その17【到着! 多紫町!】
深夜、僕ら蒼さんの故郷に着いた。
着陸したとことは、学校の校庭だった。
小中一貫校だそうで、だだ広い校庭の真ん中に飛行機は降り立つ。
一応は、こういった、外部からの航空機を受け入れる施設も兼ねてるんだって。降りるときにチラッと、校庭の周りに凄い人の数、消防車も見えた。
最初は誘導用の照明の為に、周りがよく見えなくて、徐々に照明が消えたら、遠くの方に鉄棒とかバックネットとか見えるようになった、以外に住宅も近くにあってびっくりした。
で、飛行機から降りると、夜も遅いというのに多分、ほとんどの住人の方々が熱烈歓迎、旗を振る子供達やら、紙吹雪が舞うやら、よくわかんない太鼓の音とか、ともかく壮大に迎えてくれて、僕はひとまず母さんと、蒼さんと一緒に居たんだけど、本当にもみくちゃにされそうな勢いで、その歓迎ぶりと言うか、沸き立つ歓喜に驚いた。
特に蒼さんの人気は凄かった。
お姫様扱いっての? 特にこの町の子供達、花束とか渡す人もいて、その中の何人も、なぜか僕の方を確認していた。笑顔で会釈もされた。
どんな風に、どんな人間関係で、どんな内容を話してるんだろ?
と思っていると、そこで僕の意識は途絶えた。
って言うか一部始終を見ていたわけなんだけど、いきなり殴られた。
いや、なんかさ、後ろから「キエエ!!!!!」って声が聞こえて来て、そのままボカンってやられた。
ああ、当たるなあ、と。でも今、僕手ぶらだしなあ。って、持ってるの木刀じゃないかな? って思ってたらそのまま攻撃されて、気を失ってしまった。
何か周りが騒がしかったけど。この町の人とかもいたみたいだけど、そんなの全然確認する間も無く、僕は剣を取り上げられて、木刀で殴られて、それでも剣を持ってなくてよかったのかな? とか薄れ行く意識の中で考えてた。
いや、だって、蒼さんの里の人だから、相手が即死するような攻撃は避けて、一撃で意識を刈り取るような攻撃をし方がよかったんじゃないかな? って思うけど、あえて考えてみると、この町にはこの町のルールがあるじゃない。
だから僕の力で進んで行くよりここで殴られておいた方がいいって言う判断だから、僕の周りはみんなそう考えているから、まあ、これでいいんだよなあ、って、そんな事を考えながら僕は意識を失ったんだ。
で、次に目が覚めると、そこは大きな部屋の真ん中に布団を敷いて寝ている僕に気がついた。
「お?」
って間抜けな声出ちゃった。
外の光が眩しい、どうやら朝、もう昼近くかな、そんな時間まで寝てた見たい。
「お目覚めですか! お屋形様!!!」
そこにいたのは蒼さん、そして………………、蒼さんのお母さんかな? 顔そっくり。
二人とも、僕が身を起こすのと同時に、正座からの土下座。
「申し訳ございません!!!」
と蒼さんのお母さんらしき人が土下座のまま言った。いやもう叫びに近いかも。
僕はそんな様子を見ながら、頭をそっと確認してみる。
そんなに凄い攻撃ではなかったけど、多分、たんこぶくらいはできたのではないかって、そう思ってさ、確認するものの、全くそんな事もなくて、むしろ、今の現状をみるとどこもかしこも痛い所、不具合の有りそうなところなんてどこにも無い。
「いや、大丈夫です、なんとも無いです」
と言うと、オロオロしながら、母娘で、僕の体を這うように異常の有無を確認してきて、いや、ちょっと近いから、下半身は関係ないから、って言いそうになるくらい入念にペタペタと確認をしてくる。
「本当ですか? 遠慮はしないでくださいな」
と蒼さんのお母さん、心配に心配を貼り付けて顔をしていたから、部屋の外に向かって、
「四胴と五頭の者をここへ、婿様の体を、支障がないか確認しなさい、早く!」
と叫ぶと、襖ががスっとじゃなくて、ガンっと開いて、
「はい」
と綺麗にユニゾンする五頭さんと、もう一人は知らない女の子が、僕に対して潰れたカエルみたいにひれ伏している。