第3話【リリスさん討伐計画】
いや、まあ、ここも冷静に考えると、普通の流れなんだけど。
そして、僕の考えからすると、この問題に対する、一つの解決への提案は、
「NO!」
何を言われても、どう言っても、
「NO!!!!」
な訳で、そんな事、この人わかってて来てる筈で、まさか僕がこんな事、快諾するなんて思ってなかった筈なんだ。
だから、
「だよね………………………」
って言って、母さんが入れてくれた……、え? 今日は母さんいないの? じゃあ薫子さん? あ、蒼さんか、あ、ほんとだ、番茶だね、その蒼さんの入れてくれたお茶を啜って、まるで諦めるみたいな表情で言った。
そうだった。今、お客さんが来てるんだ。
そして、新たなる問題がうまれようとしているんだった。
だから、こっちの話に集中しないとだよ。
「当たり前ですよ、なんで僕が悪魔の花嫁のリリスさん討伐を頼まれないと行けないんですか?」
そう、八瀬さんが僕らにお願いしに来たこと。
それは『リリスさん討伐計画』なんだよ。
あのリリスさんだよ?
何度も何度も助けてくれた、葉山(茉薙)を救うために躊躇なく自分の腕を切断して飛ばせる彼女だよ。
そんなの絶対に無理。
普通に一般ダンジョンウォーカーなら、対象者がモンスターであるので快諾の上、問題はできるかできないかになるけど、普通ならハイエイシェント級で、実際にかつての三柱神さまにも近い位置にいるって言われるリリスさんの討伐なんて、可能な人は本当に限られていて、その中でも一番可能性のある人間にそういう話を持って行ってるみたいな話。
でも、リリスさんを知る人は、初心者でもそんなことはできないくらいに、リリスさんがいい人なのはダンジョンウォーカーならみんな知ってる訳で、事実ギルドですら、彼女はモンスターの枠でありながら客人扱いしてるくらいの待遇な訳で、何より彼女自身、ダンジョン側というかモンスターの立場での運営側って言う訳なので、事情を知れば知るほどそれは無茶な相談になってしまう。
と言うかしない。誰もしようなんて思わない。
もちろん、そんなことを考える前に、条件反射的に、無理、と言うか彼女を敵なんて考えられないってのが僕らの答えな訳だ。
ともう一回、キッパリと言い切ると、その言葉の後に、葉山が真っ青な顔して、
「鬼小姑………………………」
と聞こえる様に呟いた。
ちなみ、僕の横にいて、その反対側に春夏さんがいる、いつも通りニコニコしてる。ああ、安心するなあ………。
「まあ、そうさ、うん、そう言われると思った、君の奥さんたちからもそんな反応をもらえると思ってたさ」
って言って、カラカラと乾いたみたいに笑う八瀬さんだった。
そうなんだ、突然の来訪者は、鉾先八瀬さん。いきなり急に来たからびっくりした。
で、奥さん達って言われた葉山は、「お茶お代わりいりますか?」とか言い出すし、僕の後ろで待機してた蒼さんは、「茶受けも出そう」とか何か張り切りだした。
八瀬さんの言う、奥さん達に反応した結果だと思う。
今回、僕もさ、蒼さんの里に行って確信した事があるんだ。
つまりさ、人間て、思う、ってだけなら何を思ってもOKな訳で、そして行動もまたOKなんだよ、それは止まらないし止められない。でも、そこで、近しい人と本人が思う相手を含む第三者を含んだ時点てOUTになるんだ。だから、この場合、彼女達の行動に対して僕が文句を言ったり否定するのは違うんだ。
それにしても、相変わらず人を動かすのが上手な人だよね、この人。でも、まあ、持って来た主題は相変わらずNOだけどね、それは変わらないけどね。
本当に、この人、僕の家までそんな事を言いに来たんだろうか?
最初のうちはさ、ちょっといい話を持って来たみたいな雰囲気だったんだよ。
と言うのも、あの土岐と悪魔の花嫁のリリスさんが結婚するって話の筈だったんだ。
だから、それを聞いた時は、僕ら本当に喜んで、でも、なんか八瀬さんの表情はどんどん曇って行って、話もどんどん暗くジメッとした方に転がり落ちて行って、今はこんな調子な訳なんだ。