第88話【騒然とする4丁目ゲートあ、委員長だ】
なにか、こう、見ていて危うい感満載の彼女をほっておいて、角田さんは、至って普通に説明してくれるんだよね。
「シリカはその能力から、所謂『スカウト組』で、所謂エリートクラスで、ギルドの幹部なんですが、どうも時間にルーズで、多分、置いてかれたんだと思います」
で、そんな角田さんの声を聞いて、認識して、パっとその表情が明るくなる。
「おー、カドタと書いて角田ではないですか! 知ってる、知ってる」
そのシリカさん、角田さんの存在に気がついて、明るく笑顔で、角田さんの方に駆け寄って行く。
そりゃあ、カドタって書いて角田だけどさ、やっぱりダンジョンウォーカーの上級者って変わった人が多いよね。その辿々しいしい言動も、素振りも、いい意味でも悪い意味でも絶対に凡人ではないもの。
それに見た目だけど、こう言っては失礼なんだけど、あんまり強うそうな人じゃない感じがする。けど、スカウト組で幹部って事だから、決して侮ってはいけないんだよね。
少し離れた所で、シリカさんと角田さんは話し込んでいる。でも、なんか緊張感のない人だなあ。
角田さんと話しながら、手をバタバタさせたり、大きく頷きすぎてフラついたり、なんか見ていて落ち着きがない。というか危なっかしい。
あ、ほら今も、意味もなく歩き回って、人にぶつかりそうになってる。
駄目だよ角田さん、ちゃんと見てないと、ってなる。彼女ではなく、角田さんにその行動の責任を問いたくなってくる。
そんな時だった。
「真壁くん!!」
って僕を呼ぶ声にちょっとびっくりして、その声の行方を探すと、そこには、みた事ある人がみた事ない装備ってか姿で立ってた。
で、僕はその人をみて、
「あ、委員長」
って言ったらさ、割と真剣にガチ目な表情で、こっちやって来て、
「何してるの? 今日はダンジョンダメだよ、こんな所いたら怪我するよ」
って言うんだ。すごい真剣な表情。
それにその出立。
もうね、完全に、上級者、ってか深階層のダンジョンウォーカーって感じ。
よくわからないけど、黒のマント、それもどうみても、布って感じじゃないの。
何かの皮? 鱗? みたいな感じで、前の方はそれが開いていて、輝かないタイプの銀色の細かい目のくさび帷子的な鎧、と言うかブレスメイルになるのか? その下にはマントと同じような皮の服的な鎧を着込んでる。
で、足には金属グリーブで、腰からは二本の細身の剣を下げてた。
あれ? なんだろう? 委員長の剣、どっかで会った事あるなあ、って一瞬思う僕だったんだけど、もちろん二本とも鞘に収まってるから、その雰囲気だけを感じ取れだけど、本当にね、僕、この剣に関して、知ってる気がしたんだけど、委員長は僕の視線に気がついたみたいで、サッとその腰に装備した剣をマントで包んで視界から消してしまう。二本とも見えなくなった。
ちょっと気になったけど、まあ良いか、本人も隠したいみたいだし、その辺は察する僕だよ。だって、女の子が隠したいって思ってるって事はそれは『なかった』って事だから、そんなの追求できる僕ではないから。
だから、僕の好奇心は次へ移る。
今、マントを引っ張る際いチラッと見えたけど、そのマントの下に見えたのって、弓だよね? ショートボウっていうの? 見た目に金属製に見えるけど、相当に強力な奴だよね? 委員長、接近戦も遠距離戦もイけるの?
すげー、委員長。カッケー、本当にダンジョンウォーカーだったんだ。
何故か興奮してる僕。
あれかな、あの、仲の良い、普通に学校でおしゃべるするくらいの女の子の制服以外の私服姿を見てしまった感じなのかな? よくわからないけど。
でさ、その姿、委員長のダンジョン姿、どうみても英雄か勇者な感じじゃん。頭のティアラみたいなのをさり気なくついてるのも王冠的な感じがして、初めて見たけど、これが委員長がダンジョンに挑む姿なんだね。
馬鹿みたいに、目を見開いて、委員長を見てしま僕だったよ。
なんかこれじゃ、変態さんみたいだから、春夏さんも邪魔しはじめてくれたのかなあ、なんてアクティブシンキングな僕だった。
いや、本当、春夏さん、割り込んで来た。強引にきた。