その64【のんびりと町を殲滅中】
以外に葉山との決着は簡単についた。
やっぱり、バルカに使い慣れて無いせいか、蒼さんと同じ事 したらあっさりと一撃を入れさせてもらえたよ。
もちろんちょっとの工夫はあったけど、バルカの弾道を曲げて来たけど、その影に、借りてきた微水様の刀を忍ばせてたけど、まあ、その辺は広域に視野を広げればある筈のものが無いんだから警戒はするよね。
綺麗に首筋に入れたら、葉山のヤツ『グギャアアァァァァ!』って、モンスターかよ、しかも爬虫類系かよ? って声出した後に、本気で悔しそうに、「また負けた!」って叫んでた。
で、一人になった薫子さんの攻略も、僕が油断する筈もないんで、そこはしっかりと、彼女にもわかりやすく一撃を決めた。
綺麗に薫子さんの脇から、首にかけても一閃、舐めるように入れた。
「きゃあ!」
うわ、びっくりした、急に女の子みたいな声出さないでよ!
っていいかけて、慌てて止めた、薫子さん女の子だった。よかった、出してしまった言葉だったら、遺恨を残しそうな一言だった事に気がついたよ。かなり長く恨まれそうと言うか、後を引いてしまう言葉だったよ。危ない危ない。
「いい勝負できたな」
って19代微水さんがいうんだよね。でもちょっと悔しそうな顔して、薫子さんが、
「また負けた!」
って言うから、
「葉山とどっこいくらいは強かったよ、母さんとの特訓の成果と、剣の良さを生かしてたじゃん」
って言ったら、
「そうか、そうかな、真壁秋!」
ってとっても嬉しそうに言う薫子さんは、僕らの戦いを見ていた微水さんに向かって、
「店長、ありがとうございました、自信が持てそうです」
って嬉しそうに言うんだよね。
「まあ、過度な期待はしないようにな、その『白護輝鴟梟初ノ太刀』が君を写してくれる、その姿から今を知るといいよ」
と、なんかとてもかっこいい事を言ってた。
「はい、ありがとうございました」
と素直な感謝を示す薫子さんだった。
そんな折、
「お屋形様、よろしいでしょうか?」
と、振り返ると、五頭さんがいる。蒼さんの片腕とも言える人だね、相変わらす大きいね、でスキンヘッドだね。僧兵みたいな印象が変わらない。
「お屋形様が解禁されたと聞いて、是非一手ご教授いただきたく、推参いたしました」
ああ、そっか、確かヒーラーだから参加しないって話だったね。
と言うか、解禁にとかやめて、アユとかじゃ無いんだから、解き放たれたみたいな言い方はやめて、まるで僕自身が危険人物みたいじゃないか。剣を返してももらっただけだからね。
そんな事をどう伝えたらいいのかって思う僕をニコニコした顔して見つめてるから、
「じゃあ、戦う?」
って聞くと、
「図々しいようですが、できる限り、加減をしていただくと嬉しいかと」
いや、大丈夫だよ、恐縮した視線を投げかけてくるけど、この前の事根に持ってんのかなあ、確かにあの時はやりすぎたけど、まあ、そこは敵だったし、でも助けたじゃん。
「では参りますそ、お屋形様!」
っていつもの六角鉄棒で襲い掛かってくるから、そのままなんの工夫もしないで、葉山や薫子さんと同じ処置で剣を走らせると、
「ひぁん!」
変な声出さないでよ、びっくりしたよ、葉山や薫子さんより、心臓に響いたよ。なんか寝る前に思い出しそうだよ。
「いやあ、強い、さすがお屋形様です、では、私は本来の勤めに戻ります、入れ替えで四胴の娘もこちらに向かわせますので、よろしくお願いします」
と言って、意気揚々に帰って行く。
そして、四胴さんと戦って、っていか、彼女、僕の姿を見るなり、「無理です」って涙声で言って帰っていった。その後、町総出の総当たり戦となる。
見てた人たちって、待ってた人達だんたんだよ、だからもう空手の100人組手
みたいになってる。老若男女を問わずガンガン来る。
杖をついてるお婆さんから、小学生の低学年くらいまで、あれ? 君さっき並んでなかった? え?小学生は何度も当たってもいいの? そんなルールあるんだあ。
今軽く背に刃を走らせた女の子が、「負けたー!」って嬉しそうに走っていいって列の最後尾にまた並んだ。
あ、これ永久に終わらないヤツなのかな?
すると、それを見かねたようにね、19代微水さんが、
「さすがに、これはきついだろ? やめさせるかい?」
って聞いてくるから、
「いいですよ、みなさんにはお世話になってる、特に薫子さんとか迷惑かけたみたいだし」
って言うと、
「君はいいヤツだな」
って、褒めてくれる。微水さん、とっても嬉しそうな顔してニカって笑う。なんかその表情につられそうになって僕もニカって笑いそうになるよ。
でも言われた方は、ご立腹みたい。
「迷惑なんてかけてないぞ、変な事言うな!」
薫子さん怒ってる怒ってる。
「だって、それ、その剣さ、コンビニのバイトで買えるような代物じゃ無いじゃん」
って指摘すると、
「それはそうだが……」
「そんなの貰えってしまったって事はある意味、迷惑では無いけど、微妙じゃん」
って言うと、考えて黙り込む薫子さん。あれ? ちょっと言い過ぎた? でも今、絶え間なくかかって来るこの町の皆さんに怪我させないように、そして負けを認めやすいように戦ってるから、一応、僕の剣に対してそうするようにね、って念を押しながら伝えてる。
普通に考えたら、できるわけもない僕のわがままを、この剣は切々とこなしてくれる。
本当に便利だよ、もう喋ってくれなさそうだけど、そんな無口なところも僕にとっては都合がいいよ。って思ったら、なんだろう、僕の手の中の剣が震えた。ん?どうした?
って僕は驚いたけど、剣のやることに一々驚いても仕方ないので、特に故障もなさそうだから、ほっておいていいよね、放置の方向で、って思ったら、また震えた。
ほんと、なんだろ?って思うものの、そんなことわかる筈もないので、今度、聞いてみようと思った。
面白くもなさそうに、不満げな顔して僕を見る薫子さんだった。
「だいたいお前はいつもそうだ!」
とかいいだした。
「確かにお前は強い、凄い強い、全く敵わない」
ヤケを起こしてるって感じでもないから、一体何を言いたいんだよ、ってなる。
「普通、そこまで強かったら、そこまで無双な人間なら、もっとこう、なんて言うか、わかるだろ?」
わかんない。何が言いたいのさ?
「つまりだな、もっと横柄で偉そうで、怖くて、ってなるだろう普通」
んー、わかんないでもないけど、でもそれって、
「もっと乱暴者になれって事?」
って聞いたら、
「いや違う、違うから困るんだ」
とか言ってた。
本当に何が言いたいのかわからない僕への町の人達の積極的な攻撃への参加もなんか止んで、気のせいかな、ニヤニヤしてるんだ。
なんなんだろ?
ねえ、どう言う意味? って聞こうとしたけど、なけなしの本能がそれを止めた。
まあ、いいや、ほらみんな再開するよ、ちゃんとかかってきてね。