その66【望郷心を呼ぶ懐かし名の響き】
こうして戦ってる訳だけど、町の皆さんはみんな大体半分残して本家のお屋敷、つまり多月さんの家に行ってしまったんだよ。微水さんまでも薫子さんと一緒に本家に行ってしまう。僕側の応援席には焔丸くんと、葉山だけがいる。
「ほら、真壁隙見せてるよ、とっととぶった斬れ!」
って叫んでる、葉山は僕の応援じゃなかったよ。ちょっと寂しいな、って思うけどまあ良いや。
それにしても、辰野さんと一心さんはともかく、紺さんとか藍さんとかも秋の木葉の人だから強いのはわかるけど、水島くんてこんなにやれる人だったっけな?って思ってる僕だよ。
「くそ、入らねえ!」
って言いながら、雷に、氷に、炎に、自在に剣に付帯させながら僕に斬りかかって来る。
なんだろう、引かないと言うか、前に前に出て来る粘りというか力があるんだ。
「秋先輩、水島先輩強くなったと思いませんか?」
って聞いて来ながら斬りかかって来るから、
「うん、そうだね、あのおっぱいロード(閑話休題5【少女達は競い淘汰して行く、同じ終点に向けて】参照)の時とは段違だね」
って正直に答えたら、
「おっぱいロード?????」
と紺さん、あからさまに怪訝な顔して、水島くんを見てた。
「真壁!!!! ダメだ!!! その話は! だめ!!!」
って必死にそう水島くんの唇が動いているのわかるんだ。
「違うぞ、俺、そんなの興味ねーから! どうしても真壁がついて来て欲しいっていうから……!!!」
何言ってんのさ?
「違うじゃん、話持って来たの水島くんじゃん」
って、確認すると、
「ま、真壁、お前何言ってるんだよ? しっかりしろ、俺そんなところに行ってないだろ!」
「行ったじゃん、一緒に、誰のものでもないおっぱいがあるからって、一緒に行ったじゃん、あの創成川の飛び地のダンジョン! キングなコボルトと一緒に戦ったじゃん」
すると、アッパースイング気味い斬りかかって来てる辰野さんが、
「ああ、あの場所か、私も行ったぞ、特に恥ずかしがることもないだろ?」
と意外に参戦して来た。ええ!辰野さんがおっぱいって! って知ってる知ってる。情報の出元の一人だもんね、辰野さん。やっぱさ、みんな好きなんだよ、おっぱい。
すると、
「鮫島が言うにな、『そこに幸せがある』と言う話だったんだ、男子しか行ってはいけないから、黒の集刃、及びD &Dによる有志一同で頑張ったよ」
って爽やかに言ってるから、きっと内容も知らずに行ったんだなって理解した。
そして、
「結局、辿りつけたのは私だけでね、その後何回か挑戦したのち鮫島も行けたらしけど……」
って一心さんの方を見る。ああ、一心さん顔真っ赤だ。
「あの時、最後の部屋にはどう言う訳か一心がいたんだ、真壁くんは、春夏くんがいたんだろ?」
って聞いて来ながら、受け流す。熱っち、グラム熱!
「ええ、そうですね、なぜか春夏さんがいました」
と言ったら、
「本当に不思議な事もあるもんだよ、その後一緒に帰ったんだ、な一心」
「ええ、はい」
って一心さんが、どこか恥ずかしそうに言った。
すると、
「水島先輩は、誰がいたんですか?」
低い声だなあ、紺さん、どうしたんだろ?
「俺は最後までたどり着けなかったんだよ、嫌な事思い出させないでくれ」
その言葉に、
「なんだ、そうなんですか!」
ってやけに嬉しそうな紺さんだったよ。
でも、なんだろうなあ、こうしてみんなで戦ってるとさ、外だけど、まだお昼前の日差しが眩しいけど、ちょっとダンジョンが懐かしくなってしまったよ。
そして、辰野さんが春夏さんの名前出すから、会いたくなってしまったよ。
ほんと、とても長い時間、ここにいるような、急にそんな気がしてならない僕だったよ。