その18【歓迎!! 北海道の皆様!】
僕は叩かれた頭を触ってみる。
五頭さんの方はガバって体を起こして、
「おお、お屋形様、ご無事で……」
ってなんか感動してるし、もう一人の女の子は、そのまま、アレ? なんだろう、ちょっと震えてる?
「僕の方は大丈夫だよ、なんともない、治療してくれたの?」
五頭さんって、確かそれなりのヒーラーだからさ、タンコブ治してくれたのかな、って思って尋ねると、
「いえ、それは、この空が治療に当たりました」
と言う。あ、そうなんだ。すごいね、この子もヒーラーなんだね、ダンジョン以外にもスキル持ちの人っているんだね。
「ありがとうね」
って言ったら、そのままの姿勢で、ビックっと体を震わせて、そのまま、身を硬くしてる。
で五頭さんが丹念に僕の体の異常の有無を確認いして、
「異常はないようです」
と言った。
そしたらさ、蒼さんのお母さん、
「四胴空、五頭熾丸、ご苦労様でした、現時点を持って、婿様の容体の異常無し、健康は確認されました、その任を解きます、下がりなさい」
と、先ほどの声とは打って変わって、どこからそんな冷たい声が出るんだと思うほど、ぴしゃりとした声で言った。
「はい」
と二人は言うんだけど、五頭さんはそのまま立ち上がるも、四胴さんはフラフラしてる。
「大丈夫?」
って思わず言ってしまったけど、
「は、はい、」
って慌てて言う四胴さんに対して、
「みっともない、しっかりしなさい」
って蒼さんのお母さんは叱っていて、
「お見苦しい所をお見せして申し訳ございません」
謝る四胴さんだよ。そしてそれを庇うみたいに、
「お屋形様、空は熾丸とともに、昨夜からお屋形様の御容態の為にそばについておりましたので、少々、気が抜けたのかと」
って蒼さんがそっと耳打ちしてくれるんだけど、え? じゃあ、徹夜で見ていたくれたって事?
いや、この娘、中学生くらいでしょ、僕よりも年下だよね。ダメじゃん、そんな子に徹夜とかさせたら、って思って、僕自身も罪悪感にさいなまされて、
その子を、四胴さんを手招きで呼ぶと、なんの警戒感無しに近づいてきてくれるから、
「御用でしょうか?」
ってキョトンとして訪ねて来る驚く四胴さんの手を取って、布団の中に引きずり込んで、僕は同時に出る。イリュージョン見たいな感じに見えない事もない。
そして、僕が出るのと同時に布団から目から上だけど出してる四胴さんに、自分の状態を把握しきれてない彼女に、
「寝て」
と言った。
なんか、蒼さんも、蒼さんのお母さんもびっくりして固まってるけど、いいんだよね、だって、布団あるし、僕はもう大丈夫だし、このまま彼女が寝てもいいんだよね。
五頭さんは男だからその辺の廊下の邪魔にならない所で寝たらいいよ。
で、
「この子、寝かせてあげて」
と蒼さんに言うと、
「はい、承りました」
とOK貰ったんで、知らない女子を自分の為に貫徹させたって罪悪感は消えてなくなる。もういいや、になる。
そして、廊下に出ると、ミイラ男が現れたんだ。
全身包帯で覆われてたからミイラでいいんだよね。
ちょっと驚く僕だけど、ここダンジョンかよって思う僕だけど、ダンジョンにミイラでないけど、そのミイラ男が
「ふご、ぶぶふふ、べほっご、でで……」
いや、何言ってるかわからない。
すると、後ろから、蒼さんが、
「申し訳ございません、この者、私の父にございます」
とどこか恥ずかしそうに言った。
うん、まあ、そうじゃないかって思ったよ。
つまり、僕の頭を叩いた人だよね。
凄い大怪我してるみたいだけどどうしたの? て聴く気にはならなかった。
だって、想像つくもの。
その後、いやでも葉山が教えてくれた情報では、僕が倒れてから、蒼さんのお父さん、勝ち誇るも、次の瞬間に、上下左右から、蒼さんと蒼さんのお母さんに、格ゲーで言うところの乱舞系必殺技を食らってるみたいに見えたって。つまりは倒れることも許されずにボコられたってことだよね。
木葉が激流に飲み込まれて行くところにも見えたって薫子さんは言ってた。
包帯が球になってる手を突き出して僕に何か言ってるようだけど、ねえ、本当に治療の必要のあったのって、この人の方じゃないかな、って思う僕だったよ。