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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その72【燃え上がる蒼の血潮】

 蒼さん、きっと本気でやりたがってるんだろうなあ、って安易に想像が付くよ。


 もちろんそっちの方がありがたいよ、演技で段取り通りなんてものより、普通に戦う方がずっと楽だもの。


 やった事の無いことをするって言うのはやっぱり緊張するよ。そんな思いがピークに達しようとしている時に、僕の陣に焔丸くんが入って来た。


 「義兄様、時間です」


 と言ってから、僕の姿を見て、


 「義兄様、なぜジャージを?」


 と怪訝な顔している。言わなきゃだめ? 説明するのがめんどくさいんだけどなあ、って思ってると、その後ろから葉山と薫子さんも来た。


 「これ、ダンジョンウォーカーの正装なの」


 っ葉山の奴、結構適当な返事をしている。


 いや、鎧でもいいけど、やっぱり着慣れてるのが一番だよね。いつも着ているこのジャージも葉山が持って来てくれてたんだ。助かるなあ。僕はこんな事態になるなんて想像もしてなかったから。


 「じゃあ、行こうか」


 ってそう言った瞬間に、薫子さんが、


 「真壁秋、今日花様から伝言だ」


 と言って、何やら物想い深げに、ゆっくりと深呼吸して、


 「頑張りなさい」


 ってなぜか声色まで真似て言ってた。


 うん、まあ、わかったよ、って言いにくればいいのに、って思ったら、薫子さんが、


 「あの鬼、今日花様を離さないのだ、その上、私に向かって、妹になれとか傍若無人なことを言い出すんだ、なんとか言ってくれないか?」


 なぜそこで、僕に微水様と薫子さんの仲介役をさせようとするの?


 いいじゃん、別に、って言いかけた時に、薫子さんは、


 「いいんだ、わかってるんだ、そうだな、これは今日花様を独占したいと思う、気持ちなんだ、言われなくてもわかってる。そうっだ、私は心が狭いのだ」


 ってわけのわかんない告白が始まる。


 ともかく、それはいいや。


 「じゃあ行こうか、焔丸くん」


 と言うと、


 「はい、私が案内役となります、ではついて来てください」


 会場に出ると、そこに大きな歓声が上がる。


 この試合場を囲むように、きっと町の人間が全員来てるってのもわかる。


 すごいなあ、この熱気。


 すると、正面に、その試合場の真ん中に、すでに蒼さんが待っていた。


 僕もその位置に行くと、その後ろにいた菖蒲さんが下がり、そして、焔丸くんも下がった。ちょっと距離を置いて待ってる感じ。


 僕ら二人だけ、この場所に置き去れれる。


 少し俯き気味の蒼さんの顔が僕の顔に真っ直ぐに向いた。


 初めて見る、きっとこの町の戦闘衣装なのかな? 以前にも来てた忍者っぽい服装とも違う。そして両手には、あの秋鴉。とても神々しいと言うか綺麗。蒼さんにとっても似合ってるよ。


 で、すごい笑顔。


 そして言うんだ


 「お屋形様、まず優勝おめでとうございます」


 改めて蒼さんの口からそんな言葉を聞けるとちょっと恥ずかしいというか照れる。


 そんな蒼さんをスッと手を出して制する菖蒲さん。


 「では、婿殿、蒼、段取りの説明をします」


 と僕と蒼さんに説明し始める。


 すると、蒼さんは言った。


 「いえ、母様、本日はそのような段取りなどいりません」


 と言い出す。ああ、やっぱりやる気満々だね。


 「私は、お屋形様に自分の全部で戦うのです」


 と言い放った。


 菖蒲さんは一瞬、「何を言ってるの?」と自分の娘をたしなめるように言うんだけど、試合場の外から大きな声が、


 「いいぞ、存分にやれ、俺が許す!」


 と捧げれれる当の本人からの快諾が出る。


 ちょっと戸惑うながら、菖蒲さんは焔丸くんに連れられて試合場を出る。


 ともなく二人きりの僕らはお互いに顔を見合わせていた。


 揺るぐことの無い強い瞳の中には、松明の炎が揺れていた。


 まるで彼女の中の情熱をそのまま表しているようで、同時にとても綺麗だった。


 今にも喜びに弾けそうになる蒼さん「では参ります」って突撃して来るような言葉に「いいよ」って二つ返事する僕だったよ。


 じゃあ始めようか、全部、受けて立つよ。


 

 

 

 


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