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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その75【自分の限界は他人(自分をよく知る)が決める!! これ絶対】

 正面から来るのはまるで岩盤をぶつけて来られる様な鬼みたいな気迫。


 凄いなあ蒼さん、この揺らぐことのない必殺な感じと戦闘力。


 やっぱり、一対一で戦うなら、葉山と蒼さんだったら蒼さんに軍配が上がるかなあ、葉山もバルカとか、剣を多重に操作してたら、きっと今の彼女に勝てないぞって、思う。


 以前よりもズッと強くなってる。一撃の貫通力が凄い。これは葉山も負ける訳だよ。


 本当に強いもの。


 最初の一撃なんて、全く意識を介在させてない一撃だったよ。


 正確には二連だけど、同時だから一撃だね。


 でも、本当にのびのびと戦ってる。嬉しそう。


 あの手甲剣の形状って、関節を一個なくすから、動きを予想しやすくて攻撃が単調になりやすいけど、秋鴉装備の蒼さんって、かなり厄介なんだよ。


 気を抜いてこっちから剣を振るえば、そのまま巻かれて武器を壊されるか、奪われる。

僕のば場合は何故か剣の方から手を離さない見たいになってるけど、普通の人なら最初の一撃から剣とか武器を絡め取られてた。


 まるで、剣を壊す為の剣で、ソードブレイカーとか、ソードイーターみたいな感じ?


 言うなれば、ソードロバーって感じかな? 多分、それ目的にやったら大抵の人の剣は取れるんじゃないかな、っていうか保持するのが難しい。


 あの秋鴉を二つを組み合わせ上手に使う蒼さんは、最終的に相手の剣とか武器を持つ手に、数トンって負荷を簡単にかけてくる、こんなの普通の人間なら握ってるのも難しい。


 とか言ってる間に横に縦に来たよ。避けちゃダメだね、受けて立つって決めたから、全部返すよ。


 全部出したいって言う蒼さんの気持ちを聞いてあげないと、つまりはさ、全部出してないって事は、我慢していたって事で、我慢しないって事は気持ちいいんだよ。


 葉山の時も助けてもらってるし、数限りなく救われてる僕は、こんなことくらいでしか、蒼さんにお礼できないからさ。


 今日は気のすむまで、攻めさせてあげるんだ。


 気持ちいいいよ、思うがままに攻めるって言うのは、意識の解放に近いものがあるんだよ。


 つまりさ、順番に重ねていつしか限界を超えて行くんだ。


 あ、そうだ。


 勘違いしないでね。


 自分の限界を自分で決めるのはダメだよ。


 本当に、一見、真理をついている様で、そんな訳ないから、理にかなっている言い草だけど、これって大嘘だからね。


 だって、自分の限界なんて、自分にわかるわけがないんだよ。


 どうしかって言うと、限界内に自分がいるからだよ。


 自分が伸びたい様に、自分の生きたい様に、好き勝手したいだけならいいよ、それでも。自分の範疇に治るって言うなら本当の限界に気がつかない。多分、きっと一生涯、そこから、自分からは出れないんだよ。


 そこから見ている自分の限界なんて、気のせいか何かの影か霞みたいなもので、絶対に目標にしてはいけない。


 なんのために人がいるんだろ?


 どうして自分の周りに人が他人がいてくれるのさ?


 それはみんな指標であって、大切な手がかり足掛かりなんだ。


 自分の外にあるものなんだよ。


 強さを測るには相手が必要で、強くなりたいって事は、割と具体的に目標ってか、行こうとしている先が形としてあるって事なんだよ。


 じゃあどうするかって言うと、つまり、自分の限界は他人に決めてもらうんだ。


 大抵の人って限界なんて一生知らずに生きている。


 そんな負荷がかかる人たちばかりじゃないからね、ダンジョンウォーカーにもそれは言えてる。みんな自分の中に範囲を作って生きてる。


 多分、世界はそんな風にできているんだ。


 だから、特にその限界にたどり着く必要なんてない。


 危ないよ、限界。本当に致命的な怪我するよ。だって限界だもん。


 そんな瀬戸際なんだよ。


 もう死ぬかも、これ以上は無理でしょ?って思える自分は未だ甘えていたんだって、何度も気が付かされた。


 「もうダメ、限界……」


 って言うたびに、僕に母さんは言ってくれるんだ。


 「大丈夫、まだ行けるから」


 って、そう言ってくれるんだよ。


 そう言う時って、頭なんて回ってないからさ、そっか、なんだまだ行けるんだ、って思って、本当に行けてしまうんだよ。


 そんな時、母さんはいつも言うんだ。


 「大丈夫、秋が思うほど秋の限界って近くにはないのよ、大丈夫、まだ行けるから、そのためのお母さんだからね」


 って教えてくれるんだ。


 僕の限界は母さんが決めてくれるんだなあ、って、なら安心じゃんって、そう思ってた。


 だから、今、蒼さんは自分の今ある全部を僕にぶつけてその上に行こうとしているんだよ。


 今まで出せなかった本気を出してるんだ。


 これが楽しくないわけがない。


 ほら、蒼さん笑ってる。


 当然、僕もつられて笑ってるな、頬が緩んでるのがわかるよ。


 あ、ダメじゃん、攻撃が単調になってきてるなあ。少し弾きかたを変えてあげる。

こっちの方向は手詰まりになる、何個か前の分岐に戻って、攻撃のパターンを変えてもらう。これなら限界には届かない。


 ああ、すごい、これだけで直ぐに伝わるんだね。


 「申し訳ありません、酔っていました」


 攻撃の形が変わる。


 すごいよねこの辺のリカバリー。まあ、こんな凄い剣を手に入れてしまったんだから仕方ないよ、初代様の作品で、蒼さんに誂えた武器だもんね、テンション上がるよね。 


 「いいよ、すごいいんだから、仕方ないよ」


 あ、体も乗せてきたね。いいね、いいよ。


 そのまま押されるけど下がらない僕だよ。だって全部受け止めるって言ったからね。ここは引かないよ。


 どんと来いだ、って僕に対して体どれだけ捻るのって感じのモーメントな連撃が来る。


 いい一撃だね、今の蒼さんならあの時の、荒ぶっていた時の葉山に勝てるなあ、って思ってしまう。もっとも、葉山もただでは殺れないとは思うけどね。って思わせるほどの連撃だった。


 受け止めると、蒼さんはそのまま下がって、まるで地を這う様な格好で深く息を吐き出した。


 僕もつられて深呼吸。


 「大丈夫? 落ち着いた?」


 だいぶ形も整ってきてるし、何より蒼さんの気持ちの入れようが凄い。


 「はい」


 って元気のいい返事に、僕は、


 「じゃあ、またやろうか!」


 そのままの形から蒼さんは迷いも無く飛び込んで来る。


 なんか、顔赤いけど、大丈夫かなあ、って心配だけど、まあ気持ちは乗ってるのがわかるから、そのまま正面から受け止めた。


 そしたら、たまらず笑う蒼さんの声に、僕も釣られて笑ってしまったよ。


 声出ちゃった。


 ずっとこのまま続くといいなって思うけど大丈夫だよ、蒼さんが求める結論は僕が出してあげるからね。


 どんどん気持ちが一緒になってゆく感じ。


 でも結果は出してあげる。


 僕がそうされたみたいに、蒼さんを限界の外まで連れて行ってあげる。


 かつて僕が見た世界。


 あの喜びに興奮。


 受け取ってくれるといいな。

 

 

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