第91話【深階層からの招かざる来遊者】
そりゃあ、ギルドが慌てて、ダンジョンも騒がしくもなるし、道路も封鎖されて、交通規制もかかるよね。
エルダー級かあ……。
だから、この騒ぎも当然って思った。
そして、この手早いギルドの処置に関心もした。
普通に考えると、『エルダー級』のモンスターって、深層階に、しかも相当深くにしかいないって事なんだけど、通常なら北海道ダンジョンのモンスターって、階層を動く事はしない筈なんだ。
中には、エルダー級以上で、深階層の深部にいるような固定されてるはずの『エイシェント級』って言われる、それこそ、このダンジョンの中でもたった数体しかいないって言われてるモンスターの中には、階層を問わず、好き勝手に動く者もいるらしいけど、それは、稀有な例で、もちろんダンジョンウォーカーに対しても敵対的でもないので、ギルドとしては、良い影響の方が大きいので放置してるって話らしいけど、今回はその例ではないらしい。
これだけの騒ぎになってるって事は、ギルドとしても想定外の事態であって、問題になる事案として対処しているって事になる。
多分、中層階にそれが出た事のエルダー級モンスターそのものの危険より、多分、ギルドは、きっと問題のモンスターの討伐もだけど、本来あるはずのないモンスターが階層を変えて、浅階層まで到達しようとしている原因を確認しに行ったのかもしれない。
過去に起こった最悪の事件、ダンジョンが漏れ出すって奴。
また再び札幌の街にモンスターが溢れかえる現象を止めると事、未然に防ぐ事はギルドとの設立と運営の理由の大きな1つ。
もしかしたら、三度起こるかもしない『ブローアウト』現象の早期発見と予防にある、って聞いてる。
ダンジョンの浅階層と中階層の階層を2つ空にするなんて処置、今までなかった。
ダンジョン内で相当な事件が起こっているって事の紛れもない事実だ。。
今、まさにこの札幌ダンジョンは、窮地に差し掛かっているのかもしれない。
また再び、札幌の街を、いや、北海道全体を巻き込むような、大きな災害が生まれるのかもしれない。
なんか、僕の方まで緊張してきたよ。
いつの間にか、僕のジャージの背中を掴んでる春夏さん。
ギュっと握り締めてる。
「大丈夫だよ、春夏さん、ギルドも全力で当たってるみたいだし」
って、この時点で誰も目撃してる事実なんだけど、そんな事しか言えない僕に自分自身で、苛立ちを感じてしまう。
もっと安心してもらいたい、そんな心配そうな顔をさせたくないっていう欲求が吹き上げてくるんだ。
「大丈夫ですよ、こういった事が過去なかったわけではないんです、特に『エルダー級』以上くらいになると、人間以上の頭脳を持った者も珍しくはないんで、たまに好奇心に狩られて、浅い階に出てくる事は稀にあるんです」
僕の心中を悟ってくれたのか、角田さんが言ってくれた。
「大丈夫ですかね」
「浅階層なら問題なでしょう、さすがに『エルダー級』が浅階層に現れたって事は今までありませんからね、でもギルドなら、エルダーの一体や二体は相手にできますよ」
そっか、さすがギルドだね。
僕なら、出会い頭に『エルダー級』っていうのもゾッとするよ。
未だ僕らは、そんな凶悪なモンスターと対峙したことなんてないし、仮に対峙するにしてももっと遠い将来であって、確率からすると、高校球児さんたちが、みんな甲子園を目指すけど、全員が行けるわけじゃないでしょ。
ダンジョンの深層階で『エルダー級』と戦うなんて、その甲子園で決勝戦を戦うくらいの確率だから、ダンジョンに通える期間内に出会わない人の方がずっと多い。
でも、だからって安心ではないんだよね。ここはダンジョンで何が起こるかなんてわからないからさ。