第22話【北海道ダンジョンを敵と見る人たち】
でも、以前、HDCUの瑠璃さんに聞いたけど、その量はさして問題になる程でもんなく、小規模な鉱脈が発見された程度で、世界経済はもちろんこの国の経済も影響はけるもののプラスの面の方が強いから大丈夫って言ってたし、その辺の調整はできてるはずなんだけど、だからこれが原因なんて考えられない。
「違うな」
と、白馬さんも否定する。
「じゃあ何? 北海道ダンジョンって言っても、今は対応できてるから、ただの観光地じゃない、ダンジョンウォーカーの活躍のおかげで、ダンジョンは少なくとも無害化できてるわ」
と言ったら、
「そのダンジョンウォーカーが問題なんです」
三爪さんは言った。
「人的資源て言うことかな? もちろん、高い戦闘力目的の」
これは八瀬さん。
「なるほど、お前が鉾咲八瀬か、感がいいな」
「世辞はいいから話を続けなよ」
となんだろう、ここまで真剣に話を聞いている八瀬さんの顔って初めて見た気がする。
白馬さんは続ける。
「今、深階層クラス、いや中階層でもいい、そのクラスのダンジョンウォーカーの軍事的価値はどのくらいあるか知っているか?」
………考えた事もない。
だから首を横に振った。
「概ね、軽装備のダンジョンウォーカーで、訓練された兵士の12倍〜20倍と言われている」
「そんな、大げさな」
って思わずつぶやいてしまうけど、確かに、僕らは普通の、ダンジョンに入らない人に比べて強いってのは知ってる。でも具体的にと言われるとそんな事考えた事もなかったから、こうしてはっきりとした数字を出されると、納得するとかしないとかの前に驚いてしまう。ってかよく調べたよなあ、とも思う。
「特に最近では、ある外国人部隊を少数のダンジョンウォーカーが壊滅させた例もあります、ご存知でしょう?」
と三爪さんが言った。
それって、以前、塩谷さんの言ってた話の事かな?
「ああ、あれはお屋形様の脅威になりえた、しかも、一般人すら簡単に巻き込む危険性もあったので、先んじて狩らしてもらった、問題か?」
どうやらそうみたいだ。
「それとお前の今回の行動にどのような意味があるのだ?」
蒼さん今まで聞いたこともない低い声で、三爪さんに向けている感情に張り付いている意識は間違いなく敵意だ。
思わず二人の間に入る僕。
僕のそんな動きを見て、蒼さん少し冷静になってくれた。よかった。柔らかくなってる。
「相手は重火器で武装した、自分達の船の中で戦う一個師団にも近い戦力をですよ、年端のいかない数十人の、軽武装なダンジョンウォーカーに瞬き間に鎮圧されたのですよ」
三爪さんの言葉なんだけど、でも、彼らはダンジョンウォーカーの中でも飛び切りの存在で、それは三爪さんもわかってるはずなんだけどなあ、とは思う。
「そんな、ダンジョンウォーカーを大量に保有し生産し続ける、この北海道は今、特に周辺国、中でも近隣諸国において大きな脅威になりえているそうだ」
と白馬さんは言うんだけど、でも、あの外の自衛隊の封鎖と警備と、幹部のおじさんが雪華さんに発砲の意思は間違いなかった件についてが繋がらない。
でも、だんだん雰囲気は伝わってくる。つまり僕らダンジョンウォーカーもまた、他の人、ダンジョンに関わらない人、知る事も出来ない外国の人から見たらモンスターと変わらないって事だね。
誤解もいいところだよね。
でも誤解ってね、無知で稚拙で幼稚な想像と思い込みから始まるんだよなあ。そして、このままにしておくと、どこか弱いところに必ずしわ寄せが来るんだ。それはわかる。わかるけど、脅威って言われてもなあ、どうしろって言うんだろう?
一体、僕の知らないところで何が起こっているんだ?
僕、土岐とリリスさんを探しにきてるだけなんだけどなあ。
ひとまず、白馬さんの話は最後まで聞くことにするよ。
だからもうちょっと待てってね土岐にリリスさん。