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第5話【市電に揺られてダンジョンに行こう!】


 僕と春夏さんは、道路を走る電車の速度で街を流れていた。


 まだ、この辺には市街とも言えないくらい住宅街、中でも古い街並みが並ぶから、空が広いんだ。


 電車の中央付近で吊り手をもって立ってる僕。


 僕は、今、僕の隣にいる美しい少女をジッと見ていた。


 つまり東雲春夏さんね。


 別に変な意識や意図があっての事じゃ無いから。


 ただ、見惚れたたんだ。


 純粋に、何も考えず、ただボーっと見ていた。


 そして、今、こうして一緒にいることが不思議で、でも体の芯からやって来る変な喜びみたいな感情もあって、おかしな感じで心境だ。


 一緒にダンジョンに行くからって実感がまるでなくて、夢でもみているみたい。


 そんな僕に観察される春夏さん。


 この路面電車、つまり市電3000系の走る速度で流れる札幌の街に夢中になってるのをいいことに、ガッツリと、じっくりと見つめていた。


 春夏さんの視線は、一点を見つめているってわけじゃ無くて、結構広く、遠くまで見ている。どこか懐かしそうに、そして新鮮に、時に驚きながら、その表情を変えていた。


 やっぱり綺麗な女の子だなあ、と、そんな事を思う。


 普通に綺麗な女の子なんだろうけど、スキルもちのクラス持ちって聞くとさ、もう、なんて言うかな、本当に僕にとっては雲の上の人? 見たいな感じでさ、今もこうして一緒にいるのに、なんで僕なんかと一緒にダンジョンに行ってくれるのだろうか? とか考えてしまう。


 同時に、ダンジョン内の有力な組織とかに春夏さんを取られないようにしよう。


 なんて、心狭い事も考えてしまう僕だよ。でも春夏さんの意思なら仕方ないけどね。笑顔で見送るさ、とも思う。悲しいけどね。


 そして、やっぱり綺麗だなあ、春夏さん、って思う僕だよ。


 それにしても、結局、僕は彼女が一体誰で、何者なのかなんて、全く思い出せないでいる上に、今も思っている彼女の持ってる価値と言うか、ダンジョンウォーカーとしての高みみたいなものを感じていてなお、こんなに近い距離にいると言うのに、本来、学校でも女子に近づかない僕なのに、春夏さんと一緒にいると、えも言えぬ安心感に包まれてる感覚があるのはなんでだろ?


 それにしても綺麗だなあ、って見惚れてしまう僕だよ。


 こうして、一緒にいるとさ、もう彼女が何者で、どんな人でもどうでもいいやって、不思議な信頼感、いや、安堵感? 見たいな物が僕自身の中から吹き上げて来るんだ。


 不思議な感覚だった。


 でも確実に言えることは、やっぱり綺麗なんだよ、春夏さん。


 だから、僕は、彼女を、春夏さんを見足りなくて、違うかな? もっと見たくて、いやなんだこれ? 今見ている以上に見ようって、おかしな欲求が出てくるんだよ。


 で、そんな僕に、


 「そんなに見つめられたら恥ずかしいよ」


 って、消え入りそうな声で言われて、僕は慌てて、視線を春夏さんから外した。


 うわ、やば、気がつかれてた。


 心臓が飛び出しそうになる。


 「ご、ごめん」


 って、言い訳も言わずに謝る僕。本当ごめん。春夏さん、恥ずかしそうで、顔が真っ赤だ。


 変な感情とか好奇心で見てた訳じゃないのに、僕自身も自分のそんな行為、春夏さんガン見していた事に、恥ずかしくもいたたまれれなくなる。


 結構長く俯く僕は、それでも、もう一回謝ろうかって、思って、顔をあげると、今度は僕を春夏さんが見てた。


 うわ、顔近!


 「ご、ごめんなさい」


 って春夏さんは言うんだけど、


 「いや、僕の方こそごめん」


 そう言うと、彼女は、春夏さんはまるで開き直るように、


 「私だって、秋くんを見たいよ」


 って言った。


 いや、僕なんて、どこにでもいる普通のダンジョンウォーカーだよ、まだダンジョン入った事ない筈だけど、これからダンジョンに行くんだけど。


 ダンジョンウォーカーになりたいだけの、普通の中学生だよ。


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