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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
872/1335

その11【多紫町婦人会①】

 多紫の町には、学校PTAや青年団(消防団を含み)の上に、事実上この町の運営と管理を行う組織がある。


 それは、『多紫町婦人会』と言って、この町の成人女性なら全て加入し、運動戦闘部、子供見守り会、大紫町衛星委員会などからなる組織である。


 事実上、この町の最高組織である婦人会のトップは、多月の元主である、つまり多月蒼の母親である多月菖蒲である。


 そして、その前任者である多月褐が顧問を勤めている。


 さらにその周りは一桁と呼ばれる分家が固め、百家がさらにそこに加わる。


 そして、今、この組織はこの町の未来の為に、ある決断をともなう行動を決定しようとしていた。


 各分家、そしてこの町の代表者達を集めるその前で、


 「皆様方、いよいよ明日、婿となるべく者たちがこの地に訪れます」


 気を張って多月菖蒲はここに集まる婦人会メンバーを前にそう言い放つ。


 今までは、段階を置いて、その度に一人一人迎えていた為に、こうも一気に町外部の者がやって来るのは初めてのことでもあった。


 中でも、婿取りとは関係なく、その家族の女性もいることなど今までから考えれば異例中の異例であった。


 もちろん、この提案は多月褐の進言であった。だから菖蒲としてもどうしようもないのである。


 菖蒲の声のみが響く大広間、分家の人間は水を打ったように静かであった。


 全員が囲む大きなテーブルには問題の人物であろう写真がばらまかれている。


 議題にかかっているのはもちろんダンジョンウォーカーの面々で、これら多紫の町出身の少女と遠からず縁のある者たちの事であった。


 特に議題に挙がっているのは、一心浅葱と同じ組織で親しい辰野斗真、三爪葵同じ職場で自衛官の白馬勝己、北海道ダンジョンで最大の組織、ギルドに所属する百目紺と概ね行動を共にする水島祐樹である。


 まあ、ここまでは問題ない。


 それぞれ報告は受けている。また、彼女達の送った資料も、こちらで解読ずみだ。


 特に、一心浅葱や百目紺などは、今の彼女達のはち切れそうな気持ちを綴ったレポートは、この婦人会にいるメンバー全員の胸を打った。


 ここで解析した結果を詳細に出すことはしないが、ダンジョンという特殊な環境下に置いては、正当に男女の恋心など生まれない場合もあり、また、そんな気持ちを否定してしまう場合もあるというものだ。


 でも、ほんのりと灯る恋心は、彼女達、つまりここでは浅葱と紺の場合は、痛いほど伝わって来る。


 彼らは最初から接近しすぎてしまったのだ。


 だからこそ、距離感がつかめない、自身の気持ちも伝えない。伝え方もわからない。


 なまじ、遠くにいるなら、大きな声で、その言葉を伝える方法もある。でも近すぎるのだ。だからこそ難しくなってしまっているのだ。


 過去を振り返っても、やはり北海道ダンジョンは不思議だ。


 このような事例はダンジョンでしか起こりえない。


 普通とあまりにかけ離れた環境に、そして近すぎる距離に戸惑う少女達は、その意識もあるのかどうかもわからないまま、それぞれの男性を連れて来てしまったのだ。


 もちろん、ついて来る男子は、決してそれぞれの女子について何も思わないわけはない。


 しかし、だからと言ってまるでボルトで固定された距離は変わる事なないのだ。互いに手の届く位置にいながら方法を知らないのだ。


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