン】
そんな春夏さん、あまり見た事のない表情、なんか恥ずかしがってる感じ? 自分て知ってた間違いを改めて人に指摘されたって感じかな?
「初めて知った」
ほんと、最初からこんなものかって思ってた。
でも、
「じゃあ、さ、真壁は、今までにモンスター側の人とダンジョンウォーカー側の人が結婚したなんて聞いたことある?」
って改めて葉山に尋ねられて、
「無いねえ」
って言ってしまった。
「特に緩くなったのはある特定ダンジョンウォーカーがこの北海道ダンジョンで活躍するよになってからだ、わかるだろ?」
いやいやわからないって、白馬さん何を言ってるの?
「あのギルドですら、モンスターは表向き、全員敵と言う立ち位置だったんだからね」
って今度は葉山が言った。つまりは運営側であるギルドですら、と言う意味なのだろう、そうだね、それはラミアさんの時の事で知ってる。
ん? ちょっと待って………………………。
「もしかして、あのラミアさんの事件以降ってこと?」
って、思わず僕は周りを見渡すけど、その時の当事者って今ここには、特に僕側としては僕と春夏さんしかいない。
だから春夏さんに同意を、と言うかその辺の事実を知りたくて、
「そうなの?」
って思わず尋ねてしまうと、春夏さんちょっと困った顔して、
「うん、そう」
と言った。
春夏さんにその答えというか、返事をもらった以上、僕としては、「へー、そうなんだ」って思うしかなくなるから、
「そうみたいだね」
って変な肯定になる。
「なんだ、じゃあ真壁がダンジョンに入り出してから、この変質は訪れたってことになるんだ?」
って葉山が早速答えを見つけたみたいで、
「そうなの? 春夏?」
って同じ事を聞いてた。
「うん」
「こいつの場合、敵か味方か以外はさして重要では無いからな、ダンジョンウォーカーだろうがモンスターだろうがまるで節操が無い」
とか薫子さんに言われる。
「でも、その意識はみんな同じはずですよ、特にここにいる人ならそうですよね?」
今度は雪華さんが言った。
「でも、それっておかしく無い? いつから僕らはそんな意識を持つようになったのさ?」
呆れるように、誰ともなく尋ねる八瀬さんに、
「私は、やっぱりあのラミアの事件からですね」
考え込むように言う雪華さんだよ。
「私も同じかもしれん」
差し当たって深くも考えてなさそうな薫子さんだけど、その答えには自信はあるみたい。
そして、もう一人、僕よりもダンジョン歴の長い蒼さんを見ると、
「私はお屋形様の意思と同心なので………」
とか言ってる。
「最近ダンジョンに入って来たあなたたちはどうなの?」
これは葉山が自衛隊の人達に尋ねてた。
「どうだ?」
と、白馬さんは他の隊員にもその疑問を振ってくれる。
「最初っからそんなでしたが?」
と首藤さんはそんな言い方で、
「特に意識もしませんでしたが、友好的なモンスターの存在は最初から意識していた気がしますね」
と、これはもう一人の自衛隊員が言う。この人とは話した事ないや、って思ってると、
「意見を言うときは、まず、氏名を名乗れ、ここでは階級はいらん」
白馬さんが言うと、
「櫻井 俊樹だ」
と付け加えて言ってくれた。
三爪さんについては、
「蒼様から情報は入っていましたので、仲の良いモンスターの情報は、その辺が基礎になってますから、私の場合は参考にはならないでしょう」
と、冷静に自分を分析して言ってた。
なるほど、彼らにとっては最初から、そんな感じなんだねえ………。
でもさ、悪い事じゃ無いよね? ダンジョンウォーカーだって、いやダンジョンウォーカーに限らず、人間にだって、いい人悪い人はいるんだから、モンスターの人だってそうだよね。モンスターが全部悪いっていう決めつけは良くない。と、思う。
「つまり、ダンジョンウォーカーとしての意識の改革の切っ掛けは、やはりあの時のラミアの事件から始まっていると言うことか?」
って改まって言う薫子さんの言葉に、
「こちらの意識というより、むしろモンスターの対応というか、ダンジョンウォーカーに対してのある種の接し方がよりアクティブになって来ているって事だ」
ある種って、まあ、簡単にいうと仲良くしようって感じなんだろうね。
僕だって、あの時の必死のラミアさんを知って、ああ、モンスターでもこんな風に意識を通わせる事の出来る人っているんだあ、って衝撃を受けたよ。もちろん、それは、ショックだったとうより、僕として全く知らない事だったから、受けた衝撃は全部プラスの方へ動いて、この場所がさ、より立体的に、広くて大きくて、ダンジョンがもっと楽しいところだって、そう思ったんだ。ダンジョンに入ってよかったよ、って思えた。




