第4話【鴉と梟】
で、そんな八瀬さんに、ハタっと気がついたみたいな、葉山が尋ねる。
「え? もしかして嫉妬とかですか?」
女子ってこう言う話好きだよね、目とか輝いてた、蒼さんもね。
「え? 僕が蓮也にかい? ないない」
そりゃあそうだよね、お互いに姉と弟みたいな物って言ってたから、それはないだろうね、もちろん、アモンさんクソ野郎さんみたいな例はあるけど、こっちの場合、どう見ても姉弟って言うよりも、むしろ男兄弟な感じもするから、この前結婚したあの二人に比べて、照れ隠す必要も無いって感じだね。
もちろん、そんな心境を感じ取ってか、
「なんだ、つまんない」
とか、言う葉山なんだけど、立体的に複雑にならなくてよかったじゃん、僕的には平面的で嬉しいよ、って思われる事に愚痴をこぼしてた。
本当に、人って自身には単純を望むけど、他人の問題には複雑さを求めるよね。
理由とか、原因とか、そんなのどうでもいいじゃん、できない、でそれだけで終わる話なんだよ、って思って、あ、しまった、それが八瀬さんの狙いだ、って気がついた時には、
「なんぜリリスさんを討伐しないといけないんですか?」
って、あー、葉山聞いちゃったよ。
その言葉を聞いて、一瞬、僕の方を見て、本当に一瞬、瞬く間に
笑顔になって、そのまま素に戻って、
「いや、これはさ、関係ないまして他人に話すわけには行かないんだ」
とか言い出す。
もうね、耳がダンボになってる葉山は、
「そんなことないですよ、リリスさんも、土岐さんも私たちには他人て訳じゃないですから」
とか葉山が言い出す。まあそうだよね、僕も土岐もリリスさんも、ついでに此花姉妹とここにいる蒼さんも、あの時あの場所で葉山に殺されかかったからね、確かに他人じゃすまない人間関係かもね。少なくとも今はどう思ってるか知らないけど、あの時点では加害者と被害者だね。
って思ったら、なんか葉山に睨まれたよ。
「じゃあ、何? 真壁はあの時私が死ねば良かったって思ってるの?」
だから、人の思考を勝手に読んで文句とか言わないでよ。
「そんな事言ってないじゃん」
って言うと、
「じゃあ、そんな事、思うのもやめて、わかった? これ絶対だからね」
ほんと、人のことは思い出して色々言ってくるくせに、自分のことはこれだもんなあ。
僕、これじゃあ、春夏さんとくらいしか結婚とか無理だなあ、絶対にこんな事気遣って生活とか無理だもん。
「あ、今の無し無し、いいよ思って、思うくらい、ちょっとくらい、ほんのちょっとくらいはいいよ」
って何やら焦ってる葉山だった。
「話が進まないね」
って八瀬さん、うん、僕もそう思うから、ちょっと黙れ葉山。
ちょっとシュンとしてる葉山。本当にちょっと反省しろ、そんな目しても無理だからな、なんか最近、葉山のテンションがおかしい気がするんだよね、蒼さんに負けた所為かな、この前、秋鴉を持った蒼さんと対戦して、普通に負けてたもんなあ、対蒼さん戦、以外に薫子さんはいい線行ってたと思うんだ、と言うか、薫子さんは完全防戦って感じで、あの白いデカイ剣で完全防御して、隙が出た瞬間を狙ってピンポイントで反撃してるって感じで、蒼さん曰く、すごいやり難いって言ってたから、なんか、いよいよ薫子さん、自分のスタイルみたいな物が身についてきた感じなんだよね。
僕の周りに守りに長けた剣士ってのは結構いて、麻生さんとか正に相手の出方を待つタイプの剣士で、多分だけど、実際は一回しか戦った事ないけど辰野さんとかもこのタイプ。
同じ騎士でも今話題に出てる土岐とか、この前の左方さん、西木田くんの彼女の、彼等は間違いなく聖剣士は名乗るけど、守りのタイプではないと思うから、いると言っても割と少ないくて、でも薫子さんはどのタイプとも違う気がするんだよね。
目とか良い剣士は多いけど、そこに加えて音も大切にしてるって感じだから、ちょっと僕とも方向性が違う気がする。
これは多分、母さんが無理せず、元々薫子さんの中にあった資質を上手に伸ばしたおかげだと思う。
そしてそれを外に顕現させ、形造ったのは、その出力機関である、自分の手に持った剣、つまり『白護輝鴟梟一ノ太刀』の賜物で、本当に、蒼さんの『秋鴉』同様、薫子さんの為だけに作られた剣ということだから、当たり前だよ。
それでも、初代の『秋鴉』と現・微水19代目の『白護輝鴟梟一ノ太刀』、お互い出来立てホヤホヤの新作にして、武器性能として全く同格っていうのが凄い。
新しきは伝統に敗れ、また伝統は新しきに敗れって言うありがちな構図は、一ミリの差異もなく拮抗して終えたから、体術というか、肉体的な限界の差で薫子さんが負けてしまったけど、もう少し薫子さんに体力があったら、どうなっていたかわからないよ。