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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆閑話休題章 青鬼見聞録 [隠匿された里の物語]◆
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その5【多紫町の通学風景】

 多紫町の朝は早い。


 消防団を形成するこの町の青年会が、この町の中心にある消防団の車庫から、10台程度の車を出す事から始まる。


 中には普通自動車の他に、大型のトラック、消防車、時折、サイレンを鳴らす、パトカーや救急車。その日のチョイスによって町に出る。


 そして、この町の道路を決められたコースでそれぞれが走り出すと、各家々では学校に行く子供達が準備を終えて、外に出始めるのだ。


 多紫町と呼ばれるここも、小・中学生の生徒達は朝の登校時間を迎える。


 その合間を縫うように自動車は、通学の生徒たちに絡むように走り回り始める。


 これは通学時間、登下校に繰り返し行われる。


 それは自動車になれる為、また、適切な対応ができるようになるための教育でもあった。


 この町の小学生にすら、一般に自動車が走行する速度、時として最高速度をもってしても、よほど運が悪くもない限り、大した脅威にはならない。


 なぜなら、小学生低学年においてもその身体能力は、普通自動車、時として大型自動車ですら上回っているので子供達は安全にかつ余裕で回避できる。


 だからこそ学ばなければならないのだ。歩行者として、自動車との付き合い方、一般社会における交通ルールを。


 これらの一般常識を学ばず、この町から出てしまった場合、この町の秘密の存在が明るみに出る危険もあるからだ。


 万が一、一般社会で車を飛び越えて避けたり、自身に害なす対象物を破壊したりなどした場合、それを目撃され、大きな街ではマスコミも駆けつける大騒ぎになり、ましてそれが全国版のニュースになど流れた場合、そこからこの隠れ里の秘密が漏れ出すことになりかねない。


 それは決してあってはならない事なのである。


 一般の社会において、歩行者と走行する自動車の接触は、どのような軽微なものであっても重大事案である。


 最悪、逮捕となる。


 接触された場合の歩行者は怪我、もしくはその生命に関わる。そうならない為の実地訓練なのである。


 訓練は最低、この町の道路を使って日常的に少なくとも小学校卒業まで教育は続けられる。中にはこの町の中学校に通うものなら、里を離れるその日まで繰り返し反復演練し続けられるのだ。


 もちろん、この町の小・中学生は皆、賢く素直なので、割合早い段階で、皆、交通安全マスターなクラスになり得るので、きちんと段階さえ踏めば問題はない、そして教える方もまたその成長をメキメキと育つ子供達を観察できる、やりがいのある仕事である。


 そして受講する子供達にとっても、この町の中にあって、、毎日繰り返されるとはいえ、一般社会に触れられる楽しい授業でもあった。


 自動車社会を演じるもの、そしてその中から何かを学び取ろうとする子供達。


 狭い道などは車と子供がギリギリ交わせるくらいの隙間を、少し怖そうな顔して、やり過ごし、時には車に乗る人間に挨拶を交わし、大きく手を挙げ、時には旗を振って自己の存在をアピールする。と言った形の上ではどこにでもあるそんな光景に溢れる、通学時間帯なのである。


 そして学校近くのスクールゾーンに入るともう車は来ない。道路の色によって小・中学生が通る通学路は自動車の運用は規制されているために、聞こえてくるのは、子供達の声だけになる。


 どこか、微笑ましく、何より、その子は、この町の特徴と言っていいほど、女子の声しか聞こえない。


 もちろん男子もいないことはない。しかし、ここの町では恐ろしいほどに男子の出生率が低く、特にこの町を構成する2分区では実に新生児の99%が女子である。


 つまり、この子供達の通う先にある多紫小学校では、一学年に1名程度の男子しかいないのである。


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