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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その52【命銘 秋烏】

 その時、僕は、蒼さんの家に、だから多月本家にいて、その様子というか、特に激しい葉山の言い訳を聞いていた。


 お屋敷の廊下というか大きな縁側に座って、広い庭を見ながら、のんびりしてたんだ。


 一体に何がどうなっているのか、よくわからないけど、さっき、母さんが、この町の工房の隣にある家の塀を木っ端微塵に吹き飛ばして来たって話は、蒼さんのお母さんから聞いたんだけど、その母さんに話を聞くと、工房にあった朧鴉っていう剣が、単なる幻灯機みたいなもので、剣ではなかったって結論づけるみんなに、「あら? ちゃんと使えるわよ、結構えげつない性能よ、これ、2代目さんは、ちゃんと鬼を殺すって言う約束も守っているの」と言って、分厚いコンクリートの塀を一撃で、粉砕して見せたのだそうだ。


 母さん曰く、この剣を持った人間(使用可能な人間)はい「かに斬るか、どう斬るか、今斬るか」に呪いの様に固定されてしまうのであまり公開するのはオススメできないから工房にしまっておいたほうがい良いとアドバイスした様だ。


 その母さんにピッタリと引っ付いて離れない微水様の方はこれでいいんだろうか?とか考えちゃう。


 いやだって、この町の守り神様な訳で、少なくとも鬼神様で、だから威厳とかいいのかなあ、って考えていると、


 「なあ、お前のかーちゃんくれよ」


 とか言い出す始末で、一体何があったのか、って感じなんだけど……


 こっちはこっちで取り込んでいた。


 「違うの、絶対にそうじゃ無いの、ちょっと間違っただけ」


 ってさっきから、葉山がうるさい。


 母さん達が帰って来るちょっと前に、蒼さんと葉山がやりあったんだよ。


 なんか思う所あったみたいな葉山が、「本気でやりあいましょう」とか言い出して、挑戦を受けない訳がない蒼さんと勝負したんだ。


 つまり、北海道ダンジョンで、かつては、いずれ対戦するって言われていた二人の対決、ようやく行われた訳だね。


 そして、葉山が言うんだよ、


 「真壁、ちゃんと見届けていてね、それと何があっても止めないでね」


 とか真剣な顔してるんだ。


 「お屋形様、見届けてください」


 と蒼さんにも懇願される。


 まあ、止めないけどね、下手に介入してどっちかに恨まれても、最悪、両方から恨み言言われてもつまらないからさ、ここは全力スルーだよ。「うん、いいんじゃないかな」って適当に流しておいた。


 で、始まったんだけど、葉山の奴、最初から全力なんだよ。もう、一切手を抜いていない。バルカ、例の葉山が聖王様だから専用武器の、二丁ライフルね。それをこともあろうに連射モードで撃ちまくる。


 剣しか、しかも手甲型っていう極めてレンジの低い武器しか持ってない蒼さんを固定して、その後、自分の武器、接近戦用の方だから双剣型マテリアルブーレードね。あ、そうか、だから葉山の方も僕と同じアキシオンなんだな。


 ともかくそんな卑怯な戦いを展開させる葉山だった。


 これってさ、優位性によるところの落としだよね。


 ああ、ダメだよ、蒼さんとやる時は飛び道具に頼っちゃ。


 ほら、わざと照準の前に立って、引き金を引くだけにしてくれるけど、次の瞬間消えるんだ。葉山事態、専門っていうほど、それほど銃火器に慣れてないから、そこで、蒼さんを探してしまう葉山。もう後手だよ。ライフルの形をしたバルカの先が見失った蒼さんを探している間に、


 カチリと音をわかりやすく立てて、そっち向いた瞬間に、もう葉山の背後に回ってた。


 その首筋に、刃を這わせて、


 「私の勝ちだ」


 と蒼さんは言うんだよ、うん、そうだね。


 でさ、葉山も頭いいから、どうしてこんなに簡単に背後を取られたか、すぐに気がつくんだよ。多重装備したのが仇になったってすぐに理解して、でも、もう勝負はついてしまった訳だから、すでに手遅れな訳。


 本来、葉山が得意なのって、ショートレンジなんだよね、ちょっと蒼さんよりは距離があるくらい、蒼さんが後ろに強いけど、葉山は正面と横に強いんだ。


 だからお互いその距離でやれば良かったのに、そうすればこんなに簡単に決着つかなかったのに、もちろん、かつて僕とやりあった時みたいに多数の剣を扱ってたら、蒼さんもこんなには簡単に勝てなかったと思うけど、今、そう言う環境でもないしね。


 「真壁、もう一回、ねえ、もう一回いいでしょ? ちょっと今の無し」


 って哀願して来るけど、まあ、一回勝負だし、この辺でやめとこうよ。


 って思ってたら、かあさんにべったりな微水さんが、


 「調子いいみてえだな、蒼」


 と言って喜んでる。


 「はい、最高の一品です」


 と蒼さんも喜んでる。


 そして、薫子さんとは言うと、


 「なあ、真壁秋、微水様、ちょっと今日花様と距離近すぎないか? いいのか? あれ?」


 って、まるで告げ口するように言って来るけど、良くはないのは薫子さんの心境だよね、もう、母さん取られちゃうくらいのハラハラ感出してる。


 その微水さんはと言うと、


 「蒼、その剣の銘、お前がつけろよ」


 と言い出す。


 しばらく考えて、そして蒼さんは僕の顔を見て、


 「お屋形様のお名前を頂いていいですか?」


 とか言い出す。


 え? って思うけど、すごい真剣な顔して言うんだよ。


 別に僕の名前をつけるのはいいんだけどさ、なんか、大丈夫かなあ、って、僕の名前なんてつけて。だってさあ、そのうち初代微水作『惚鴉』とか言われない?


 色々心配してる僕なんだけど、多分、これ良いよって言うしか選択肢の無い奴だね。


 本当に嫌って言えない無言で純粋な蒼さんの顔からの圧力がすごい。


 「うん、良いよ」


 って言ったら、輝く様に喜んでる。


 本当に今にも飛び跳ねそう。


 そして、微水様は、その大きな頭を母さんの膝に乗せた格好で、


 「初代微水はもう、この世にはいないことになっているからな、『集霧院秋鴉』と銘するがいい、良い銘だ、蒼」


 って感慨深く、そしてどこか神々しく言うんだけど、その格好がなあ、もう絶対に母さん離さないって言う態度がなあ、なんかとっても残念でグダグダな感じなんだけど、蒼さんはそんな事もきにする様子も無く、


 「お屋形様のアキシオンと同じです、お揃いですね」


 とか、弾けそうな笑顔で言うから、


 アキシオンのアキって、そう言う意味じゃあないと思うよ とは言い出せない僕だったよ。

 

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