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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その38【その暗黒物資は僕の剣として望む】

 初代微水様が何を言ってるのかわからない。


 だって、僕の剣をマジマジと見て、呟いた内容はおおよそ理解しかねる内容だった。


 剣じゃないって言われても……。


 いや、だって、これ、まごう事なき剣でしょ?


 と、言うか、剣以外の何物でもない。


 仮に先端にボールペンとか付いてても、筆記機能があっても、これだけ剣の要素が強ければ剣だよね。


 そして、今度は葉山の剣を見て、


 「これだけ剣になろうとしている意識が顕著に出てるから気がつけた、お前の方なら、今だに俺は気がつけなかったよ」


 と言って、


 本当に意味がわからない。


 一体、微水様は何を言っているのか?


 そして、微水様は僕に剣を渡す。


 ああ、返してくれるのか……、と思って僕は剣を取った。・


 すると、微水様は、


 「今、俺はお前に対して何をした?」


 とか聞いてくるから、何言ってるんだろ?って思いつつも、これもこの剣を知る上での大切な流れなのかもと思って、答えるよ。


 「普通に剣を返してもらってます」


 すると、初代微水さんは、自身のツノを触りながら、「うーん」って唸ってから、


 「お前らにはどう見えた?」


 って聞いたら、


 「一瞬、初代様が兄上に斬りかかった様に見えました」


 びっくりする様な事を焔丸くんが言うんだ、そして四胴さんも、


 「私も、そう見えましたが」


 と二人揃って言うから嘘じゃないみたい。


 「えー、私は普通に渡す姿にしか見えなかったなあ、もう一回やってみてくださいよ」


 と葉山が不満そうに言った。


 「いや、何度やっても同じだろうさ」


 と微水様は言う。


 そして、


 「俺は本気でお前をぶった斬りろうとしてたんだぜ」


 とか物騒な事を言う。


 「しかし、だ、こいつはそれを無い事にした」


 本当に次から次へと言ってる意味がわからない。どう言う事?


 ポカンとしている僕から再び剣を取って微水様は、


 「普通に手に取れるのは、最終的に俺はこいつの敵になり得ないと言う判断をしているからなのか?」


 と呟いて、今度は葉山を見て、


 「剣を絡めた光景の受け止め方の違いは、こいつといる時間に比例すると言うことか」


 と納得していた。


 いや、ちょっと、微水様、こっちにもわかる様に説明してほしんだけど……。


 「一体何が起こってるんですか?」


 僕の代わりに葉山が聞いてくれた。何かが起こってるって事はわかるんだけど、何が起こっているのか全く理解できない。


 そんな顔をしていたんだろう、だから微水様は、


 「つまりな、この剣で、お前を傷つける事は出来ないって事だ、剣は振るえても、お前に斬りかかった瞬間に、その行為そのものを切り取られて、さらにお前にとって都合のいい様に改竄されるんだ、もちろん、それはこいつが剣の姿を保っていられる時の話で、開放型になるとどうなるかは俺にもわからん」


 と言った。


 うーん、せっかくの説明だけど、ますます混迷の度合いを増してしまうよ。


 でも、まあ、久しぶりに剣を手にできて、ちょっと嬉しい。この剣も喜んでるみたいだね。そう思って何度か振ってみるけど、やっぱいいなあ、と心底思える僕がいる。


 そんな僕を見て、焔丸くんは、


 「本当に兄上には、殺意とか剣に関する意識がないのですね」


 って感心する様に言うからさ、


 「いや、だからそんなのあっても邪魔じゃない? 気取られてしまうし、人ならともかく、獣やモンスター相手なら絶対に通用しないよ、それに一定の人もだね」


 って言った。


 「こう言う強さには普通にはたどり着けないぞ、参考にはならないから、あまり見るな」


 って微水様に言われてしまう。


 あってるけどさ、でももっと他の言い方とかあるじゃん。って思っちゃった。


 「俺は、この剣にも興味あるけどな、お前ら親子がどこから来たのか、どうして存在しているのかの方が気になる」


 とか言ってきた。


 普通だよ、って言おうとするけど、確かに母さんはちょっと異常だよね。って思うと、


 「真壁もね」


 って葉山に言われた。いや、母さんの方がすごいよ、武器とかなんでも使えるしね。


 「もっとも、そんな事には答えられないだろうけどな、まあ、それはいい、で剣の話に戻るぞ」


 と言ってから、


 「これ、なんでできてると思う?」


 って逆に質問された。


 「普通の金属ですよね?」


 って言ったら、


 「多分、その形はとってはいるが素の集合体で厳密に言うなら、これは物質ではなく、『現象』としてここに存在している」


 いやあ、もう一体何を言っているんだか、ますますわからない。


 「素粒子って事ですか?」


 何それ? 葉山は理解しているみたいだけど、他のみんながわからないよ、そりゃあ葉山は頭いいかもしれないけどさ、他の二人はまだ小学生だよ。


 「クオークとかフェルミンとか?」


 って四胴さんが言う。


 「でもあれって、まだ、仮設の段階だろ? それぞれ呼び方も違うし単位も異なる」


 って焔丸くんが言い返してた。


 そっか、わからないの僕だけかあ。


 と思ってたら、


 「そうだな、でもちょっと違うんだ」


 と話についていける人達を軽く否定して、


 「正確に言うなら、これは、仮定された素粒子で、どこにでもあるが、どこにもない物なんだ」


 葉山が考え込む。


 そして、


 「暗黒物質とか?」


 微水様はポンと手を叩いて、


 「そうだな、それが一番しっくりくるな、そうしよう」


 って言い出す。


 いや、ちょっと待って、微水様、知ってて答えていたんじゃないんですか?って言おうとすると、


 「仮定の話だよ、俺だって全部知ってるわけじゃない、多分、これは暗黒物質、そう仮定したとして、あらゆる物質に反作用する物と仮定すると、さっきの現象も理解できるんだ、だからそう思う事できっとその存在は確定する、と言うかお前に対して一番しっくり来る形で不安ながら形を作ってるんだ」


 しつこい様だけどほんとわかんない。


 ともかく、剣は剣で僕の剣を一生懸命してくれてる事だけはわかるから、もうそれでいいよ。


 でも微水様は言うんだよ、


 「その剣は偶然で手に入っちまう代物じゃあねえぞ、もしお前に渡した相手が誰かわかってるなら、その人物に用心するんだな」


 とか不気味な事を言うんだよ。


 間接的だけど、それって、雪華さんのお母さんって事?


 僕の横でずっと押し黙ってた蒼さんを見て、微水様は、


 「蒼、剣はもう渡せるぞ」


 話を変えて言った。


 喜ぶ蒼さんの顔を見てると、まあ、僕の方はいいかって、そう思ったよ。

 

 



 

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