第16話【静かな変異、音も立たない脅威】
今は、どんなことまあ、それはいいや。
で、この子達、今はダンジョンの外でそう言った調査行動を中心に生活しているような事を言われた。
で、今はダンジョンに戻ってるってことは、彼等が外にいるのは困った状況なのだろう。
つまり、実際は、異造子の皆さんにとってもダンジョンの中よりも外の方がヤバイことになってるってことなんだな。回りくどいけどそう言うことらしい。
少なくとも外の自衛官の皆さんはこの中には入れないのだから、多分、ここにいれば大丈夫と言うことで、真希さん達はどこに行ったのかな?
などと、ギルド本部に入ってから考え続ける僕だけど、
「ちょっと、真壁気がついた?」
一瞬の僕の表情の変化を見逃さず葉山はそんな事を言い出す。
うん、まあ、だいぶ前からだけど………。
今、このギルド本部は包囲されてるって、その事だよね。
って言おうとしたら、そんな気配には詳しい蒼さんがさ、おし黙るように考え込んでるから、
「どうかしたの?」
って尋ねたら、
「はい、お屋形様、どうやら私の知らぬところで事態は思わぬ方向へと向かっているようです」
と言っておし黙る。蒼さんの中でも未だ明確な答えは出ていない見たい。
と言うか、異常な事態なのはわかるけど、それって感覚的な事で、それは間違いなくて、その事を先に僕に告げているってことは、蒼さん自身、そして僕自身にも、あまりいい環境では無いと言うことだ。
ついこの前、自分の里に鬼が出たって時は特に何も不安とか抱いていなかったから、それが今は心配の塊というか疑心暗鬼に凝り固まってしまっている。
そんな雰囲気の中、
「そうですね、確かにおかしいです」
と今度は雪華さん。
「先ほどのことですが、重歩兵装備は未だ開発段階で、実は母も少し絡んでまして、通常防衛省に収める装備は各メーカー単独と言うのはありえ無いんです、軍産共同体の形をとって、少なくとも一社が単独であのような装備なんて造ること自体がありえなくて、でも、彼等は間違いなく装備して実用してましたし、この国の国旗が入っていたので、間違いなく純装備品でした、ですから私もちょっと混乱しています、大柴が関連してない装備なんて………」
と呟くように言った。
何が言いたいのかと言うと、自衛隊の装備の開発の手順というかいうならばセオリーを踏んでない、本来なら単独一社で開発してはいけない装備が、配備されていない物を外にいたおじさん達は使っていたと言うことだ。
まあ、でも、そのくらいなら大人の事情とか、会社の事情とか、国の事情もあったんじゃ無いかな? よくわかんないけど。
「つまり、一社でなんとかしちゃったって事なのかな? 予算とかの関係で、何社か抜くのってよくある話だよ」
とそう言う事情に詳しそうな八瀬さんが言うんだけど雪華さんは横に首を振って、
「ありえ無いんです、あの装甲服には、母の研究している、秋先輩のお持ちのマテリアルブレードの一部の技術と材料が使われているんです、そして、それらは現段階では厳重に管理されていて社外不出で、外装に大柴が最終工程を受けて、ロールアウトする予定だったはずです」
って言う。つまり雪華さんの会社を通さないと完成しないって事らしい。
僕にそんな事を告げる雪華さんは同時に電話をかけ続けていた。
心配そうに、とても深刻な顔してるけど、相手は出ないみたい。
「おかしいです、母が出ません」
忙しいんじゃ無いかな? って思おうとすると、この前、ラボが普通に襲撃された事を思い出して心配になる僕だよ。
それにしてもギルドの人、どこに言ったんだろう?
いつものように複雑な事情とかに巻き込まれてる感じはするけど、まあ、敵がああ言う人たちって言うなら早い所決めてほしい。
防衛庁とか、つまりは国に楯突くって言うのは別に問題はないんだ、僕的には。
少なくとも、世界がどうなろうと、この国が何を考えて、僕らダンジョンウォーカーを敵認定してこようと、北海道とこのダンジョンが平和ならいいや、って思う。
もちろん、積極的に喧嘩を売るつもりもないけど、相手が売ってくるなら仕方なよね。
そして、いつも通り、僕は僕の側にいる人を見る。
いつも通り、そしてそれが当たり前みたいに、僕の視線に絶対に気がつく春夏さんは微笑んでくれる。
そうさ、春夏さんが、ダンジョンが幸せならそれでいいんだ。
そう思えて、落ち着いていられるのは、やっぱり僕は今、北海道ダンジョンにいるから、その胎内の中だから、安堵感とかあるんだな。
ひとまず、どれがどうして何が敵でもいいから、解決しようと思う僕だよ。
それにしても、ギルドのみんなもそうだけど、土岐もリリスさんもどこ言ったんだろう?
って思ってたら、そんな気配が僕らに向かって、このギルド本部にゆっくり近づいてきたんだ。入り口付近の僕ははすぐに気がついた。
いや、違う、土岐じゃない。
あいつはこんな精錬に歩いたりしないから、違う。
ギルドを出て出会う人物、彼とダンジョンで、そしてこんなにも臨戦態勢になっている彼らに会うのは二度目、そしてもう一人、いやこの場合一柱というべきか、その存在に会うのは初めてだった。
なるほどね、つまりはそういう事だったんだ。