その65【いつのまにやら対ダンジョンウォーカー戦】
気がついたら、僕、水嶋くんと戦ってたよ。
帯電させた剣を大きく振って来る。
あ、受けても良いんだろうか?
ちょっと不安に思ってカチンと剣を重ねたら、水島くんの剣から僕の方へはビリってしなかった。よかった、僕の剣、絶縁体だった。
「クッソ、ダメか……」
「良いぞ、水島くん、そのまま背中から行かせてもらう!」
って言うから、水島くんの後ろから来るって思うじゃん?
来ないんだよこれが、横、斜め上から、辰野さんが斬り込んでくる。派手に見せるって事は、こっち囮だよね、ほら、下から紺さんだよ。いや、違う、そのまま抜けて、でもさらに下から藍さんが来た、ってことはやっぱり前から、諦めて離れる軌道がわざとらしいよ水島くん。その背後から、村雨の一閃が襲いかかってくる。しかもこれ切っ先じゃない、真ん中から根元にかけてヌルッとしたのが入ってくるよ、伸びるなあ、一心さんの斬撃。思わす、「すごいね」って言ったら、「お恥ずかしい」って伸びきった村雨を顎にむかって跳ね上げて来た。避ける僕を観て一心さん、「お見事です」って褒めてもらえた。
なんか良いね、さすが一刀の淑女って言われてるのがわかるよ。
それに合わせて、辰野さんの上からの斬りさげが来る。
辰野さんの炎の大剣、グラムからボーボーと炎が上がってる、その小さく踊る舌見たいな炎に触れただけでも結構な熱が来そう、『フレイムタン』とは良く言ったもんだって思ったよ。
この距離でやりあってたら、火傷はともかく日に焼けちゃうな。
「今の感じいいぞ、もう一回だ」
って辰野さんが言うと、僕とのクロスレンジにいた人たちは一旦離れる。
流石、D &Dのリーダーだよね、すごい統率力だよ。
確か、辰野さんのスキルって、てか、クラス【ロード】は、指揮下の人の戦闘に関する能力を軒並み上昇させるんだっけ? 僕ら【王】のスキルとは違って、強制力は発揮しないけど、協力下にある人にも作用するって、確か雪華さん情報だとそんな話を聞いた様なないようなだね。
それに、一心さんと辰野さん。紺さんと水島くん、あと藍さん、ってそれぞれの組み合わせは、ダンジョン内ではなかったと思うだよ。
もともとギルドにD &Dって違う組織だしさ、それが、ものの見事に合致してる。
すごいもんだよ。
いや、さっきまで、町のみんなの相手をしてたんだけどさ、だんだんめんどくさくなってさ、もう、良いからみんな一斉にかかってこいよ、って言ったら、本当にかかって来た。
全く遠慮もないでやんの。言ってって自分で『マジか?』ってなったよ。
まあ、良いかって思ってたら、その人たちの合間を縫って、彼ら、辰野さんをはじめ、一心さん、水島くん、紺さんが来たって言うわけ。
でも最初はさ、紺さんは、「お屋形様、助勢に参りました」って言ってたんだよ、そしたら、辰野さんが、「真壁くん、勝負だ!」って言って、「助太刀です、申し訳ありません」って一心さんも来て、「俺も行く、一回、真壁に勝ってみたい」って言い出して、それを見ていた紺さんが、挙動不審になって、散々考えた後に、「お屋形様、私も良いですか?」って言い出して、ついて来た藍さんも、「じゃあ私も」って言う具合に今の状態になったんだよね。
まあ、良いけど、一人一人やるよりは、早くすみそうだし。
で戦い始めたら、町の人たちは、みんな気を使って下がってくれて、誰ともなく、
「仇討ち?」とか物騒な事を聞いてる人がいたけど、紺さんとかがやんわり否定してくれてた。確かに全員で僕に斬りかかってく姿はそう見えるのかもしれない。小学生女子が「ボス戦?」とか言ってた。
そうだよ、そんな物騒な知り合いじゃないよ、仲良しだよ、今はこうして戦ってるけど。って言おうとしたけど、こんな状態なら誰もそう思うよね。