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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その19【義兄と義弟】

 なんて事ない、普通の町だなあ、って思ってあたりを見ながら僕はのんびり散歩してた。


 いや、町としての作りは北海道とは全然ちがうんだけど、ほら、蒼さんの、言うなれば忍者の隠れ里な訳だからさ、その辺を期待しつつ散策してるんだけど、いたって普通なんだよなあ。


 ともかく、あの後、しつこく謝り倒されて、関係ない筈の五頭さんまでにも謝られて、ちょっと居た堪れなくて、そのまま逃げるように蒼さんの屋敷を出てしまう。


 別に特に驚く事でもないのにね、ダンジョンだったら、こんな事日常茶飯事だよ。


 と僕はのんびりと町の中を歩いている。


 遠くの方には段々畑とか田んぼとかもあって、北海道とはまた違った牧歌的なというか広大さを味わっていた。


 きっと、地方の田舎ってこんな感じなんだなあ、って北海道の場合はちょっと普通というか、田舎とかってなくて、都市は集中するんだけど、人も広く長く広がってるから、この町みたいに、住宅や施設、畑や田んぼ、川や山までもこうも密集はしてなくて、何もかも近くて、変な迫力があって、僕にとっては面白かった。


 僕らはみんな蒼さんのお屋敷のお客さんになってるけど、僕らってのは僕の家から来た葉山と薫子さんと母さんと僕ね。それ以外はみんなそれぞれの家に行ってるんだってさ。


 つまり、辰野さんは一心さんの家に、水島くんは紺さんの家にいるらしい。白馬さんは三爪さんの家だって言ってたな。そしてそれ以外はそれぞれ里帰りだそうだ。だから五頭さんなんて、折角地元に帰ってきたって言うのに、僕がいるとどうも蒼さんの家から帰れなくなってるみたいで、その辺はちょっと考えないと可哀想で、だから僕はこうして外に出ている訳なんだ。


 でも、決して一人じゃないんだよなあ。


 「こちらが、紅井川です、珍しいことに、クニマスも泳いでます」


 と一々と僕の横で説明してくれるのは、蒼さんの弟の焔丸(ほむらまる)君。


 まだ小学校中学年だって言うのに、この落ち着きぶりだ。


 僕が彼くらいの年の頃って、多分、毎日ダンジョンのことばかり考えていたくらいで、全くもってこんな落ち着きというか、風格はなかったなあ、とそう思うよ、本当にしっかりしてる。


 「あ、兄上、聞いてますか?」


 うーん…………。


 「それでですね、兄上、あの山の麓にあるのが……」


 「焔丸くん、その兄上ってのはさあ」


 なんかねえ、僕、この町に来てびっくりしたのが、蒼さんと結婚するのがもう前提になってるみたいで、蒼さんのお母さんからは、『婿殿』で、この焔丸くんからは『義兄』扱いになってるんだ。


 「ああ、そうですね、まだ婚礼前ですから、正確にはどのようにお呼びすればいいのか……」


 いや、前も後もないんだけどなあ、真剣に悩んでるよ、焔丸くん、しばしの思考中の末、言った言葉が、


 「殿?」


 うーん、このやり取り懐かしいなあ、かつてしたことあるなあ、桃井くんだね言ってたの……


 「いや、殿はちょっと……」


 遠慮させてもらう。


 「では、姉上同様、お屋形様にします」


 うん、もうそれは言われてるから、一人増えるくらいはいいや、ってなる。


 そして、焔丸くんは僕に尋ねる。


 「お屋形様。一つお尋ねになってもよろしいですか?」


 「うん、いいよ」


 焔丸くんは考える。すごく考えてる。


 そして、


 「あの、大変言いにくいのですか、姉上は、一体、お屋形様のどこを好きになったのでしょう?」


 と、考え込んだ割にはズバッと聞いてきた。


 思わず、「うーん」って悩んでしまう僕は、


 「その前にいいかな?」


 って言って、今、僕の話ってどんな風に伝わっているのか尋ねてみようと思って、


 「あのさ、僕ってどんな風に話が伝わってきてるの?」


 すると、焔丸くんは、僕に気を遣うように言葉を並べ始める。


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