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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その60【二肩さんと初戦、九首さん達挟んで、次葉山】

 僕は、のんびりと歩いていた。


 いや、なんかいいね、久しぶりに剣を片手に歩くのって、本当に自分の体から欠けてた重要な部位が戻って来た感じ。


 安定する。本当にしっくりくる。


 ここって、山の上の盆地だから、結構風とか冷たいね。時折、スッと吹いたくる風た気持ちいいね。


 それに、どこか懐かしいなあ、って思ったんだよ。


 そんな僕の前に、一人の女の人が現れる。


 知らない人。でもきっと強い。


 大きな戦斧を持って、こっち見てニヤって笑ってる。


 その女性は、


 「あんた、多月の本家に呼ばれてた子だね?」


 「はい、真壁秋っていいます」


 「ああ、ごめんね、私は二肩家の者だよ、悪いね」


 って言ってから、なんで謝ってるんだろ?って思ってると。


 「あんた、北海道から来たんだろ?」


 って聞いてくるから、


 「はい」


 って答えると、


 「娘がさ、北海道にいるんだよ、ダンジョンには入らなかった見たいだけどね、今回は帰ってこなかったけど、楽しくやってるといいんだけど……」


 秋の木の葉にそんな人、いたかな? って思う前に、蒼さんとかつて戦って未だ語り継がれている人だね、ってこっち来てからの情報を思い出して、その人のお母さんかな? くらいの年齢で、ああ、ってなる。


 「じゃあ、やろうか」


 ってこっちに向かって構えて来るから、そういうルールだったって思い出して、僕はそのまま、


 「いつでもどうぞ」


 と言ったら、


 「レディーファーストかい?」


 って言われてしまうけど、そんなつもりもなかったんで、「別に」って答えたら、それを合図に突進して来た。


 大きくて重い戦斧の刃を前に、突進して来る足は、僕の距離を一歩で縮める。


 本当に、この町の人って、すごいよね。戦いってなった瞬間の躊躇いの無さ。


 その速度と重さが十分乗ってるから、回避も受け止めるのも難しいから、戦斧の刃を合わせて、そのまま振り切る。熱したナイフでバターを切る見たいない斧の刃を斬ってみた。


 流石に、この攻撃方法にはびっくりしたみたいで、下がろうとするけど、もう体が前に出て来る事前提の攻撃だからさ、止まれなくて、僕が交わす体の横で、刃を自分のお腹付近に当てられたのを見て、二肩さん、ただ呆然と黙ってしまう。


 「いやあ、大したもんだよ」


 って言う、その二肩のお母さんにそっと触れる僕の剣、納得してくれたみたいだからそのまま引いた。


 本当に調子いいなあ。一応お願いしたのが、「全力で振るけど、人は斬ってはダメだし、まして、叩いて骨とかも折らないでね」って願をかけていたけどその通りにしてくれた。


 やっぱりこの剣は優秀だね。


 「負けだ負け」


 と言って、二肩さんは、


 「じゃあ私は本家で酒盛りして来るよ、頑張ってね」


 と言われる。


 強い人だから、勝敗もきちんと把握してくれるから気を使わなくていいから嬉しい。僕は彼女に手を振って別れると、そこに背後から声がかかった。


 振り向くと、そこにいたのは、あの小学校での先生がいた、で、そこには、彼女を取り巻くように他にもいた。


 「真壁秋くん、弟の仇だって事を証明してもらうわ」


 とか言ってる。ん? 仇を討つんじゃなくて、証明??? ちょっと変んだ、でもまあ、何も言わずにかかってくればいいのに、って思った。


 あ、でもこんな登場の仕方をする度に、倒していた人がいたなあ、って思い出すけど、たくさん居たので特定ができない。


 でも、ああ、そういった人のお姉さんなんだって、その辺の心情的な把握はできた。


 「ここにいるのは九首の家の者よ、そしてそこに連れなる者たち」


 って言うその先生の横で、丁寧に頭を下げるおじさんとおばさんが居たから、きっとお母さんとお父さんなのだと思う。


 「ともかく、多勢に無勢で悪いけど、弟の破門と勘当を解くためにも戦ってもらうわ」


 って言うんだけど、そう言っている間にかかってくればいいのにって思う。


 で、挙句の果てに、


 「さあ、どこからでもかかって来なさい!」


 って言った2秒後、全員い負けを認めさせた。


 そしたら、


 「ね、凄いでしょ? こんな子にうちの子が太刀打ちできるわけないのよ」


 って先生がご両親を説得してた。ご両親もまた納得したようで、


 「ありがとうね、真壁くん、この事実を体験して両親説得したいだけだったの、時間取らせてごめんね、頑張ってね」


 と路上で家族会議が始まっていた。その様子を見ながら、きっと原因は僕なんだろうけど、上手くいくといいなって思った。


 で、その後もフラフラと歩きながら何人か倒してると、前の方から、焔丸くんが来た。


 葉山と薫子さんも一緒だ。


 「真壁ー! 戦おう!」


 って、軽快なノリで言って来るから、どこか笑える。


 だね、そう言うルールだもんね。


 「共闘するの?」


 って薫子さんに聞いたら、


 「いや、私は終わるまで待つよ」


 と言って戦線を退く。その時に焔丸くんも一緒に連れて行ってくれるから助かる。


  「真壁、本気出していいよね?」


 って再三聞いて来るから、


 「いいよ」


 って言うと、凄い嬉しそうに笑う葉山の顔。


 んー、上空を見ると、ああ、あるねえ、結構な数の刀とか剣。どこで調達して来たんだろう? でもまあ、かつて、ダンジョンでやりあった数とは比べ物にならないほどその数は少ない。あ、薫子さん、もうちょっと離れた方がいいかな? って思った瞬間に、上空から数十本の刀が飛んでくるんだけど、その軌道に棒立ちの焔丸くんが立ってる。


 いや、ちょっとこれはないんじゃないかな? 僕が焔丸くんを助けると、そのまま手ぶらな葉山に僕が討たれる格好になるね、これ……。


 このやり方はちょっとダメだね。


 「バカ! お前何考えてるんだ!」


 葉山の計画というかその手段に予想がついて、薫子さんも怒ってる。


 で、等の焔丸くん本人はというと、


 「え?」


 っていまだに自分の立ち位置がわかってない。


 いや、葉山、ここダンジョンじゃないから、誰かを盾にしての作戦とかもう最悪だろ?


 「真壁、これでもう避けれないよ」


 と葉山は楽しそうに言った。


 そうなんだよね、葉山ってさ、かつて戦った時の直向きなくらいの勝利への信念、目的への渇望って、怖いほど変わってない。


 あの時、ダンジョンで、蒼さんと共闘した時の茉薙と一緒の葉山がまた僕の目の前に現れてるって、そう思った。


 きっとこの町の雰囲気とかお祭りの空気、何よりこの町上げての戦いのノリに意識が高揚しているのもあるのだと思う。


 それにしたって、焔丸くんを盾にするってのは無いよなあ。


 ほんと、この葉山って子は、普段と違って戦いとか抗争が絡むとその性格と温度は本当に別人だよなあ…


 まあ、ダンジョンには『死』ていうのが無いから、余計に常識も容赦も無いんだよな、葉山。


 でも、ここダンジョンじゃないし、まして、仲間内でこういう事をしたらダメだろ?


 本当、一回ちょっとガツンと言ってやんないとダメだな。


 そんな僕の気持ちなんてガン無視して、お日様みたいに笑ってる葉山だったよ。

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