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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その61【生涯戦う葉山静流の矜持】

 ノリノリの葉山だよ。


 手を緩める事なく攻撃が雨のように降ってくる。


 「楽しいね! 真壁」


 そのままバルカを掃射して来る。範囲広いなあ、もうちょっと焔丸くん、遠くに置かないと危ないかなあ、って思ってたら、薫子さんがちゃんと下げててくれてた。助かるなあ……。


 刀の本数は、30本、どこから持って来たんだろうか?


 そんな素朴な疑問は、


 「俺が貸した」


 と、ああ、コンビニの店長さんだ。いつの間にか僕らの戦いを見守ってた。


 そして、


 「やるなあ、君、強いじゃん」


 って僕に向かって飛んで来る刀に巻き込まれながら、呑気にそんな事を言って来る。


 危ないなあって思うんだけど、でも、何だろう、この人の安定感。


 特に速くもなく適当に避けてるけど、まったく当たる気配がない。


 「俺たち微水は刀じゃ傷つかねーよ」


 って言ってる。


 「そうなんですか?」


 「ああ、これでも一応は、剣鬼の加護があるんだぜ、どんな料理の上手い奴がいても自分が料理にはならないだろ?」


 いや、その例えはどうだろう?


 「白護輝鴟梟初ノ太刀の様子も見たっかったしな」


 とか言ってる。


 すると、薫子さんが、


 「あ、店長! お店の方は?」


 と尋ねると、


 「今日は祭りだから休みだよ」


 「そうですか」


 「ああ、見ててやるから、頑張るんだよ」


 「はい」


 なんか、すっかり仲良しさんだね。薫子さんって素直で真面目だから、大人の人には好かれるよね。基本はいい人だしね。僕には厳しいけどね。


 でもまあ、これですっかり薫子さんも戦う気になっちゃったよ。もしかしたら、「やめない?」


 って言ったら、止めそうな感じだったんだけどなあ。僕を相手にする目的できちゃったよ。


 「どこ見てんのよ、真壁!」


 ってガンガン来るなあ、葉山、まったく遠慮とかないな、だから、


 「薫子さん」


 って素直に答える。


 「私を見なさいよ!」


 ウッキー状態で言われる、突進しながら言って来るから顔近い近い。


 刀飛ばして、バルカで逃げ道塞いで、最後は突進かよ。


 葉山のマテリアルブレードの4連斬が来た。まあ普通にかわすけどね。ほら、避けた所が空飛ぶ刀の軌道って事だね、ちょっとでも違う動きしようとすると、今度はバルカで形を整えられる。でガンガンガンガーン! って来る。どうして最後伸びるんだろ?


 本当に楽しそうな葉山。


 「やっぱ、真壁はいいなあ、思いっきりできるもん」


 とか言う。


 「そうなの?」


 「そうだよ、蒼さんもそう思ってるんじゃないかな? きっと」


 とか言い出す。


 蒼さんと葉山って、かつてはダンジョン最強って言われてたんだっけ?


 「自分の技能が、自分の力が、自分の全部を出して受け止めてくれるのって真壁だけだもん」


 一撃い入れて離脱する葉山、足、早! 振り向きもせずバルカを連射して来る。


 弾いて弾いてるけど、この魔法弾も重いなあ……。


 「どうよ、真壁、私強くなったでしょ?」


 とか言うからさ、


 「うん」


 って答えておいた。


 そうだね、その健康な体から繰り出される一撃は重くて、幸せに満ち溢れているよ。


 その全部が一撃必殺の趣があるね。相手僕にだけど、全部出す前にもうちょっと優しさとか欲しいけど。


 「これでもね、以前の方が強かったなんて噂もあるのよ」


 「いや、気のせいじゃないかな?」


 「本当にそう言われてるんだって」


 「そんなの勝手に言わせておけばいいじゃん」


 気にする事ないけどなあ、要は本人の問題じゃないかな、


 「今もいい感じだよ、前よりもかなり良いのが来てる」


 以前と今を知る僕が言うんだから間違いないよ。今の方が強い。攻撃の中の芯がピシッと通ってる感じ。


 「だよね、私もそう思うわ、だって、真壁も倒せそうだもん」


 いや、それはないけど、こうジリジリと力押して来るところか、撃ち終わっても、押して残り続ける力とか、本当にゴリ押しが凄くなったと思う。


 そんな葉山なんだけど、どこか寂しそうに言うんだよ。 


 「一瞬の閃光みたいな、そう言う迫力がなくなったって言うんだよ」


 ああ、そう言うことか。


 今もガンガンと、僕を本気で倒すための攻撃は続いているけど、なんか、表情と言葉だけだしおらしいと言うか、儚げだからギャップが困る。


 また一撃入れつつ一回離れる。


 そして、


 「そんな事ないよね?」


 若干の不安を、隠そうともしないで僕に見せるんだ。


 僕は知ってる。


 かつての葉山を、あの時の、明日なんてない葉山を知ってる。


 それは全て最後を意識した攻撃で、先の見えない未来を知らない攻撃だった。


 正面から来る恐ろしいまでの切れ味に対しての、全体的には見えなくらいの薄さに儚なさ。


 あれは強さなんて言うものじゃない。


 人がさ、生きてる人間が出して良い力じゃないんだ。


 だから、どっちの全力も受け止めてる僕だから思うんだ。かつての葉山のあの陽炎みたいな生き方を、今、忘れてしまっている自分に不安なんだ。


 良い事なんだけどな、それ。


 粘着質のようにまとわりついて来る力の残置する斬撃に、こんなにイヤラシ攻撃ができるのって、あの頃の葉山からは想像もできないよ。


 だから、なんて言って良いかわからないけど、その逞しくなった葉山に、


 「これなら一生、お婆ちゃんになってもガッツリ戦えるよ」


 と言ったら、


 「何よそれ」


 って笑ってた。


 「じゃあ一生真壁と戦い続けるから付き合ってよ」


 って言い出すから、「うん、まあ」って納得する僕だよ。


 確かにね、いいね、それは、そう言うのって僕達らしいね。


 多紫町の広い空を翔る葉山。


 さっきより元気がマシマシの葉山だよ。

 

 

 

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