第12話【自衛隊に入らないか?】
残った重歩兵さんに、いつの間にか、僕と同じ稜線に来ていた葉山が、
「ちょっと、正面から来てくれる?」
って挑発ではないんだけど、そんな事を言って、正面からやりあって倒してた。
「金属工業的には大柴の方が上かなあ、結構柔らかいよ、この人達」
って言ってから、
「強さ的に言うと、中階層の真ん中付近のリザードマンくらい、銃器とかもあるみたいだけど、ブレス持ってるドラゴンニュートの方がやっかいね、尻尾あるし、銃器の場合、ここまで近づくと意味ないね、剣の方が早いし面積もあるから」
「ブレスを吐く程度のリザードマン程度です、お屋形様」
と蒼さんも器用に回り込んでは倒してるよ、黒い機械化兵の人達を。
そうなんだよね、これだけの銃器を装備する機械化歩兵のみなさんだけど、敵と考えてもそれほどのプレッシャーでもないんだよなあ。
変な話、アモンさんとか、一人の方がよっぽどその場を凍りつかせるよ。
だからかもだけど、僕らは全然普通でいられたんだ。
そしたら、おじさん、
「くそ!」
って下品で唾を吐き捨てるみたいにつぶやきを漏らしてから、
「やはりダンジョンウォーカーにはダンジョンウォーカーか」
とか言い出し、
「お前ら、約束通り働いてもらうぞ」
って出てきたのは、あの深階層で、一応は仲良くなれたかな、って思ってた黒の集刃の人達だった。あ、鮫島さんもいる。
「え? なに、敵になっちゃうの?」
って聞いてみると、自衛隊の味方であろうダンジョンウォーカーの中心にいた鮫島さんは、
「マジっすか? 秋の頭が敵ってマジっすか?」
って真っ青になって言ってた。
まあ僕としては、鮫島さんが敵に回っても倒せばいいだけだから、どんな人かわかってる分やりやすいっていうか、鮫島さんなら簡単に倒せるなあ、くらいしか思ってない。
もちろん鮫島さんが今日は敵っていうなら倒すのは躊躇なんてない。早くすんで助かるよ。
だから、
「うん、いいよ、おいで」
って言ったら、みんな一斉に後ろに下がり出した。
「何をしている、お前ら、約束を違える気か!」
って自衛隊のおじさんがいうから、
「何か約束したの、鮫島さん?」
って聞いたら、
「いやあ、なんと言いますか………」
って歯切れの悪い言葉から、
「今回のこの閉鎖に力を貸したら就職斡旋してくれるっていうんで、そこに乗っかったって言うか………」
ああ、そうか、鮫島さんももうすぐダンジョンウォーカー卒業して、一般人だもんね、大学行かないなら就職だよね、ダンジョンで稼いだお金でしばらく遊んでる人も多い昨今顔に似合わず真面目なんだな、って感心しちゃった。
本当に留学とか行く人とか、よくわかんないけど「自分探し?」とか言って海外出てしまう人も結構いるんだよ。
でも北海道なら就職はそんなに難しくもないんだけどなあ、後、余談だけど、みんな結婚も早くて、今回の土岐やリリスさんとかアモンさんやクソ野郎さんとまでは行かないけど、18歳で早々に結婚して子供作ってしまう元ダンジョンウォーカー夫婦は少なくない。
おかげで、北海道って、唯一新生児が年々増えてる場所でもあるからね。若いお母さんやお父さんは沢山いるよ。
多子低齢化の土地な訳なんだから就職先も結構多いんだけど、その上で、どこに就職を斡旋してもらえるって約束してるんだろう? ってちょっと気になった。
「鮫島さん、どこに就職するの?」
って聞いたら、
「はい、一応、公務員です、葛島さんが、確実に就職できるように手配してくれるって言うから」
って言い出す。
そっか、公務員かあ、硬いとこだね、安泰だよね。
って、そんな条件出されたら、無理もないかあ、そしてあっさり倒してしまうのもためらわれる。だって、鮫島さんの一生とか関わってくるからだよ。
と同時にいい歳して中学生のお嬢さんである雪華さんに対して、傍若無人というか、割と本気で言い合うこのおじさん、葛島さんて言うのか、って知ることになる。
すると、ここを仕切ってる、どうやら自衛隊でも偉い人、葛島さん、なんか勝ち誇ったみたいに、。
「そうだ、この私がここに協力してくれたダンジョンウォーカーについて、就職を世話してやる」
って一旦、溜めて叫んだ。
「全員、自衛官にしてやる!」
って言った瞬間、そう告知された刹那の鮫島さんのガッカリ顔が忘れられない。
と言うか、そこにいたこの暴挙に付き合ってたダンジョンウォーカーが皆、ガッカリしているのが伝わってきたって言うか見てわかった。
「いや、ちょっと待って下さいよ、就職斡旋って、自衛隊なんですか?」
「そうだ、一生安泰だぞ」
とか、葛島さん言い出す。
「いや、俺、自衛隊ならいいっすわ」
とか言って、鮫島さん、そして他のみんなもこっち来る。