第87話【大パニック!! 大通4丁目ゲート!!】
前回は結局、ファンクラブなんていう刺客を放つ札雷館のおかげで、疲労困憊(特に心が)な僕は何とか地下4階にたどり着くも、そのまま引き返して、続きは今日って事にした。
家に帰ってから、僕もいろいろ考えたんだよ。
もう辞めようと思う。いろいろ考えるの。もういいや、予想対処は無理だ。
来た問題、取り分けすぐにでも危険と判断するものだけ、対面対処で1つ1つ対応してゆこう。こんな状況、いろいろ試行錯誤をして行くだけ無駄だって思った僕がいる。
強いていうなら前後もわからない暗闇でノックを受け続けるようなもので、考えるだけ無駄だよね、一々、結果は斜め上な感じだもん。
そんなブツブツ言いながら、市電で春夏さんと、そして『4丁目ゲート』の前で、いつものようにいつものごとく角田さんと合流して、今日も北海道ダンジョンに潜って行く僕らだったりする。
でも、何だろう、今日の『4丁目ゲート』は何か騒がしい雰囲気がした。
人の往来というか、入って行く人が激しい。
みんなマントやローブでわかる。ギルドの運営に携わる人たちだと思う。で、こうしてみている今、ダンジョンのゲートに区画されて、入り口と出口でわけられているのかな?
入ってくギルドとは反対方向から出てくるのはダンジョンウォーカーの、着ている物、装備から浅階層の人たちってわかる。
そんな人たちが、半ばパニックになりながら、外に出てきてる。それも凄い数。
まるで、浅階層を空にしているみたいな勢いだよ。
そして、今、4丁目ゲートに接する大通が警察官によって封鎖され初めてる。それによって、大通を通過しようとする人の流れも止まり始める。
ともかく、この大通公園4丁目は、いつにない雑踏と躊躇いの混じった喧噪に包まれていた。
どうしたんだろう?
そんな人たちを横目で見ながら、ちょっとゲートの方には近づけない雰囲気を感じながら、すれ違う人達が僕らに声をかけてくれるんだ。
その内容というのが、今日は浅階層と中階層はギルドによって閉鎖されたそうだ。
しかもたった今の話。
「なにか事件でしょうかね?」
って呟く角田さんと、心配そうな春夏さんと一緒に、この混乱する人並みから一歩下がって、道路側によりつつ、様子を見ていると、
「もし、そこの冒険者の方々」
と声が掛かる。
振り向くと、もう、この生垣を越えたら、自転車置き場で、さらに道路だよって、場所に大きめのバック、メッセンジャーバックみたいなカバンを持った、魔法使い、って感じもしなくもない女の子が僕を見ていた。
人目でわかるくらい困ってるって顔してて、「あううう」って声を出してる。
なんかちっちゃくて可愛い。
よくギルドの真希さんをお人形さんみたい、って(見た目だけ)形容する人って多いけど、この人もそれに負けず、精密にできたお人形さんみたい。
そんな人が頭にはフードをすっぽりとかぶって、まるで着ぐるみみたいなローブ着て、僕らを見上げて見つめている。
そして僕らを見るめる碧眼の瞳、しかも角田さんと違って、バッタもんじゃあない金髪だ。凄い、外人な人だった。外国人のダンジョンウォーカーだ。
「どちら様ですか?」
と、僕も声を掛ける。全く見覚えが無い。だから人違いの可能性も考えたんだ。
すると彼女は僕の質問なんてまるで耳に入らないように、言うんだ。
「良ければ、私を地下まで連れて行ってもいいですよ?」
って言った。
何言ってるんだこの人? って言うか、日本語のイントネーションもおかしい。やっぱり外国人なダンジョンウォーカーの人なのかな?
すると、僕の後ろで、角田さんが、
「何だ、シリカか、また置いていかれたのか?」
角田さんの、僕らにとっては普通なんだけど、割と大きな声にビクッとして、一瞬、落ち着かないって感じになる。そんなシリカって言われた女の子のことなんて放っておいて、角田さんは説明してくれるんだ。
いや、なんだろう? この人、ほっといてはいけない気がしてくる。
にこやかに笑う彼女を見て、ハラハラ感が止まらない僕がいるんだよね。