第2話【そして新たなる問題】
僕が言うのもなんだけど、その清廉な白い大剣はとても薫子さんに似合っていて、今までにない雰囲気というか、風貌と言うか、迫力と言うか神々しさみたいな物を携えて、例えて言うなら薫子さん自身を律してしまっている感じがする。
その剣自体が彼女を何段も上のランクに押し上げている気がする。
もちろん、それは、その白き大剣が、薫子さん専用のものであって、それを十分考えた上で、誰もがそれを持ってその位置にいけるものでは無いって前提条件の上での話だけどね。
言い方を悪くすると剣でその人が上がってしまう様な印象を持たれるけど、確かにそれはあって、僕もまたその一人だから、何より19代微水さん曰く、
『カシナートのバランスに君や静流ちゃんの剣のコンセプトを混ぜて、イメージして造ったら、地面からケイ素と窒素酸化物がが応援してくれた感じになって、任せたらこうなった、な、デペロッパーぽいだろ?』
なんて言ってた。
綺麗なお兄さんだったけど、最後まで何を言ってるか、伝わって来るまで時間のかかる人だったよ。すごい人だけど、いい人で変な人だったよ。本職コンビニ店長さんだったし。
雪華さん曰く、開発者とか研究者なんて変わり者しかいないって言う意味が、こんなところでもわかるなんて、とは思ったけどね。本当に鍛治職人っていうより、科学者のそれに近い人だった。
今回の多月家の騒動で一番得したのはもしかして薫子さんかもしれないかもね、とは言っても、彼女の場合常日頃から努力はしていた訳だし、その体制と言うか準備があって、初めて今回の幸運に恵まれた訳だから、まあ、当たり前の事であって、至極当然と言うことだね。
僕個人的にも、本当に行ってよかったよ。本当に最近、薫子さんて、妙に自信とか失ってたからさ、特に僕の前では死人みたいな目になるし、原因とか知らないから、僕としても対応しようもなかったしね、まあ、それでもよかった。
その専用剣を見て、珍しく母さんが、「いいなあ〜」って言ってたから、相当な業物なんだと思う。母さんてあまり人の剣みてそう言う事は言わないからね。思わず出たのが本音なんだと思うんだ。
そういうかあさんも、二代目微水の、『おぼろな影は写し描き、振るえば全てを砂塵に還る鬼殺しの凶刀 朧鴉』をもらって来てしまうしさ、まあ、それはあっちの人たちの熱意に負けて持って帰ってしまったってのが正解だけどね。
後、なんでか知ってる人がいたよ、ギルドの水島くんとか、なぜかD &Dの辰野さんまで一緒に行った。行きの飛行機から帰りまで一緒だった。
一心さんや紺さんはともかく、水島くんとかさ、彼らもまた多月の家と何かしらの縁とかあるんだなあ、って感心したと言うか思ったよ。
あ、それとあの自衛隊の人もいたよ。白馬さんは、あの時ダンジョン以来だから、いろいろ話せて、割と人となりを知ったかな、一緒にいた秋の木葉の人も一緒。今気がついたけど、多月の分家の人と仲のいい人ってみんな来たんだ、って今更わかった。ああ、そう言うことか、なろほどね、でもその目的はわからないから、元の木阿弥だけどね。
そんなの察することなんで僕には無理だから、事実として知るにとどまる訳だよ。
何よりご実家からの婿認定されるし、誰のって、蒼さんと。他を見繕ってあと7〜8人程度、里から嫁を見繕って子供をできればダースで設けて欲しいって懇願されるしさ、どうなってるんだよあの里は?
蒼さんのおばあさんの褐さんは大笑いしてるし。複数婚もOKで、葉山も、なぜか薫子さんまで僕の嫁認定されてたし、本当に、鬼の事件よりそっちの方が怖かったよ。
春夏さんが行けなかったから余計自体は混乱した気がする。
こんな事なら強引にでも連れて行けばよかったよって、帰って、春夏さんの笑顔を見て、それは無茶だよね、って冷静になれた。
そんな僕の割と落ち着いて気持ちを吹き飛ばすような自体が、今起きていた。
帰って早々にダンジョンでは新たなる問題が浮上しているらしいんだ。
その解決方法の為に、ここに八瀬さんがいるってのもなんか変な感じな僕だったよ。